2010年3月 No.72
 

塩ビ管の現状と展望

 およそ55年にわたって、上下水道などのライフラインを守り続けてきた塩ビ管。最近では、景気後退の影響などで事業環境が厳しさを増す中、新たな普及の方向も見えはじめています。ここでは、塩化ビニル管・継手協会の小西四郎専務理事の寄稿により、日本における塩ビ管の現状と展望を概観した上で、製造の現場で進む新たな動きを具体的に見ていくこととします。

 

 

耐震管、老朽管の更新事業が拡大傾向。
塩ビ管の更なる普及に期待

塩化ビニル管・継手協会 専務理事 小西 四郎

 

●幅広く活躍する塩ビ管、リサイクル事業も進展

  堺水道展に出展(平成21年11月)

 硬質塩化ビニル管は、昭和26年に国産化がはじまって以来、その優れた特性により上下水道をはじめ、建築設備、農業用水、ケーブル保護など幅広い分野で使用されています。
 塩化ビニル管・継手協会は、昭和29年に、業界の健全な発展を目的として設立され、以後55年間にわたって、需要家の皆様を対象にした啓発活動、展示会への出展、講習会の開催などに取り組んできました。また、技術面でも、製品規格の統一、公的規格化、品質の向上や施工技術の研究開発・改良に関する共同研究、経年品の管路調査など、幅広い活動を続けております。
 また、平成10年からは、資源循環型社会の構築という社会的な要請に応え、資源の有効利用の立場から、使用済み塩ビ管・継手の受け入れからリサイクル管の製造・販売に至る「一貫リサイクルシステム」を構築し、リサイクルを推進しています。
 近年、地球温暖化防止が益々重要課題となる中、リサイクル事業がスタートしてから12年を経過し、更に皆様にご活用いただけるようにシステムの拡充を図り、業界としての責務を果たして行く所存であります。

リサイクルシステム図

●世界同時不況の影響

 平成19年度においては、塩化ビニル樹脂の国内出荷量127万8千トンに対して、硬質塩化ビニル管・継手の出荷量は44万1千トンとなっています。塩化ビニル管・継手は塩ビ樹脂から出来ている製品の代表例と言えます。
 平成20年度及び平成21年度は、平成19年度に発生した世界同時不況の影響が続き、所得・雇用環境に大きな改善が見られない中で、インフラ向けや住宅関連の需要が戻らず、当業界にとりましては、真に厳しい状況であります。
 今後の塩ビ管・継手の販売促進には、インフラ向けの公共投資確保及び住宅関連の需要回復が必要です。

●政権交代後の予算措置

 さて、政権交代後初めての編成となる平成22年度予算は、「既存予算を抜本的に見直し、施策の大幅転換を図るとともに、事業の効果や妥当性を吟味して重要施策を推進するための予算を積極的に計上してゆく」として、国土交通省関係の公共事業関係費は、4兆8585億円となる見込みです。
 また、地域主権に向けた予算制度の抜本見直しとして、予算資本整備総合交付金(仮称)を創設し、その中で、地方公共団体が行う「下水道事業」「都市水環境整備」については、「地方自治体が創意工夫を生かした事業展開をできるようにする」こととして、平成22年度は2兆2千億円が計上される見込みとなっております。
 厚生労働省健康局水道課で取りまとめられた公共事業関係予算(水道施設整備費)については、平成22年度は737億円となる見込みです。
 事業仕分けの評価結果等を踏まえ、国庫補助制度を見直し、老朽管更新事業については、現在、資本単価(円/m³)(注)によって1/4あるいは1/3としている補助率を、平成22年度新規採択事業から、それぞれ1/3、1/2へと改めることで、老朽管更新を更に推進してゆくこととしてます。

(注)水道事業あるいは水道用水供給事業で、単位水量に必要な水道水源開発等施設整備費用をいう。

●今後の展望−期待されるRRロング管の耐震性能

 硬質塩化ビニル管は、強度・耐食性・耐震性に優れている上に軽量で施工性が良く、あらゆる用途に最も適した管材です。東京都は、平成27年までに首都高速中央環状線の内側で電線の地中化を進め、すべての都道の電柱を無くす計画を策定しましたが、ケーブル保護管として塩ビ管が使用されるようです。
 協会としましては、上記のような公共事業予算の動向により、上下水道管とも、耐震及び老朽管更新事業が今後拡大する傾向にあることから、「強度・耐食性・耐震性に優れている上に、軽量で施工性も高い」という塩ビ管の良さを、需要家、ユーザー、需要者の皆様にご理解いただき、塩ビ管での更新が進むことを期待しております。
 特に、RRロング管(下図参照)については、「水道管の基幹管路でも耐震性適合あり」と、厚生労働省水道課長通達「水道施設の耐震化の計画的実施について」でも判断をいただいており、耐震管路へのご使用を期待しております。

●老朽管機能回復のための新工法にも注目

 老朽管路の機能回復としては、近年「硬質塩化ビニル製の帯状板あるいは管」を使った非開削による更生工法の採用が年々増加しております。同じく硬質塩ビ製品を使用する工法として、塩ビ管の普及促進に向けた相乗効果にも注目しており、併せて、管更生事業での塩ビ管の更なる普及を期待するところです。

RRロング管の耐震性能