2009年9月 No.70
 

「PVCニュース」70号によせて

関東学院大学法学部
教授  織 朱實

 PVCニュース70号発刊おめでとうございます。17年間、8500部の発行。これだけの部数を、これほどの年月発行し続けているのは、数多くある業界誌の中でもそれほど多くはないかと思います。緑のラインのさわやかな小冊子は、私の小田原の研究室にも、3月、6月、9月、12月、と季節の変わり目ごとに届けられます。「季節のおたより」のような感覚で、PVCニュースの頁をめくると、「塩ビのリサイクルの現場」「塩ビ業界温暖化問題への取組」「新しい技術開発」など業界の方たちの生の声を聞くことができます。こんな風に、PVCニュースは私にとって毎日地道に塩ビ業界を支えている現場の様子を、季節ごとに知らしてくれる「季節のおたより」になっています。しかし、それだけでなく、PVCニュースが、なにより凄いのは環境問題を考える貴重な情報源になっているところです。
  シリーズ「有識者に聞く」は、今回でもう66回目。毎回、男女交互でいろいろな分野の専門家が塩ビや環境問題について、その時々の話題をとりまぜながら熱く語ってくれています。「よくぞ、これだけの人を!」という様々な視点を有する有識者の意見(末席ながら私も随分前に登場させていただいています)を手軽な形態で読める機会はなかなかありません。毎号、男女交互というのが素晴らしいです。化学物質は、女性にとっては馴染みにくい世界ですが、PVCニュースの女性有識者が「どんな話をしているのかしら?」との興味から塩ビの世界を知った女性も多いかと思います。感心するのは、これほど様々な有識者の方のお話も最後はちゃんと「塩ビと環境問題」に落ち着いているところです。こんなところからも、塩ビがいかに私たちの社会にかかわっているのか知ることができます。
  さて、法学部の学生に「塩ビのイメージは?」と聞くと、5年くらい前は「環境に悪い、ダイオキシン。環境ホルモン」というマイナスイメージの単語が多かったのですが、今は「全く知らない」という回答が圧倒的多数です。生まれたときからプラスチック製品に囲まれている世代は、普段なにげなく使っている素材に関心を払うことはほとんどありません。しかし、環境問題を解決していくためには、「出たものをどう始末するか(リサイクルや環境負荷の低減)」だけでなく、「より環境負荷の少ない製品作り」を支える消費者の「購入・使用・廃棄処理」がなにより必要になってきます。業界からの「そもそも、どんな素材で、どうやって作られているの?」そこまで遡った情報発信がなければ、関係者が協働して環境問題に取り組むことができません。PVCニュースは、わかりやすい構成、ホットなトピックス、普通の人でもぱらぱら眺めてみようというレイアウト、市民にとって手に取りやすい情報ツールです。私も、PVCニュースを介して、今年塩ビサッシの内窓を我が家に導入しました。結露の悩みから解消されたのが一番の成果です。また、8月に、ゼミの学生をつれて塩ビ管のリサイクルを経験させていただきました。学生も、現場の苦労を肌で感じてくれたようです。
  PVCニュースのこうした親しみやすさが、製品そのものに遡った理解を市民が行うのを助けるための情報発信源としても活用されていく、そんなことも期待しながら、今後のますますのご活躍を祈念したいと思います。