2008年9月 No.66
 

水道管路の地震対策強化へ向け、
塩化ビニル管・継手協会が活動開始

 水道管路の耐震性改善へ向けた、行政、関係業界一丸の取り組み(水道施設・管路耐震性改善運動)がスタートしました。水道管として人々の生活を支え続けてきた塩ビ管にも、更なる期待がかかります。平成19年3月には塩ビ管の耐震性能についても評価する報告書が厚生労働省水道課によりまとめられており、塩化ビニル管・継手協会では、耐震性能が評価された塩ビ管を正しく理解して頂くための活動を展開中。

●水道施設・管路耐震性改善運動のスタート

 水道は現代社会の基本的なライフラインのひとつ。特に地震大国の日本にとって、安全で安心な給水ラインの確保は最重要に位置づけられる課題といえますが、水道管路全体のうち基幹管路(導水管、送水管、配水本管)の耐震化率は約11%と大きく遅れているのが現状です。
 こうした状況を踏まえて厚生労働省では、わが国の水道のあるべき将来像を示した「水道ビジョン」(2008年7月改訂)の中で、「基幹管路の耐震率化100%」などの施策目標を明示。今年の3月28日には、水道施設の技術的基準を定める省令の一部を改正する省令(改正省令)が交付されるとともに、水道課長通達(4月8日付け)により既設管路の耐震性能の評価や布設する管路の管種、継手の選定に当たっては、「管路の耐震化に関する検討会報告書」を参考にするよう、各都道府県に指示しています。
 一方、こうした行政の動きと連動して、水道関係業界は、この4月から「水道施設・管路耐震性改善運動」をスタートさせており、今後2年間に亘り、業界の総力を挙げて、耐震化促進の取り組みが全国展開されています。塩化ビニル管・継手協会も、(社)日本水道工業団体連合会の関連団体として、活動を開始しています。

●評価された塩ビ管の耐震適合性
 日本の水道管路の総延長は、平成17年度の統計で約59万7千km。塩ビ管は配水支管を中心に、導水管、送水管、配水本管まで幅広く利用されており、延長距離におけるそのシェアは31.7%(18万9千km)を占めています((社)日本水道協会誌より)。

図−1 塩ビ管(RRロング継手)の構造
 また、水道用の塩ビ管には、接続部を接着剤で固定したTS継手、接続部の内側にゴム輪を入れて地震の地盤歪みを吸収するRR継手(水道用ゴム輪受口形塩ビ管)、RR管より接続部の受け口を長くして伸縮性を高めたRRロング継手(水道用ゴム輪ロング受口形塩ビ管、図−1)の3つのタイプがあり、先の「管路の耐震化に関する検討会報告書」では、「RR ロング継手管は、使用期間がまだ短く、被災経験もほとんどないことから、十分に耐震性能が検証されるには未だ時間を要すると考えられる」との注釈を付した上で、基幹管路であっても「水道事業者の判断により採用することは可能」との判断を示しています。
 この報告書の記述は、塩ビ管の耐震適合性についても評価をしたもので(表−1)、石綿セメント管や布設後20年以上を経過した鋳鉄管、TS継手管等の老朽管の更新に際して、耐震管材として塩ビ管を使用できる範囲が大きく広がったことを意味します。検討会の報告書を参考にして、耐震性能が評価されたRR継手、RRロング継手を採用すれば、より経済的な配管システムを構築することができます。

●「塩ビ管は地震に弱い」という誤解とその対応

図−2 塩ビ管の被害の傾向
 図−2は、近年の地震における塩ビ管の被害率を示したもの。TS継手の布設比率が高い地域では被害の割合が大きく、RR継手の布設比率が高い地域は被害が少ないことがわかります。
 また、図−2には示されていませんが、中越沖地震では、上越市全体(震度5弱〜6強)約10kmにわたって配管されていたRRロング継手、並びに上越市柿崎区で31kmにわたって配管されていたRR継手に、まったく被害が出なかったこともわかっています。(ライフライン工学研究所:平成19年度新潟県中越沖地震水道管路被害調査報告書)
 一方、以上の調査結果を踏まえて塩化ビニル管・継手協会が推奨する耐震対策は次の通りです。
1 RRロング継手と離脱防止金具の組合わせは、レベル2地震動に対しても十分な耐震性能を有しています。
2 RRロング継手は、普通地盤で地盤変状が生じない限り、レベル2地震動に対応します。
3 RR継手は配水支管としては十分な耐震性能を備えています。
 塩化ビニル管・継手協会では、今後の運動の中で、管路の耐震性向上のためにRR継手、RRロング継手による更新へ向けたPR活動に取り組んでいく計画ですが、同時に、「塩ビ管は地震に弱い」という一部の誤解を解消することも大切なテーマ。
 「TS継手とRR継手とが区別されないで、地震の被害報告がなされているため、塩ビ管は地震での被害が多いと誤解されている。地震の被害状況を分析すれば、TS継手は確かに地震の歪みを吸収しにくいが、RR継手、RRロング継手はそうではないことがわかっている。地震時における水道管の挙動は、その周辺地盤の変形に支配されることが論理的に知られている。したがって、管の耐震性能を向上させるには、管材の強度よりも、管路としての伸縮・屈曲の変形性能を向上させることが重要で、RR継手、RRロング継手は、こうした考えを基礎として開発された。」(塩化ビニル管・継手協会の坂口眞幸技術・環境部長)
 現在、協会では塩ビ管の耐震性について正しく理解して頂くために、水道研究発表大会、水道展のブースでの製品展示と説明及び業界紙への寄稿並びに各地で開催される講習会など、機会ある毎に活動を展開しています。