2008年6月 No.65
 

第10回「塩ビ国際会議」開く(英ブライトン)

世界の塩ビ需要予測など幅広いテーマで情報交換。

 第10回「塩ビ国際会議」が去る4月22日〜24日の3日間、イギリスのブライトン(Brighton)で開催されました。会議では、世界の塩ビ需要予測やヨーロッパのリサイクル状況などについて欧米から報告があったほか、日本からも塩ビ工業・環境協会(VEC)が参加して、招待講演(「日本とアジアの市場」)や一般講演(「日本での塩ビリサイクル」)を行い、参加者の関心を集めました。

●2012年、中国の塩ビ需要は世界の3分の1に

招待講演中のVEC・関専務理事

 塩ビ国際会議は、ロンドン近郊のリゾート地ブライトンで3年毎に開かれるもので、開催地の名前を取ってブライトン会議とも呼ばれます。塩ビの世界会議としては最大級の規模で、今回はヨーロッパ各国を中心に、日米を含め約450名の塩ビ関係者が参加し、情勢報告や情報交換が行われました。
  会議は1日目が全体会、2日目以降が分科会というプログラムで、このうち13件の基調講演および招待講演が行われた全体会では、アメリカの化学コンサルティング会社CMAIが、急速に拡大を続ける中国の塩ビ需給およびコスト構造について注目の報告。「世界の塩ビ需要は現在の3500万tから2012年には4500万tにまで拡大し、うち中国が1500万tを占める」と予測した上で、「中国は2009年頃に輸出ポジションとなるが、主流であるカーバイド法塩ビも石炭価格の上昇およびエチレン価格の今後の低下を予測すれば、欧州に輸出するだけのコスト競争力はない」との見方を示しました。
  「Vinyl2010の2010年に向けてカウントダウン」と題して発表を行ったECVM(欧州塩ビ製造協議会)は、(1)Vinyl 2010コミットメントは、業界の自主的な公約の模範として世界の塩ビ関連業界に大きな影響を与えたこと、(2)使用済み製品の20万tのリサイクルは達成の見通しであること、(3)塩ビリサイクルに対して財政的援助を継続すること、(4)特に塩ビ廃棄物の収集・選別を促進するRecovinylシステムを拡大する考えであること、などを表明。このほか、欧州で進められてきた2件のフィードストックリサイクル・プロジェクトが失敗したことなども報告されましたが、2010年以降の明確なビジョンは示されませんでした。
  VECの関専務理事が行った招待講演は、塩ビをめぐる日本の行政、トップ企業の動向などを中心に、塩ビ内窓を設置した環境省の試みや、昨年12月に開催された「エコプロダクツ2007」の模様などを紹介したもの。塩ビの説明に聞き入る子供達の写真なども交えた説明が、他の発表には見られない生き生きした印象を聴衆に与えたようでした。

●塩ビのサステナビリティなどに高い関心
  一方、3つの会場に分かれて行われた分科会では、サステナビリティ、重合、加工、コンポジット、可塑剤、安定剤、樹脂改良材、充填材などジャンル別に計59件の発表(一般講演)がありました。鉛安定剤については2015年までに他の安定剤に代替する予定が、代替技術の進展や鉛安定剤価格の上昇などにより2012年ごろに達成される見通しであることも報告されました。リサイクル関連の発表は4件で、日本での塩ビリサイクル状況を説明したVECの報告に対しては、フィードストックリサイクルの将来、壁紙リサイクル技術についての質問があいつぎ、こうした分野に対する欧州の関心の高さを感じさせました。
  今回の会議についてVECの関専務理事は「技術開発の一つの焦点は鉛安定剤の代替にあり、Ca/Zn系安定剤に関する発表が数多くありました。塩ビのキー技術は配合技術にありますが、高性能滑材、ハイドロタルサイト類似構造をもつ鉱物、N−アルキルピロリドンなどの新たな添加効果が発表され、また製品分野でも塩ビ建材の製品改良が丹念に行われていました。このような新たな技術挑戦とともに、発表をめぐる質疑のなかに想像以上の熱気が感じられました。」と感想を語っています。

※ヨーロッパの塩ビ関連業界が「持続可能な発展」をめざして2000年3月に結成した非営利団体。2010年を目処としたリサイクル目標や安定剤の使用などについてボランタリーコミットメントを提示し、進捗状況を毎年公表している