2007年12月 No.63
 

建設混合廃棄物リサイクルの最新動向

総合環境企業・(株)タケエイの取り組み。
意欲的な事業展開で着々と成果


日本最大級の建設廃棄物リサイクル工場・川崎リサイクルセンター
  循環型社会を実現する上で焦眉の急となっている建設混合廃棄物のリサイクル。この難題に挑んで大きな成果を上げているのが、総合環境企業をめざして躍進を続ける(株)タケエイ(三本守社長、本社=東京都江戸川区西葛西)。国内最大級の川崎リサイクルセンター建設など、同社の最近の取り組みから、建設混合廃棄物リサイクルの近況を取材しました。

●「リサイクル率94%」達成を目標に


様々な製品が入り混ざった建設混合廃棄物
 国土交通省が行った平成17年度の「建設副産物実態調査」結果によれば、わが国における建設廃棄物の発生量は年間およそ7700万トン。産業廃棄物全体(年間約4億トン)の約20%に達します。このうち、8割近くを占める木材、コンクリート、アスファルトなどについては、建設リサイクル法(建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律)に基づいて再資源化の取り組みが進められていますが、プラスチック建材や瓦礫、金属類など様々な廃材が混ざり合って分別が難しい建設混合廃棄物は、依然として埋立処分が中心で、一方では不法投棄を引き起こす大きな原因のひとつともなってきました。
 建設混合廃棄物の発生量は重量ベースでは6%程度に過ぎないものの、容積ベー スではほぼ3割強に達し、資源循環型社会を構築していく上で、その再資源化と有効活用は避けることのできない課題。建設資材としての用途が6割以上を占める塩ビ製品にとっても将来を左右するテーマといえます。こうした中、建設廃棄物リサイクルへの意欲的な事業展開で近年大きな注目を集めているのが、業界のリーディングカンパニー(株)タケエイです。同社では「リサイクル率94%」達成を目標に、建設混合廃棄物でも次々と新たな取り組みに着手しており、今年5月には、建設廃棄物処理業者としては初となる東京証券取引所マザーズ市場への上場も果たしています。

●塩ビ建材のリサイクルも多様

 タケエイの事業は、1992年に建設された四街道リサイクルセンター(千葉県四街道市)と、横浜市駒岡と川崎市塩浜の中間処理場を統合して2006年6月に竣工した川崎リサイクルセンター(神奈川県川崎市川崎区浮島町)、さらに東京都スーパーエコタウン事業の認定を受けた100%子会社の(株)リサイクル・ピア(大田区城南島)、関係9社の共同出資で設立された石膏ボードリサイクルの(株)ギプロ(埼玉県八潮市)、の4工場体制で支えられています。
 中でも、敷地面積4万1000m2余、処理能力日量約3000トンを誇る川崎リサイクルセンターは、「24時間、365日受入れ」を基本とした「日本最大級の建設廃棄物中間処理工場」。これまで同グループが築いてきた「適正処理」「再資源化」両面のノウハウを集約した施設として各方面からの期待も大きく、竣工から1年半を経過して、稼働率も順調に向上してきています(現状で約75%)。
 一方、最新鋭の中間処理施設として2005年4月から本格稼動に入ったリサイクル・ピアも、建設混合廃棄物を中心に日量960トンの能力でフル稼働中。同社の場合、「廃棄物中のダストと廃プラスチック、木くずを混ぜて製鉄用の添加剤に加工する」といった、“集塵ダストさえも無駄にしない”取り組みも特徴のひとつです(リサイクル・ピアの詳細は本誌No.54参照)。
 タケエイのリサイクルの基本は、最新鋭の分別設備はもちろん、現場分別や手選別を含めて徹底的に分別すること。建設混合廃棄物についても、木くず、コンクリートガラ、金属くず、廃プラスチックなど、最終的には40もの処理フローに分けられて、それぞれについて可能な限り再資源化への取り組みが進められています。
 このうち廃プラスチックに関しては、グループ全体で月約4万トンがリサイクルされていますが、塩ビ建材だけで見ると、塩ビ管や電線被覆、タイルカーペットなど単品でリサイクルできるものは選別して専用のリサイクルルートに乗せる一方、壁紙端材などの分別しきれないものは固形燃料(RPF)やセメント燃料などとしてサーマルリサイクルしています。特に、リファインバース(株)(6頁参照)との提携で進められているタイルカーペットのリサイクルは、「これまで埋め立てるしかなかったタイルカーペットが非常に有望なリサイクル品目となってきた」(同社の堤惠美子取締役)と位置づけられており、2009年にはリサイクル・ピアの隣接地にタイルカーペットのリサイクル専用施設も設置される予定。
 このほか、廃プラスチックのリサイクルでは、タケエイなど4社が2004年に共同設立した次世代型廃棄物発電・供給施設(株)市原ニューエナジー(発電量1950kW)に向けての燃料提供がこの10月からスタート(廃プラスチックを含む日量50トンの可燃系廃棄物を供給)。また、将来構想としては、塩浜処理場の跡地を川崎リサイクルセンターで分別した廃プラスチックの専用リサイクル工場に利用する計画も進められています。

●『めざせ ゼロ・エミッション!』の発行


タケエイの堤惠美子取締役(左)と経 営企画室の梅澤順子担当グループ長
  こうしたリサイクル拠点の整備と平行して、タケエイでは輸送面での課題や現場分別の指導などにも取り組んでいます。再び堤取締役の説明。「リサイクルの多様化に合わせて、以前から複雑だった輸送ルートがさらに重複し、小さな輸送が増加してCO2の夥しい発生に繋がっている。廃棄物処理業界には運搬業界のようなCO2排出量削減への本格的な取り組みも少なく、正確な統計はないが、今後リサイクルを進めていく上では、この問題に対応して点と点の回収を面にするなどの輸送効率化を図った回収システムをリサイクル及び低炭素化社会のインフラとして構築していくことが不可欠だ」
 一方、この9月に同社が発行した『めざせ ゼロ・エミッション!』(出版社:(株)大成出版社/定価:税込み893円)は、「基本的には、廃棄物処理業から3Rソリューション事業への業態転換を目標とする当社の将来の事業のあり様を示したもの」(堤取締役)ですが、建設工事現場におけるゼロ・エミッションを達成するための手引き書としても優れた内容となっています。同社が構築した「PDCA方式」(Plan=目標設定、Do=3Rの環境整備・分別教育、Check=データ管理と結果の分析、Action=再発防止・方法の改善)を繰り返すことで廃棄物の発生抑制によるコストダウンや高リサイクルに成功した事例に基づき具体的な要諦がまとめられており、「分けることがどんなに大きな成果につながるか」を手順に沿って容易に理解することができます。