2011年3月 No.76
 

「塩ビリサイクル支援制度」の成果報告 
実用化への取組開始!

日本科学未来館での試験設置の模様
(2009年6〜9月)

 塩ビ業界が取り組む「塩ビリサイクル支援制度」がスタートして3年余り。これまでに採択された新技術が次々と実用化の段階を迎えています。去る11月29日には、支援制度の開発完了に伴う2案の成果報告会が開催されました。概要をご紹介します。

●塩ビの「フラクタル日除け」(積水化学工業)、
 世界初のヒートアイランド対策、いよいよ実用化へ

 夏の木陰が涼しく感じられるのは、立体的に重なり合った木の葉の構造(フラクタル分布)が風通しのいい清涼な空間を生み出すためです。「フラクタル日除け」は、そうした木陰と同様の清涼感を塩ビのリサイクル材を使って再現しようというもので、京都大学の酒井敏教授(人間・環境学研究科)の発明をもとに、積水化学工業(株)が実用化へ向けて同教授と共同開発を進めてきました。
 2008年12月リサイクル支援制度に採択(テーマは実用化の研究)され、2009年の夏に東京お台場の日本科学未来館に設置し、高い日除け効果が実証されました。樹木のような手入れの必要がない上、低コストでヒートアイランドの緩和効果が期待できる画期的な新製品として、NHKや民放の報道番組、全国紙などマスメディアの注目を集めました。
 11月の成果報告会は、およそ1年9ヵ月にわたる成果発表でのポイントは次の3点。
(1)塩ビのリサイクル原料を70%以上使用して、高性能な日除けを製作できる方法を確立
(2)高い日除け効果を確認(日陰の温度と地表温度との差はほぼ15 ℃)
(3)リーズナブルな価格設定を実現(目標単価10,000円/m2に対しそれ以下価格を実現)

 難燃性、耐候性の高い塩ビの特性を利用した世界初のヒートアイランドの緩和対策の発明品で、積水化学工業では、「早期に実用化を行い広く普及させて」いく方針。またVECも、「塩ビの再生用途の初めての商品開発事例という点で大きな成果だ」として、今後の展開に期待を寄せています。

「ららぽーと豊洲」ビオガーデン

 現在は、東京都江東区の「ららぽーと豊洲」のビオガーデンに設置されている他、高速道路のサービスエリアにも設置が決まっています。また、東京都などからヒートアイランド対策としてのフラクタル日除けの使用について問合せや打診が来ており、設置場所として炎天に晒されるビルの屋上や公園、幼稚園・保育園の広場などが有望視されています。



●PVCタイルカーペット廃材のマテリアルリサイクル技術の開発(山本産業(株))

 山本産業(株)の「PVCタイルカーペット廃材のマテリアルリサイクル技術の開発」は、2009年4月に採択されたもの。タイルカーペットの工場端材から分離、回収した塩ビ樹脂をペースト塩ビゾルの増量剤として再利用する斬新な技術の開発です。実機試験で製品物性の合格は確認されましたが、コストと製品その他の問題など実用化に向けた課題について、現在検討が進められています。今後が期待されます。