2008年12月 No.67
 

青森県の使用済み塩ビ管リサイクルの現状
(弘前、八戸地区)

管工事組合、中間受入業者、リサイクル業者が連携。効率的なシステムづくり

 塩化ビニル管・継手協会(以下、協会)が進める使用済み塩ビ管リサイクル事業。スタートから10年を経過して、いま全国各地で積極的な活動が繰り広げられています。その中で、管工事業者と管工事組合、中間受入業者、リサイクル業者が連携してスムースな取り組みを進めているのが青森県。弘前管工事業協同組合と協同組合八戸管工事協会、中間受入拠点の新開(株)青森出張所を訪ねて、取り組みの背景を取材しました。

弘前管工事業協同組合の取り組み

 青森県内で最も早くから塩ビ管のリサイクルに取り組んできた弘前管工事業協同組合(弘前市大字茜町3-6-1/TEL 0172-32-7309)。同組合が協会のリサイクルシステムを利用し始めたのは平成12年の8月からで、協会の事業がスタートしてほぼ2年後のことでした。取り組みに着手した経緯を、同組合の工藤泰生事務長は次のように説明しています。
 「当組合には弘前市内の管工事業者40社が組合員として加盟しているが、塩ビ管廃材の処理については長い間埋立が中心で、『組合が率先して対応を考えてくれ』という要請が強かった。こうした声を受けて平成11年から本格的に検討を開始したが、様々な方法を模索する中で、幕張メッセで開かれたリサイクル関係の展示会で初めて協会と接触。パイプtoパイプのリサイクルにより循環型社会に貢献するという事業の主旨が、我々にとっても今後のあるべき方向と判断して協会のシステムを利用することに決定した」
 スタート当初は、回収方法なども試行錯誤状態で、組合員から持ち込まれる使用済み塩ビ管も汚れのひどいリサイクル不適品が少なくなかったといいますが、その後、新開(株)青森出張所を中間受入場とするシステムが完成。平成14年9月には専属の組織としてリサイクル推進部会を構築して指導に当たったこともあり、組合員の理解も進み回収量も増加して現在に至っています。

●「途中下車方式」で輸送コストを低減

弘前管工事業協同組合の関係者の皆さん。右端が赤石理事長、左端が工藤事務長

 弘前管工事業協同組合が回収する使用済み塩ビ管の量は、現在年間約5トン。回収作業は協会が用意した専用のパレット24台(1台約100kg詰め)を使って、8月のお盆前と11月後半〜12月前半の年2回に分けて行われます。パレットの数が組合員数に足りないため、申し込み順で1社1台が原則となっていますが、事前に各組合員の回収予定量やストック状態などを確認して必要分のコンテナを貸与、搬出日までに持ち込んでもらうなど、数に限りのあるパレットを効率的に回転させながら、「最小限のコストで最大限の回収」が可能となるよう工夫が払われています。  

トラックに積み込まれた使用済み塩ビ管

  一方、各社から持ち込まれた使用済み塩ビ管は組合職員が検品を済ませた上で、所定の日に回ってくる新開の収集便で米沢市のリサイクル業者・三芳屋に搬送されますが、この「途中下車方式」と呼ばれる方法(詳しくは「新開(株)青森出張所の取り組み」の項参照)は、組合と同社が長い間の協力関係の中から考え出したもので、排出者自身が中間受入場に持ち込むことを原則とする協会のリサイクル事業の中では珍しいケースです。後述する八戸市の組合も同様の方法をとっており、組合側の輸送コストを低減しリサイクルを維持していく上で、新開のこうした協力は非常に大きな意味を持っているといえます。  
  同組合の赤石英樹理事長は、「組合員の悩みを吸い上げて解決するのが組合の役割。使用済み塩ビ管のリサイクルも組合員へのサービスと循環型社会への貢献という意味で取り組んでいる。青森県では今年から廃プラスチックの埋立が規制されたため、組合員にとってこの事業に参加する経営上のメリットはますます大きい。今後も協会、新開、三芳屋といろいろな形で連携、研究しながら、よりきちっとしたシステムを作り上げていきたい」と語っています。

協同組合八戸管工事協会の取り組み

大坂事務局長

 弘前市に続いて、平成13年4月から使用済み塩ビ管のリサイクルに踏み切ったのが協同組合八戸管工事協会(八戸市青葉3-28-2/TEL 0178-44-2433)。八戸市では、昭和63年に水道事業の広域化を目的として近隣10市町村と共に八戸圏域水道企業団を立ち上げており、同組合の組合員もこの地域内の管工事業者65社を数えるほか、冬場の積雪が少ないため年間を通して集荷できることもあって、回収量は年間16トン(十和田市の分との合計、後述)に達しています。  
  同組合では、弘前市のケースと異なり、全組合員が回収用のパレットを最低2台ずつ購入して、各社の都合の良いときに常時搬入できるシステムを取っていますが、実際に新開に出荷するのは年平均ほぼ3ヶ月に1回とのこと。出荷予定日に同社の収集便が回ってくる「途中下車方式」は弘前市と同様ですが、隣接する十和田市の管工事組合もこの便を利用する形となっているため、事業所のある青森市を出発した収集便は十和田−八戸を経て米沢へ向かうルートを辿ることになります。  
  同組合の大坂誠事務局長の説明。「八戸圏域水道企業団の各自治体でも、使用済み塩ビ管の処理は埋立が中心だったが、埋立地が狭くなって処分料が一気に倍増したことから、全国管工事業協同組合連合会を通じて協会のリサイクル事業を紹介してもらった。当初はこちらから新開に搬送する形だったが、経費の負担が大きく、同社と改めて相談した結果、十和田市を加えた今の運搬ルートが取られることになった。この方法は我々にとってコスト面だけではないメリットがある。新開の収集用10トントラックにはパレットを40台積載できるが、うちだけでは不足でも十和田市と合計して40台になればすぐに取りにきてくれる。大体は十和田10、八戸30というのが平均的パターンだが、作業が効率的に進むので組合員もとても喜んでいる。今では埋立処分に出している業者は一社もない」

