2008年6月 No.65
 

開始半年、塩ビサッシリサイクルモデル事業の現状

北海道江別市・角山開発(株)と
赤平市・(株)ゼニアテックスの取り組み

 本号トップニュースでもお伝えしたように、省エネルギー対策の切り札として期待が高まる塩ビサッシですが、その普及をさらに促進していく上では、廃棄後の効率的なリサイクル・システムづくりが不可欠。塩ビサッシ業界では、昨年の10月から札幌市周辺を対象としたリサイクルモデル事業をスタートして、課題解決への取り組みを進めています。現場で実際の作業を担当している江別市の角山開発(株)と赤平市の(株)ゼニアテックスを訪ね、開始から半年あまりの事業の現状を取材しました。

●「サッシtoサッシ」のリサイクル

  塩ビサッシが日本に登場してほぼ30年。耐久性に優れた長寿命製品である塩ビサッシも、ここに来て施工の古いものから順にぼつぼつと廃棄の時期を迎えようとしています。その量は、最も普及が進んでいる北海道でもまだごく少量にとどまっていますが、今後老朽家屋などの解体、撤去が進むにつれて、急速に増加していくものと見込まれています。
  新たにスタートした塩ビサッシのリサイクルモデル事業は、こうした将来予測に備えて、業界自らが率先して受け皿となるシステムを構築することにより、現在の埋立処分中心から資源循環型への転換を図っていこうとするもので、(社)日本サッシ協会とプラスチックサッシ工業会および塩ビ工業・環境協会(VEC)の関係3団体は、1999年から塩ビサッシリサイクル合同ワーキンググループ(WG)を組織してシステムづくりの調査研究に着手。北海道内で廃棄された使用済みサッシの再生処理テストや、海外の先行事例調査、回収量の予測と再生品の品質評価など、足掛け8年にわたる検討作業を経て、2007年10月からモデル事業のスタートに踏み切ったものです。
リサイクル・モデルのフロー図

  リサイクルのフローは右の図に示したとおり、(1)札幌市周辺の建築解体業者が江別市の角山開発(株)に使用済み塩ビサッシを搬入、(2)同社で1次処理(窓枠の切断、ガラスの除去など)、(3)赤平市の(株)ゼニアテックスで2次処理(金属や異物の除去〜粉砕)を行った後、(4)これを塩ビサッシメーカーが引き取って新製品の内部層などに再利用する、という流れで、文字どおり「サッシtoサッシ」のマテリアルリサイクルが基本。(社)日本サッシ協会とプラスチックサッシ工業会は全体の運営管理を担当します。
  プラスチックサッシ工業会の福田恵輝元技術委員長は「我々の計画では2011年度までを初期段階と位置づけており、対象地域も札幌市周辺(石狩・空知・胆振・後志の4支庁管内)に限定している。当面は使用済み塩ビサッシの排出量もそれほど多くない状態が続くと思うが、初期段階での状況と実績を踏まえつつ、経済産業省と北海道庁・支庁の指導や学識経験者(東京大学大学院・清家剛准教授)のアドバイスなどをいただきながら、システムの改善、展開をめざしていく」としています。


●解体業者の協力が不可欠−角山開発(株)の取り組み

角山開発(株)本社

 塩ビサッシリサイクルの第一次処理(解体)を担当する角山開発(株)(寺嶋忠雄社長/北海道江別市角山425;Tel 011-385-2669)は、産業廃棄物(主に建材)の中間処理・リサイクル業者で、設立は昭和59年6月。解体建物の木屑や瓦礫をはじめ、近年ではプラスチック材の再生処理(RPF化)にも力を入れており、こうした意欲的な姿勢が塩ビサッシのリサイクルに関わる動機となりました。
 同社の湯藤学取締役管理部長は、取り組みの現状について「使用済み塩ビサッシからガラスを取り除き、窓枠を4本の部材に切断してゼニアテックスに持ち込むというのが当社の仕事だが、2007年度は実質約4ヶ月程度しか作業期間がなかった上、解体工事の少ない冬場を挟んだこともあって、回収量は約6トンと予測していたよりも少なかった。このうちゼニアテックスに持ち込んだのは3トン弱で、残り3トン余りが破砕処理後埋立となっている」と説明していますが、短い作業期間でもいくつか課題も見つかっているようで、特に回収面について「解体業者に協力してもらうこと」の重要性を指摘しています。

