2009年3月 No.68
 

家は小さな地球。
家の環境を守ることが 地球環境を守ること

環境省総合環境政策局
小林 光 局長

 京都議定書の「マイナス6%」の目標達成には家庭やオフィスでのCO2削減対策がカギと言われる中、私たちひとりひとりにできることは?環境省総合環境政策局の小林光局長は、ご自宅をエコハウスに改装した他、省の庁舎にも樹脂サッシの内窓を採用するなど、率先して温暖化防止の取り組みを進めてこられました。このほどお寄せいただいた一文の中で局長は、「家は小さな地球。家の環境を守ることが地球の環境を守ることにつながる」と訴えています。

●洞爺湖サミットの大きな成果

 昨年(2008年)は、7月に北海道洞爺湖サミットが開催され、地球環境問題がその主要な議題となりました。最大のポイントは、2050年までに世界の温室効果ガス排出を、少なくとも半減する目標というビジョンを、先進国だけではなく、中国、インド、ブラジルなど途上国の首脳も含めて議論し、今後、国連の交渉の場で検討し採択することを求めたということでしょう。
 地球温暖化の問題については、誰が悪いとか先に環境を汚したのは誰だといった議論もありますが、そういう対立を超えて、もうこのまま放ってはおけないという危機感が世界で共有されてきました。もちろん、現時点では京都議定書の目標達成へ向けた最初の取り組みを着実に実施することが世界各国の課題になっているわけですが、その先の長期的な対策についてもようやく方向が出てきたことは、洞爺湖サミットのとても大きな成果だったと思います。

●家庭やオフィスのCO2対策がカギ

樹脂サッシの内窓を施工した環境大臣室

 まずは先進国の義務として京都議定書の目標をきちっと達成せねばなりません。長期的な温暖化対策への取り組みという観点では、これは言わば練習問題のようなものです。日本の場合1990年比で温室効果ガスを6%減らすという目標に対して、逆に7%ぐらい増えてしまっています。
 その原因はいろいろありますが、排出が大きく伸びてきているのが、住宅とビルのふたつです。ちなみに、一番大きい工場からの排出はさらに削減が必要ですが、減少傾向にありますし、自動車からの排出も頭打ちになっています。
 しかし、住宅とビルから出る温室効果ガスは1990年に比べて4割近くも増えています。従って、有効なCO2削減対策を始めることが求められているのが家庭やオフィスなのです。言うまでもなく、節電など省エネを進めることは大事です。それによって1、2割は減らすことができますので、各家庭、職場でぜひ取り組んでもらいたいと思います。それでも、その倍ぐらいは減らす必要があります。今から建てる住宅はおそらく2050年ぐらいまで持つでしょう。ビルならより長く使われるでしょう。ですから、洞爺湖サミットで示された長期的な目標を実現する上で、住宅とビルへの対応は速やかに進めなければならないのです。

●樹脂サッシでCO2排出量を18%削減-環境省の取り組み

 環境省では、小池大臣の頃から無暖房とウォームビズを実施してきましたが、金属製のサッシに単板ガラスの窓だったため、かなり寒くて、結露もひどかったのです。月曜日の出勤時などは、建物が冷えきっているために部屋の中でも吐く息が白く見えるという厳しい状況でした。我慢の省エネには限界があります。仕事の効率にも響きます。そこで、一昨年から大臣室をはじめとする省内のすべての窓に樹脂サッシの内窓を設置しました。
 その結果、無暖房でも快適に仕事ができるほど室内が暖かくなったばかりでなく、外の物音もすごく静かになって職場の快適性も向上しました。我々の調査では、冬場は、熱損失の削減率が約60%に達したほか、窓ガラスの表面温度が外気温に比べて6℃ほど上がり、窓際で寒さに震えることがなくなりました。
 逆に夏場は日射による熱の流入を3分の1ぐらいに減らすことができます。樹脂サッシの内窓を開けブラインドも上げたままにしておくと、外の熱気がどんどん入ってきて室温は37℃にもなってしまいますが、内窓を閉めてブラインドを降ろすと窓際でも27℃程度に保たれています。内窓の窓ガラスの表面温度も約5℃下がっています。ブラインドだけでも多少効果はありますが、やはり内窓の効果が大きいようです。

環境省での樹脂サッシ内窓導入効果

 他にも取り組みましたが、主にはこうした取り組みによって、環境省では年間のCO2の排出量を内窓設置前に比べて約18%削減できました。実は内窓を入れる以前、私は窓際に置いていたマングローブを寒さで枯らしてしまいました。可哀想なことをしました。

●エコハウス改装でCO2半減に成功

天候の違いと二酸化炭素排出量

 家庭での取り組みの参考としていただければと思い、私個人のことをお話しします。9年前に自宅をエコハウスに改装しました。家庭でどれだけCO2を減らせるものかと、太陽光発電や太陽熱給湯、薪ストーブ、雨水利用など当時できそうなことは全部やってみましたが、窓の断熱については、まだ樹脂サッシも種類が少なかったので、アルミ枠の二重ガラスを使いました。樹脂の窓枠を使っていれば、二重ガラスによる効果を倍増させるほどの削減ができていたはずです。それでも建て替え前と比べると、全体として45%〜50%までCO2を削減できています。
 シミュレーションしてみると、いちばん削減率を稼いだのはやはり断熱でした。特に冬の効果の大きさは、グラフを見れば一目瞭然です。建替え前の家は戦後すぐに建てたもので熱を外に捨てているような状態でしたが、断熱を強くすることで簡単に熱損失を減らすことができました。太陽光発電などに比べて費用も安く健康にもいい断熱は、やはり第一番目にお勧めしたい大事な対策だと思います。

●省エネリフォームの支援制度も続々

 省エネの技術が進んできたことで、最近は国でも家屋の省エネ改修を促進するためのいろいろな支援措置などを用意しています。環境省の地域協議会民生用機器導入促進事業や、経済産業省の高効率エネルギーシステム導入促進事業といった助成制度のほか、税制面でも省エネ改修後5年間のローン減税制度があります。また、今、国会に提案されている平成21年度税制改正案にも、省エネの新築住宅についてのローン減税のほか窓の改修を伴う省エネ改修費用の10%を所得税から減免する政策が盛り込まれています。地方自治体でも様々な補助制度を実施しているところが増えてきているので、ぜひ利用して頂きたいと思います。
 家は小さな地球です。家の環境をちゃんと守ることが地球環境を守ることに繋がるし、快適で健やかな暮らしに繋がるのだと思います。まずは自分の足元から楽しくエコに取り組んでみてはいかがでしょう。世界各国がグリーン・ニューディールとしてエコの取り組みを強化しています。わが家もグリーン・ニューディールしてみましょう。

<寄稿日/2009年2月5日>