塩ビサイディングの普及に、新たな「追い風」
阿蘇市が公営往宅改修に塩ビサイディングを採用。
公共施設の需要に道
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塩ビサイディングでリフォームされた阿蘇市の市営住宅 |
“塗装のいらない外装材”塩ビサイディングに新たな追い風が吹き始めました。熊本県阿蘇市はこの春、公営往宅のリフォーム用に信越ポリマー(株)の塩ビサイディングを採用。今年から本格施工となる見通しで、同社はこれを機に公共施設での需要を積極的に拡大していく計画です。阿蘇市との交渉を担当した同社塩ビ事業本部の宮本康平サイディンググループマネージャーに、事業の現状と今後の課題などを聞きました。 |
●30年間メンテナンスフリーに近い耐久性
塩ビサイディングは、1960年代にアメリカで開発された家屋の外装材。金属系や窯業(セメント)系など従来の外装材にはない様々な特長を備えていることから、現在では北米を中心に、新築からリフォームまで幅広く利用されており、日本でも近年着実に普及が進んでいます。
塩ビサイディングが持つ様々な特長の中でも特に注目すべきは、その優れた耐久性。弾力性に富み衝撃にも強い塩ビサイディングは、錆びることもなく、凍結でひび割れすることもありません。また、酸やアルカリといった薬品にも強く、海からのしぶきによる塩害や都市部での酸性雨、火山灰などによる錆び、腐食などの心配がありません。
さらに、他の外装材のような表面塗装ではなく、材料自体に顔料を練り込んでいるので、表面が剥げたり、色むらができたりすることがなく、めんどうな塗り替えも不要。簡単な水洗いで程度で30年以上にわたって美しい外観を保ちます。
このほか、軽くて施工が簡単なこと、特にコスト面では、メンテナンス費用がほとんど掛からないことなどを考慮すると、塩ビサイディングは各種外装材の中で最も経済的な製品といえます。
今回、阿蘇市が塩ビサイディングを市営住宅のリフォームに採用したのも、長寿命でランニングコストが小さいという塩ビサイディングならではの特長を高く評価した結果といえます。
●ランニングコストの安さが決め手に
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宮本マネージャー |
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塩ビサイディングが施工されたのは、阿蘇市の市営住宅の中の8棟。宮本マネージャーの話では「実現まで3年の期間を要した」といいます。
「3年前に阿蘇市役所の建設課から当社のホームページに直接連絡があったのをきっかけに、両者の間で検討を重ねてきたが、話が具体的になったのは昨年に入ってから。阿蘇市には築35年を過ぎた市営住宅が850戸以上あるが、そのうち何棟かを選んで試験的に塩ビサイディングを施工してみようということで、トントン拍子に事が運んだ」
当初阿蘇市では、塗装(塗り替え)や金属系も選択肢に入れていたようですが、塗装の場合、材料費は安いものの、最低でも数年に1回は塗料を塗り直さなければいけないこと、また金属系の場合は、多彩なデザイン性を有するものの、材料費が高い上に錆びたり凹んだりしてメンテナンスに手間がかかること、などがネックとなりました。最終的に塩ビサイディングの採用に落ち着いたのは、初期投資をしてもランニングコストが小さいのが最大の理由ですが、これに加えて、阿蘇は火山が近くにあること、冬は厳寒、夏は酷暑にさらされて建物の劣化や凍害も多いという盆地特有の環境に対応できることも決め手のひとつとなっています。
施工後、住民からは「見違えるようにきれいになった」「前より暖かくなった」といった声が上がるなど評判は上々の様子。阿蘇市では、今年度からさらに棟数を増やして本格的に塩ビサイディングを施工していく予定で、現在その入札が行われています。
●今年度の目標は「10自治体での新規受注獲得」
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阿蘇市の新小里集会所 |
今回の阿蘇市の動きとは別に、同社の製品は数年前から、雲仙市のやまびこ会館、島根県隠岐島の駐在所や山口県萩市のダムの取水ボンプ場などに採用された実績を積み上げてきており、今年3月には秋田県男鹿市の小学校の外壁にも採用されています。このケースは、塩害で劣化した築7年の校舎の1階部分を試験的に改修したもので、経過が順調であることから今年度は全面改修が行われる予定となっています。
以上のような実績をテコに信越ポリマーでは、これまで戸建て住宅のリフォームを中心に進めてきた塩ビサイディング事業を、全国の公共物件に向けて拡大していく計画で、今年度は「とりあえず10自治体での新規受注獲得」を目標に活動を強化しています。
「実際の施工は先になっても、今年度の計画の中で塩ビサイディングの採用を決定してくれる自治体を10カ所受注したい。棟数や売上の多寡はひとまず脇に置いて、とにかく事例を増やすことを第一に長い目で仕事をしていく。また、公共物件といっても住宅ばかりでなく、公民館、集会所、廃棄物集積所などの施設も手がけていく計画で、既に阿蘇市では小里地区の集会所をリフォームした実績もある」
同社には早くも熊本市、長崎市、鹿児島市などから引き合いが来ているとのことで、宮本マネージャーは「長崎市では塩害対策、鹿児島では火山灰対策もセールスポイントに話し合いを進めていく」としていますが、一方で「今後全国の自治体に展開していく上では、やはりランニングコストの安さが最後の切り札になるだろう」との見方も示しています。
「塩ビサイディングはあくまでも塗装の代わりというのが我々の考え方。もちろん塩害、凍害対策という点も大きな要素だが、そうした問題と無縁な地域に対しては、塗装して10年持たせるか、塩ビサイディングを張って30年持たせるかという視点で、コストパフォーマンスを訴えていくことが最も効果的だと思う」
●断熱性能、リサイクル適性などをアピール
「当社が塩ビサイディングを市場に出してから8年目。事業は今やっと緒についたところで、これからが正念場だが、塩ビサイディングに対する社会の認知度はここ数年で確実に上がってきており、当社のホームページへのアクセス件数も個人ユーザーを中心に急増している」
こうした中、将来戦略として重視されているのが「環境性能のアピール」です。
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新築での施工例も増えています |
「もともと塩ビは断熱性の高い樹脂。塩ビサッシへの期待が高まっているのも、その断熱省エネ効果によるが、これに塩ビサイディングと断熱材を組み合わせれば家屋の断熱性能をさらに高めることができる。また、リサイクルへの対応も今後のポイントで、実証データを蓄積しながら、金属系などに比べてリサイクルしやすいことを積極的に訴えていきたいし、業界全体でリサイクルの取り組みを進められるようになれば、塩ビサイディングの需要はさらに加速していくと思う」
塩ビサイディングのリサイクル適性は樹脂サイディング普及促進委員会の試験結果(前頁)からも窺えることで、業界の環境対応の進展が注目されます。
■塩ビサイディングの耐久性
右の図は、樹脂サイディング普及促進委員会が、岩手県安比高原のペンションで15年間使用された塩ビサイディングを用いて行った強度試験(引張り試験:2000年度実施)の結果をまとめたもの。
建物の西および南施工面から採取したサンプルA、Bの引張り強度、伸びはいずれも、保存されていた未使用品Cとほとんど変わりません。また、サンプルA、Bを混合した再生品Dも、未使用品Cと変わらない強度を示しています。 |
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