2009年6月 No.69
 

ビニル系床材リサイクルシステムを拡充/
インテリアフロア工業会

広域認定の取得を機に、回収量増加へさまざまな新機軸。対象地域も全国に拡大へ

 インテリアフロア工業会(I.F.A、会員6社=タキロン(株)、(株)タジマ、東リ(株)、フクビ化学工業(株)、富双合成(株)、ロンシール工業(株))が2003年から実施しているビニル系床材のリサイクル事業が、2009年度からさらに拡充されます。回収対象地域を全国に拡大するほか、回収品目も、従来の4品目に使用済み置敷きビニル床タイルを新たに追加。昨年10月に環境省の産業廃棄物広域認定制度を取得したのを機に事業の見直しを行ったもので、今後、建設業界などを対象にPRを進め、回収量の拡大と資源循環型社会の構築に向け活動を強化していく計画です。

●「床材から床材」へマテリアルリサイクル

 I.F.Aでは、2000年以降あいついで法制化された「循環型社会形成推進基本法」「資源有効利用促進法」などの趣旨に沿って、循環型社会への貢献を目的にモデル事業の検討に着手。2003年3月に環境省の「産業廃棄物広域再生利用指定制度」(以下、広域再生利用指定制度。※参照)の指定を8社(当時)連名で取得した後、同年10月から正式に事業をスタートしました。
 リサイクルシステムの枠組みは、排出事業者である元請事業者(ゼネコン)と予め契約を交わした上で、各社の工事現場(ビルやマンションなどの新築工事)から出る塩ビ床材の端材や余材(回収対象はビニル床シート・巾木、クッションフロア、ホモジニアスタイルの4品目)を30kg詰めの専用回収袋に分別→I.F.Aから委託された運送会社が収集→中間処理を担当する(株)タイボー(和歌山県和歌山市)岐阜工場で粉砕処理→IFA加盟各社の工場で再び床材の原料として再利用する形で、床材メーカーが自らの手で「床材から床材」へマテリアルリサイクルする点が最大の特徴となっています。
 また、専用袋単位で回収する宅急便方式も、コンテナトラックを使う通常のやり方に比べて排出作業が容易で小回りがきくという点でシステムの特徴のひとつとなっていますが、事業の対象範囲を、首都圏(東京、埼玉、神奈川、千葉の1都3県)、中京地区(愛知県)、近畿地区(京都、大阪、兵庫の2府1県)の3地区に限定したこと、さらには費用負担やPR不足などの問題から、回収量の伸び悩みが続いていました(2年前にリサイクルコストの収集運搬費と処理費用を見直したことで、2007年、2008年度のリサイクル量はやや増加した)。

※産業廃棄物広域再生利用指定制度=メーカー等が廃棄物処理を広域的に進めることで、その再生利用が確保されると環境大臣が認めた場合、収集運搬及び処理業に関する自治体ごとの許可を不要とする特例制度。1994年の廃掃法施行規則の改正により創設されたが、2003年の法改正で産業廃棄物広域認定制度が創設されたことに伴い廃止された。
※産業廃棄物広域認定制度=広域再生利用指定制度を発展させたもので、制度の重点が廃棄物の「再生利用」から「適正処理」に移行している。不法投棄の防止を主眼とし、メーカー等は再生利用までの義務を負わないが、適正処理について厳重な対処を求められる。


●新システムのポイント。関東の中間処理拠点整備も

 

 こうした中、I.F.Aでは、広域認定制度への移行が決定したことを受けて、2年前から同制度の認定へ向け準備作業に着手。回収量の拡大をめざして地域の拡大や品目の追加などを含めシステムの見直し作業を進めてきましたが、2008年10月に認定を取得したのを機に、2009年度から本格展開を図ることとしたものです。現在I.F.Aでは、広域再生利用指定制度の枠組みで契約していたゼネコン各社との契約更改作業を進めながら、新システムに対する各社の認知向上へ向けてPR活動を強化しています。
 新システムの主なポイントは次のとおりです。
・エリアを3地区限定から日本全国に拡大。
・従来の4品目に加えて、建築物の改修・改装現場で発生する使用済み置敷きビニル床タイルを回収対象とした。置敷き床タイルは施工時に接着剤を使わないのでモルタルやセメントなどが付着しないため、回収しやすくリサイクル性が高い。
・置敷きビニル床タイルの回収には、納品した製品ケースの空き箱(20kg詰め)に識別シールを貼り、専用ケースとして利用する。宅急便方式は従来どおり。
・関東地区の中間処理施設として、茨城県下妻市にある協栄化成(株)と連携。これまでの岐阜県にある(株)タイボーと合わせて、東西2拠点を整備する。(変更申請で追加予定)
・置敷き床タイルについては、中間処理施設を通さず製造メーカーへ直接戻す方式を新たに構築する。
・リサイクル費用も見直し、運送費と処理費を一本化する。
・全国展開に対応するため収集運搬を委託する運送会社を現行の3社から65社に拡大。
 今後の取り組みについてI.F.Aは、「平成21年度の計画としては処理量10トンを掲げており、目標の達成へ向けて関連会社各社で協力を進めていく」とした上で、次のように述べています。
 「最近は床材を購入する側が現場の寸法に合わせて端材が出ないようにオーダーしてくるので、端材・余材の量は基本的に減少する方向にある。3Rの中でも特にリデュースが進んでいるわけで、その分は置敷きビニル床タイルの回収を増やしていくことで対応したい。ただ、置敷きビニル床タイルは古くなった部分をリカバー(改修)しやすいことが製品の特長であり、リサイクルの前にリカバーを加えた4RとしてPRしていくほうがふさわしいとも考えられる」(I.F.Aの簾内英樹技術副委員長)

★不法投棄の絶対防止へ管理役を担う- I.F.A事務局 平山勲氏(談)

 以前の広域再生利用指定制度の枠組みでは、I.F.Aの会員メーカーに対して廃棄物の再生利用まで義務付けられており、再生利用する工場(会員メーカーの工場)の設備の内容も含めて厳しい制約があったが、広域認定ではそこまで求めていない。発生した使用済み床材を回収してリサイクルするシステムが構築できていれば必ずしも自ら再生利用する必要がなく、粉砕したものが売れるのであれば売ってもいいという形に変わった。但し、廃棄物の処理は廃掃法に基づいて適切に処理しなければならないため、ある意味では緩和されたが、廃棄物の不法投棄という点では厳重になったといえる。
 今回、広域認定制度への移行に伴いI.F.A事務局が事務センターとして正式に位置づけられた。システム全体の管理役という立場であり、排出された使用済み床材がどの時点でどこにあるか、移動の状況を逐一チェックして、不法投棄が絶対起こらないよう監視体制を担うことになる。大変な仕事だが、循環型社会に少しでも貢献できるようゼネコンをはじめとする関係者の協力を得ながら取り組みを進めていきたい。