東大本郷キャンパス本部棟に
樹脂サッシ(内窓)を試験採用
「低炭素キャンパス」の実現に向けて、産学連携の先進的取り組み
東京大学本郷キャンパス(東京都文京区本郷)の本部棟建物の1フロアに、樹脂サッシが施工されました。東京大学サステイナブルキャンパスプロジェクト(TSCP)と樹脂サッシ普及促進委員会(Jmado)、塩ビ工業・環境協会(VEC)が、地球温暖化防止へ向けた産学連携研究の一環として試験的に取り組んだもので、現在、施工後の省エネ効果などの測定作業が進行中です。 |
●国立大学では初のケース
塩ビ樹脂製の窓枠と複層ガラスの組み合わせにより、窓からのエネルギーロスを大幅に低減する樹脂サッシ。その優れた断熱効果、CO2削減効果から、地球温暖化防止策の切り札として期待が高まっており、京都議定書の目標達成(1990年比で温室効果ガスを6%削減)に取り組む政府でも、公共施設の断熱改修に際して樹脂サッシを試験採用するケースが増えてきています。
既存の窓に複層ガラスと樹脂サッシの内窓施工で年間のCO2排出量を約18%削減した環境省の取り組みは、同省総合環境政策局の小林光局長から本誌に寄せられた一文(2頁)でも報告されているとおり。 今回の東京大学のケースは、既存の窓に単板ガラスと樹脂サッシの内窓を取り付ける試みです。「低炭素キャンパスづくり」を最優先課題として昨年からスタートした「東大サステイナブルキャンパスプロジェクト(TSCP)」が、具体的な活動の第1弾として実施したもので、国立大学による樹脂サッシの試験採用は今回が初のケースとなります。
東京大学が他の教育機関に先駆けて、キャンパスの低炭素化という挑戦に乗り出したことは、地球温暖化防止へ向けた産学連携の先進的取り組みとして大きなインパクトを与える動きといえます。
●本部棟1フロアの窓に
TSCPによれば、東京大学のCO2排出量は東京都の業務系事業所中最大のレベルになっています。また、排出源としては全体の8割が電力消費に伴うもので、さらにその6割強が照明、空調などの一般系電力となっています(残りの4割弱は実験系)。
TSCPでは、こうした状況を踏まえて、まず本郷キャンパスにおける一般系電力由来のCO2削減から対策に着手することを決定。その具体策の一つとして、総長室などが入る本郷キャンパス本部棟建物の1フロアの既設の窓に樹脂サッシの内窓を取り付け、効果のモニタリングなどを進めることとなったものです。
●冷暖房負荷の19%削減を予測
施工された内窓の総面積は104m2。作業に要した日数は1月31日〜2月1日の2日間で、こうした施工の手軽さも樹脂サッシの特長のひとつです。
現在は、施工後の断熱効果とそれに伴う省エネ、CO2削減効果などについて計測作業が進められていますが、東京大学坂本教授が行った施工前の試算によると、冷暖房負荷を19%削減することが予測されています。
「取り付け完了後、職員の皆さんから『窓際の寒さから解放されとても快適だ』と嬉しいご感想をいただいている。また、2月7日に東京大学で行われた地球温暖化問題に関する公開シンポジウムでは、小宮山総長から樹脂サッシ内窓設置とその効果についての紹介があった。総長室は日が暮れても冷え込むことがなく快適になったとのこと。」(Jmado関係者) 東京大学の樹脂サッシ試験採用が、低炭素キャンパスの実現に寄与できることを期待したいものです。
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窓ぎわ温熱環境の計測風景 |
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空調負荷の削減効果を計測 |
★東京大学サステイナブルキャンパスプロジェクト
「大学には、時代の先頭に立ち、自らが環境と調和した持続可能な教育研究活動を実践することにより、環境調和型の経済活動を軸とする新たな社会モデルを示していく責務がある」という小宮山宏総長の考えから、2008年5月に発足した総長直属のプロジェクト(Todai Sustainable Campus Project,TSCP/プロジェクト室長=磯部雅彦副学長)。
東京大学が従来から有している知的資源を活かし、持続型社会の実現に向けた先導的な試みを実践していく計画で、多岐にわたる取組課題のうち、現在は問題の緊急性、困難性などから、「温室効果ガス排出削減による低炭素キャンパスづくり」を最優先課題に活動を展開している。
第1フェーズ(2008年度〜2012年度)のアクションプランでは、「省エネ機器への更新支援」「大量調達による省エネ機器導入普及モデルの作成」などの対策を実施することにより、大学全体のCO2排出量の13%削減(2006年度比、非実験系の15%削減)が目標となっている。 |
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