湯藤部長

  「建設リサイクル法に基づき現場分別される木屑や瓦礫と異なって、塩ビサッシは潰された状態で持ち込まれるものが多い。取引のある解体業者には、リサイクルできるように重機で潰さないようにお願いしているが、どの業者も厳しい環境の中で仕事をしているので、今後使用済み塩ビサッシの排出量が増えてきた場合、リサイクルに協力することで経費削減につながるといったメリットが出てこないと解体業者の協力を得ることが難しくなってくる」
 また、技術面では「外窓のガラスと窓枠の隙間を埋めるために使われているコーキング材の除去が難しい」とのことで、「このためリサイクルに回せるのは内窓が中心で、外窓は埋立せざるを得ない。外窓のリサイクルにはコーキング材の代わりになるものの開発が望まれる」としています。
 同社では、こうした課題を指摘しながらも、今後の取り組みには積極的な意向を示しており、「基本的には現場分別によって廃棄物の処理費削減につながればリサイクルは進む。それには少し時間がかかるだろうが、我々も貴重な資源をリサイクルしたいという気持ちは強く、できるだけの協力はしたいと思っている。また、それによって企業イメージが高まることを期待している」と語っています。

 
使用済み塩ビサッシ
 
解体された塩ビサッシ


●ポイントは金属、異物除去の徹底−(株)ゼニアテックスの取り組み

(株)ゼニアテックスのリサイクル工場

 一方、 二次処理を担当する(株)ゼニアテックス(板垣英三社長/北海道赤平市茂尻旭町1-12-1;Tel 0125-34-2221)は、古典的な「タンニンなめし」で知られる高級鞄メーカー「(株)いたがき」が2000年8月に立ち上げた塩ビサッシメインのリサイクル会社で、2001年に産業廃棄物処分業許可(廃プラスチック類)を取得して以降、北海道内の大手サッシメーカー数社から工場廃品を回収、粉砕する仕事に取り組むなど、塩ビサッシのリサイクルでは最も先進的な企業といえます。

板垣社長

 「塩ビには全くの素人だったが、長い間ABS樹脂のスーツケースの工場端材をリサイクルする仕事に携わってきたこともあって、大手サッシメーカーからリサイクルの依頼を受けた。こちらとしても、少しでも循環型社会に役立ちたいという気持ちと、地域の高齢化に対応して雇用確保に貢献したいという思いがあり、新たに会社を作ることにした。現在は年に1000トン程度のリサイクルを行っている」(板垣社長)
 同社が今回のリサイクルモデル事業に参加したのは、こうした実績に注目した塩ビサッシリサイクル合同WGの要請によるもので、WGの作業のごく初期の段階から中間処理業者として事業との関わりを持っています。
 (株)ゼニアテックスの処理工程は、角山開発で解体された塩ビサッシから金属(サッシ内部に補強材などとして使われているアルミや鉄)を分別⇒異物(接着剤や汚れなど)の除去⇒金属検知器⇒粉砕⇒再度金属検知器にかける、というもので、金属検知機に2度通すことにより微量な金属の残りも完璧に除去している点が大きな特徴。
 「リサイクル原料としての品位を上げるために、金属は可能な限り取り除く。そのために精度の高い検知器を使っており、ビスを外した後にわずかな金属がこびりついているだけでも機械が止まるようになっている。金属の除去も接着剤などの汚れ落としも全て手作業で行うため想像以上の手間がかかるが、リサイクルする上ではここが最も気を使う肝心な部分であり、手を抜くわけにはいかない」(板垣社長)
 同社では2007年度の取り組みで、角山開発から持ち込まれた3トン弱のうち、再生塩ビとして2トン強をリサイクルしているほか、鉄・アルミも約600kgを別途リサイクルしています。今後の事業展開について板垣社長は、「廃棄量の増加に備えて、周辺環境にも配慮しながら、限られた資源の有効利用を第一に考えリサイクル社会の環境作りに邁進していく」としています。

 
異物除去はすべて手作業
 
金属検知機で金属を除去


●有効なリサイクルシステム作りを期待(北海道環境生活部)

川島主幹

 最後に、塩ビサッシのリサイクルモデル事業に行政面から指導、アドバイスを行っている北海道環境生活部の環境局循環型社会推進課に、事業への期待などを伺いました。お話しいただいたのは、同課循環推進グループの川島幸治主幹と竹澤祐幸主査のお2人。
 「塩ビサッシはその断熱効果から寒冷地・北海道での普及が全国で最も進んでいるが、同時に廃棄物の量も北海道が多い。これは、本州が中心で北海道は一部という廃棄物問題の一般的な形とは逆の現象であり、そういう意味では、塩ビサッシのリサイクルは北海道にとって重要なテーマだといえる。塩ビサッシ業界には、有効なシステムになるようきっちりとしたスキームを作ると同時に、リサイクルの形態も環境負荷が掛からないよう考慮してもらいたい。道としても何か困っていることがあったらできるだけアドバイスしたいと考えている」(川島主幹)。

竹澤主査

 「道では平成18年度から産業廃棄物の最終処分場への搬入に対して課税をする循環資源利用促進税を導入しており、この税収を財源に産業廃棄物の排出抑制やリサイクルの促進を目的として設備費やリサイクル技術の研究開発に要する経費への補助、リサイクルアドバイザーの派遣など各種事業を実施している。塩ビサッシのリサイクルモデル事業を進める上でも役立つ制度であると思うので、ぜひこうした制度の活用も検討してもらいたい」(竹澤主査)。