2010年9月 No.74
 

快調、住宅エコポイント。エコリフォームが加速

山形県鶴岡市でも「塩ビサッシで断熱改修」。
利用者から喜びの声

 住宅エコポイント制度がスタートしておよそ半年。塩ビサッシ(内窓、外窓)を利用した窓の断熱改修が大きな伸びを示すなど、環境の時代にふさわしい家づくりをめざす試みは、全国的に快調な動きを見せています。今回は、山形県鶴岡市で早くからエコ住宅の普及に取り組んできた(有)親和創建を訪ね、エコポイント開始後の普及の状況、制度を利用する人々の評価と今後の課題などを取材しました。

●塩ビ内窓の出荷が急増。対前年比3〜4倍

 住宅エコポイントは地球温暖化対策の推進と経済の活性化などを目的に、国土交通省、経済産業省、環境省が三省合同で実施している事業です。
 一定期間内に行われた、(1)エコ住宅の新築(省エネ法のトップランナー基準相当の住宅、または省エネ基準(平成11年基準)を満たす木造住宅)、(2)エコリフォーム(窓や外壁、屋根、天井、床などの断熱改修、またはこれらと一体的に行うバリアフリー改修)に対して、様々な商品や追加工事費用などと交換可能なポイントを発行するもので(一戸当り最高30万円分)、2009年度2次補正予算により正式決定された後、2010年3月8日から申請受付がスタートしています(制度の詳細は住宅版エコポイント事務局のホームページ参照 http://jutaku.eco-points.jp/)。

 同事務局がまとめた7月末時点での住宅エコポイントの実施状況を見ると、ポイントの発行対象となった工事件数は3月からの累計でおよそ9万6000件。うちリフォームが8割近くを占めていますが(下の表)、中でも好調なのが窓の断熱改修で(ガラス交換、内窓の追加設置、外窓の交換)、その数7万3600件余りと、6月末の約4万8000件から、わずか1カ月で5割以上の伸びを示しています。
 これに伴って、リフォーム用塩ビ内窓の出荷も急増しており、経済産業省がサッシメーカーなどへの聞き取り調査に基づき推計した結果では、塩ビ内窓の出荷量は、対前年比3〜4倍に達しています。

●賃貸住宅に塩ビ内窓を設置した例も

大滝取締役  

 社会の環境志向を背景に順調な走り出しを見せている住宅エコポイントですが、実際の普及の現場の動き、そして利用者の評価はどうなっているのか、住まいのトータルアドバイザーとして活躍する(有)親和創建の大滝典子取締役に話を聞きました。
 「この7月までに窓の断熱改修を3件、外壁、天井等の断熱を2件やらせてもらった。鶴岡市を含む庄内地方というのは、冬の寒さも夏の暑さも厳しい土地柄で、住宅エコポイントが始まる以前に断熱リフォームを済ませてしまった家が多い。その分、エコポイントのおかげで工事が急増したという感じではないが、家の断熱性が高くなった上に特典が付くということで、利用したお客さまはみんな喜んでいる。また、賃貸住宅に塩ビサッシの内窓を付けたケースでは、借り手が『すごく暖かくて快適になった』と大家さんに感謝していると聞く。大家さんも満足していて、もう一棟別の貸家もリフォームする予定になっているが、いずれにしても、エコポイントをもらうために改修するのではなく、ポイントは環境のために改修した結果もらえるものと考えているお客さまが多いと思う」
 ポイントの使い道としては、エアコンの購入や玄関の改造、商品券との交換などに利用されているほか、工務店と相談してポイントの一部を次回のリフォームに回すといったケースも見られます。
 下の写真は、内窓の設置、壁の断熱などを行った家の模様を記録したものですが、このケースでは上限30万ポイントのうち一部を、年内に行われる2階部分のリフォームに利用する予定とのことです。

●不慣れな業者の参入に警鐘

 一方、作業の中から検討すべき課題も見えてきたと言います。そのひとつが、住宅エコポイントのスタートを機に、断熱改修に不慣れな工務店や他業種からの参入が相ついでいること。
 「太陽光発電などと併せて住宅リフォームも手がける家電メーカーなどもあるが、改修後の影響や使い方の説明が殆どなされていないことが多い。例えば、内窓をつけると気密性能も高くなるので、開放型のストーブを使ったり洗濯物をたくさん干したりすると結露を起こしたり、換気不良が起きる可能性もある。そういう問題をちゃんと説明して換気対策をきちんとする必要を理解してもらった上で工事をしているのか、ということが非常に気にかかる。初めに商売ありきで、ただ内窓を付けてしまえばいいというのでは、住宅を良くしようという制度本来の意義が歪んだ方向に変わってしまう」
 と、大滝取締役は警鐘を鳴らしています。

●全体として効果の大きい政策

 また、壁や床の断熱改修でも「断熱材の素材、性能に見合った認定基準の設定が必要」だといいます。
 「特に床断熱の場合、地面からの湿気を吸いやすいグラスウールより、発泡ポリスチレン系やフェノール系など高性能のプラスチック断熱材のほうが少量で効果を発揮するが、ポイントがもらえる使用量(容積)の基準が同一に設定されているため、グラスウールではポイントがもらえるのに、プラスチック断熱材は数量が基準に達しないのでもらえないという現象が起きている。我々としては、床下には湿気による落下などの心配のないプラスチック断熱材を使いたいが、現状では、相当大量の面積をやらないとポイントの対象にならない」
 このほか、ポイントの上限が新築とリフォームで同一になっていることの問題点なども指摘されていますが、同社の五十嵐社長は、「住宅エコポイントは、環境性能の高い家が恩恵を受けられるよう、建設業界や塩ビ業界などが頑張ってきたことが形になったもの。家屋の環境だけでなく、住宅着工件数の増加にも役立っており、全体としては、やはり効果の大きい政策だと思う」と評価しています。

●“温度のバリアフリー” をめざして

  五十嵐社長

 (有)親和創建(五十嵐透社長/山形県鶴岡市日枝乙6、TEL 0235-28-3106)
 1993年に設立された『建築・五十嵐』が前身。2000年11月法人化。住宅に関する工事全般(新築・増改築・断熱改修・リノベーションなど)を請け負うが、中でもエコ住宅の建設とエコ改修では県内のリーダー的役割を担う。“温度のバリアフリー”を掲げ、「住む人の身体に負担がなく、温度差を感じずにオールシーズンまるごと使える家を、できる限り小さなエネルギー消費で実現する」ため活動を続けている。住まいと環境東北フォーラム、家と人の会会員