2011年3月 No.76
 

神奈川県の建設リサイクル資材認定制度に注目

リサイクル塩ビ管などのグリーン調達を強力後押し「率先利用システム」

 リサイクル塩ビ管(排水・通気用) が、グリーン購入法の特定調達品目(公共工事)に指定されたのは2006年2月。以後、国の動きに準じてリサイクル塩ビ管を利用する自治体が広がりを見せています。中でも独自の認定制度を運用して建設リサイクル資材を調達している神奈川県の取り組みは要注目の事例。塩ビ管などのリサイクル建材をきっちりと実需に結びつける「率先利用システム」には、他の自治体にも参考となる耳寄り情報が詰まっています。

●2008年4月から運用スタート

 神奈川県の率先利用システムは、国が定める特定調達品目をさらに絞り込んだ「率先利用品目」から、特段の理由がない限り率先利用すべき具体的な資材「率先利用認定資材」を選出、認定するもので、これによりリサイクル建材のグリーン調達を実質的かつ効果的に前進させることを狙いとしています。神奈川県県土整備局・企画調整部技術管理課の小川和男主査(建設リサイクルグループ)から経緯を説明してもらいました。

小川和男主査(左)と石川哲也技師

 「地方自治体では、国の基本方針(下の記事参照)に合わせ、毎年、特定調達物品などの見直しを行っており、神奈川県の場合も、2002年以降、各部局ごとに調達基準を作って取り組みを進めている。建設資材については、県土整備局が策定した基準に基づいてグリーン調達を進めてきたが、国の基本方針では調達すべきリサイクル建材の品目を紹介してはいるものの、公共工事で使用できる製品が具体的に示されないため、なかなか実際の使用が進まないという問題があった。この状態を何とかしなければならないということで、2006年度から、学識経験者や業界団体の代表、県土整備局の資材担当者などで構成する『建設リサイクル資材評価委員会』(以下、評価委員会)を立ち上げ、その改善策の検討を進めてきた結果、2008年4月から新たに『率先利用システム』を設定し運用していくこととなった」

「グリーン購入法」と「特定調達品目」

 正式名称「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律」。国、地方自治体等の公的機関が率先して環境物品等(環境負荷低減に資する製品・サービス)を調達し、需要の転換を図ることで、持続可能な社会の構築を推進することを目指す。2000年5月に循環型社会形成推進基本法の個別法のひとつとして制定。2001年4月施行。
 「特定調達品目」は、環境物品の中でも「重点的に調達に取り組むべきもの」などを定めたもので、グリーン購入法に基づいて国が策定する「環境物品等の調達の推進に関する基本方針」(基本方針)により、毎年、具体的な品目とその判断基準が示される。地方自治体も、毎年度、環境物品等の調達方針を作成することが努力義務となっている。

 

●年2回の公募で率先利用認定資材をリストアップ

 「率先利用認定資材」が選ばれるまでの手順は次のとおり。
 (1)率先利用品目の設定 グリーン購入法に準じて定められた特定調達品目の中から、一定の基準(下図)をクリアするものを率先利用品目として抜き出す。
 (2)建設リサイクル資材の募集・認定 ⇒ 年2回、時期を定めて各品目ごとに候補資材を公募。評価委員会の認定基準に適合するリサイクル建材を認定する。
 (3)率先利用の判断 ⇒ 認定資材の中から、年4回、時期を定めて同じ寸法規格の認定資材が3社以上から供給可能で、かつバージン材と同額又は安価なものを率先利用認定資材としてリストアップ。他の認定資材についても試験的な利用・予算の範囲内で積極的に利用。
 率先利用認定資材に選ばれた製品は、公共工事において特記仕様書などにより必ずこの資材の中から選ぶように受注業者に求めています。

●リサイクル塩ビ管20点が率先利用認定資材に

 現在の率先利用品目はリサイクル塩ビ管をはじめ9品目で(右の表)、認定資材の数は985点。うち509が率先利用認定資材にリストされています。リサイクル塩ビ管については、83点(寸法サイズ別)が認定資材で、うち20点が率先利用認定資材となっています。
 リサイクル塩ビ管について企画調整部技術管理課の石川哲也技師(建設リサイクルグループ)は、「塩ビ管はリサイクル品の規格(JIS規格と塩化ビニル管・継手協会の規格)が整っているので、率先利用制度と合致していて取り扱いしやすい品目。率先利用制度がスタートした2008年当初から率先利用品目に認定しており、今後、リサイクル管の値段が下がってくれば率先利用認定資材に選ばれる製品もさらに増えてくると思う」といいます。

●県全体で循環型社会構築の一翼を担う

 「リサイクル建材を募集・認定している自治体は他にもあるが、神奈川県の制度は、率先利用認定資材となった場合は、リサイクル建材を必ず使うようになっている。その分、いい加減な認定はできないという責任もある」(石川技師)
 他県の中には『県内で製造されたもの』という条件をつけて県産品の使用を進めているところもありますが、神奈川県ではそういう縛りもしていません。
 県土整備局では現在制度の見直しを進めている最中で、スタート時点で認定した「県の工事では余り使われない特殊な資材」などを除いて、実際に率先利用されるものだけを認定していく方針。

神奈川県における「建設リサイクル資材」
の率先利用システムの概要
<拡大図>

 「制度をはじめたことで県の公共工事に使われるリサイクル建材の使用率は確実に高くなっている。県内の30市町村にも県の取り組みは周知しているので、これからさらにリサイクル建材の使用が進んで、県全体で循環型社会構築の一翼を担えればと願っている」(小川主査)
 塩化ビニル管・継手協会のリサイクル塩ビ管の普及担当者も「これほどきっちりした認定制度は珍しい」と賛嘆する神奈川県の「率先利用システム」。同様の取り組みが他の自治体にも広がることが期待されます。