●企業トップの考え方も成否の鍵

 八戸管工事協会でも、当初は回収品の泥や異物の汚れが大きなネックになっていたといいます。「取り組みをスタートする際、各社の社長に協会の受入基準に適合する例と不適合の例を直接眼で確認してもらい、不適合の場合は不本意だが受け入れられないと伝えた。それでも最初は汚れのひどいものが結構あり、我々職員がパレットの中身を全部入れ替えて、さらに小型の洗車機で洗浄して出荷しなければならなかった。そういうことの積み重ねで次第に組合員の理解も進み、今ではここまでしなくともと思うほど、10センチ単位に細かく切断してきれいに汚れを落としてくる業者さえある。この取り組みの成否は、我々組合側がとれだけきちっとした受入体制を整備できるか、そして会社のトップがどれだけ真剣な考えを持っているかで大きく左右される」  
  大坂事務局長の話では、今後の問題として北に隣接する三沢市との連携も視野に入ってきているようです。三沢市の場合、最終処分場にまだ余裕があるため使用済み塩ビ管の埋立も行われていますが、その処分場も近い将来満杯になることが予想されるため、十和田−三沢−八戸というトライアングル地帯の使用済み塩ビ管を効率的にリサイクルする仕組みをどう構築していくかが検討課題となっています。

★使用済み塩ビ管のリサイクル事業と青森県の概況

 事業の開始は平成10年。全国各地の建築解体現場や管工事現場から出る使用済み塩ビ管を、建設会社や管工事会社、ハウスメーカーなどが回収し、協会と契約した近隣の受入拠点(中間処理会社や中間受入場)を経て、リサイクル塩ビ管のメーカー(リサイクル協力会社)が原料に利用する仕組み。平成19年現在、リサイクル率は60%に達する。
 青森県の場合、県内8市(地図参照)の管工事組合でリサイクルが進められており、各組合で対応は多少異なるが、基本的には、各地区の管工事組合(小口サービスステーション)に集められた使用済み塩ビ管を、中間受入場の新開(株)青森出張所が山形県米沢市の(株)三芳屋に搬送、同社で粉砕してリサイクル原料に再生するシステムとなっている。

 

新開(株)青森出張所の取り組み

 

増田所長(右)と工藤主任

 全国ネットワークで物流サービスを展開する新開(株)(本社川崎市)は、平成10年、協会のリサイクル事業スタートと同時に中間受入拠点としての活動に取り組んできました。現在、東北地区のほか、関東、近畿など全国9カ所に同社の中間受入場が設けられていますが、青森出張所(青森市問屋町2-11-4/TEL 017-728-7080)の場合、前述の「途中下車方式」のように、地域の実状に合わせた柔軟な対応が大きな特徴となっています。  

青森出張所に回収された使用済み塩ビ管

  同出張所の工藤主任は、「この方式を考えつくまでが一番苦労したところだ」と言います。「組合から運賃の問題について相談を受けたときはこっちも困った。青森−弘前間が45km、青森−八戸間が約100km、確かにその輸送コストは馬鹿にならない。八戸なら万単位のコストが発生する。かといってその分をこっちで持つわけにもいかないが、一方では組合との話で管工事業者が使用済み塩ビ管の処理にいかに困っているかもよくわかっていた。そこで工夫したのがこの方法だ。当社のトラックはパレット40台でフル稼働となるが、弘前には24台しかない。それなら、予め当社の在庫から16台を積んで、米沢に行く途中で組合の24台を積み込んでいけばいい。つまり、どっちみち米沢にいく車を途中下車という形で利用すれば、それで費用が発生しないで済む」  
  八戸市の場合はお互いの知恵を搾り出して今の十和田−八戸ルートが完成。「長い眼で見ればお互いにメリットのある仕組みになった」と工藤主任は言います。

●協会のパンフレットで持ち込み呼びかけ

 同出張所の増田正之所長の話。「新開の出張所の中でも青森は最も多く使用済み塩ビ管を受入れていると思うが、未だにこの事業を知らない管工事業者も少なくない。当社としても、できるだけ多くの業者と会って協会のパンフレットなどを使って持ち込みを呼びかけている。公共工事が減少する中、わずかでも有価で引き取ってもらえるのは有難いという業者の声も多い」。  
  なお、青森市では市役所のホームページで事業の情報を提供しているとのことで、こうした行政の協力も青森県の塩ビ管リサイクルを支える要素となっていることがわかります。

★リサイクル拠点、(株)三芳屋の役割

今野会長

 (株)三芳屋(山形県米沢市金池2-1-10/TEL 0238-37-8325)は、各種廃プラスチックを幅広く手がけるリサイクル業者。平成17年から協会のリサイクル事業に参加しており、山形市や福島市、仙台市、新潟市などの主要都市に近いという地の利を生かして、東北一円の塩ビ管リサイクル拠点として重要な役割を担っています。同社の今野光義会長は、青森県の管工事組合との作業について、「当社は使用済み塩ビ管を粉砕してリサイクル原料を作る役割だが、弘前、八戸の両組合とも非常に熱心で、汚れもきれいに落として出してくれるので大変助かっている。組合の幹部の意識の高さに頭の下がる思いだ。使用済み塩ビ管はリサイクルすれば宝の山。資源循環型社会への貢献という意味でも、組合といっしょにさらに積極的にリサイクルに取り組んでいきたい」と話しています。