(株)川島織物セルコンの
タイルカーペットリサイクル
積極的環境対応で独自性。業界初「エコリーフ」の取得も
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川島織物セルコン東京支社のフロア |
タイルカーペット業界の中で、いち早く「カーペットtoカーペット」のリサイクルに取り組むなど、環境に特化した製品展開で独自の地歩を固める(株)川島織物セルコン(本社京都市)。その東京支店(東京都江東区豊洲5-6-15、NBF豊洲ガーデンフロント6F/TEL:03-5144-3853(ST商品部))を訪ねて、事業の現状を取材しました。 |
●全製品の半数が「エコマインド商品」
川島織物セルコンは、帯、インテリア製品、内装材など繊維製造の老舗(株)川島織物と、インテリア企画・販売を手がける神戸の老舗商社(株)セルコンが2006年4月に合併して誕生した会社で、業界トップのシェアを持つカーテンを中心に、自動車内装材、和装・美術工芸品など、人の装いと人がかかわる空間を事業領域として幅広い事業を展開しています。タイルカーペットもその一翼を担う主力商品のひとつ。 同社では、タイルカーペットに関する環境方針として、「自然環境を保護・保全するため、ごみの減量化および廃棄に要するエネルギーを減らす」「安全で環境にやさしいタイルカーペットを作り、不要になれば回収して再資源化する」など4項目からなる「エコマインド宣言」を掲げ、業界に先駆ける形で意欲的にタイルカーペットのリサイクルを進めてきました。環境ラベルのエコマークやエコリーフを取得したのも同社の製品が業界第一号で(後述)、現在では同社が取り扱うタイルカーペット製品の半数以上がこうした「エコマインド商品」。製品の環境対応を強化して差別化を図ることにより独自のポジションを築いている点に、同社ならではの強みと特徴を見ることができます。
●「e-RECYCLED」システムの開発
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川島織物セルコンの廃床材リサイクル循環システム「e-Recycled」の流れ |
こうした川島織物セルコンの取り組みを支えているのが、同社が開発した廃床材リサイクル循環システム「e-RECYCLED」。その概要は、(1)市中から回収した使用済みタイルカーペットを表面のパイル層(繊維層)と塩ビのバッキング(裏打層)に分離→(2)塩ビバッキングを粉砕してリサイクルシートに加工→(3)タイルカーペットに貼り付けてバッキング材に再利用→(4)施工→(5)使用済み品を再び回収、という「カーペットtoカーペット」の循環を繰り返すもので(図参照)、同社ではシステムの円滑さを確保するため、自ら現場施工と回収に携わるなど回収面にも積極的に力を注いでいます。
また、技術面では前号でご紹介したリファインバース(株)と提携、同社の切削加工方式(分離しにくい塩ビバッキングを特殊な技術で削り取る技術)やリサイクルシート加工技術などを採用したことがポイントで、製品全体に占める再生材の使用割合が約43%(エコマークの認定基準は「25%以上」)という極めて高いリサイクル率を実現する上で、同社との協力は大きな力となっています。
川島織物セルコン東京支店のインテリア事業部企画開発第2グループリーダー・近藤忠稚氏の話。「塩ビは最もリサイクルしやすく汎用性の高いプラスチックであり、当社のリサイクルタイルカーペットは『e-RECYCLED』システムの中で繰り返し循環させることができる。また、塩ビバッキングは繊維の素材にこだわらないので、リサイクルシートでもデザイン性、耐久性に優れたナイロン繊維をバージン材と同じように使用できる。要するに、室内装飾品としての魅力、長寿命を失わずリサイクルもできるということが、当社の製品の最大の特長といえる」
●環境ラベル「エコリーフ」への取り組み
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川島織物セルコンの皆さん。左端が近藤氏、右2人目が間部専務 |
前述したとおり、川島織物セルコンのタイルカーペットは既にその半数以上がエコマーク、エコリーフの登録商品となっていますが、中でも、(社)産業環境管理協会が運営するエコリーフの取得は同社の製品差別化策の要ともいえるもので、現時点でエコリーフを取得しているタイルカーペットは同社の製品のみ。
エコリーフとは、ISO(国際標準化機構)が定める環境ラベルのタイプVに則った環境評価制度で、資源採取から製造、物流、使用、廃棄・リサイクルまで製品の全ライフサイクルにわたる定量的な環境情報(LCA)が、第三者機関による厳しい審査を経て、製品上に開示されます。同社では、合併前の2005年10月、セルコンの関連会社(株)セルコンテクノスの製品が初めて登録されたのを皮切りに、現在までに4製品でマークを取得しており、例えば昨年8月に登録された「カラーバンク」の場合、バージン塩ビで作る製品に比べて全ステージ合計で二酸化炭素11.3%、エネルギー消費量8.8%の削減効果があることを一目で知ることができます。 「『リサイクル製品を使うことでどんないいことがあるのか』とユーザーから問われたときに、客観的な審査を受けたデータを出せなければ本当の意味の環境商品とは言えない。我々がいち早くエコリーフの取得に対応したのは、そういう判断に基づく。ただ、現状はあくまで通過点であり、最終的な到達点は、エコ商品もあるというのではなく、すべてがエコ商品と言えるようにすることだと考えている。そのためには、リサイクル率やCO2削減効果もさらに上げていきたい。現状では技術的に難しいが、いずれナイロン繊維のリサイクルも可能になれば、製品のリサイクル率はさらに高まることになる」(近藤氏)。
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カラーバンクのエコリーフに表記されたLCA評価 |
●コストパフォーマンスも改善
川島織物セルコンのリサイクルタイルカーペットは、東京の新宿パークタワーや大阪ガスの本社ビルをはじめ、各都市のオフィスビルや公共施設など様々な場面で使用されています。東京ビッグサイトの国際会議棟の通路および会議室などにも施工済みで、こうした需要の増加に伴って、課題だったコストパフォーマンスの改善も進んできているようです。 グループ企業の(株)川島織物インテリア・間部知幸専務は、「出荷量の増加、さらには最近の石油価格の上昇もあって、やっとバージン製品とほぼ同等のレベルまでコストが下がってきた」と述べた上で、「リサイクルタイルカーペットのマーケットは、製品の割安感が出てきたことで今後ますます技術研究が進み、一挙に拡大していくと思う。いずれリサイクルが当たり前の時代になると確信している」と力説しています。
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