リファインバース(株)のタイルカーペットリサイクル
本格稼動から1年、軌道に乗る塩ビの再資源化。 繊維層のリサイクルにも着手
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リファインバース社の再生塩ビコンパウンドを使ったタイルカーペット |
昨年、稼動直前の模様をレポートしたリファインバース(株)(越智晶社長/本社=東京都中央区京橋)のタイルカーペットリサイクル事業。あれから丸1年を経て、事業の現状はいかに?。リサイクルの中核施設・千葉工場(千葉県八千代市大和田新田672-4八千代工業団地内/tel 047-450-9655)を再び訪れて、越智社長にお話を伺いました。
塩ビはもちろん、懸案であったナイロン繊維のリサイクルにも着手するなど、「タイルカーペットリサイクルの切り札」は、順調な進展を見せているようです。 |
●高品質の再生塩ビコンパウンドを生産 タイルカーペットは、表面の繊維層に塩ビの裏打ち層を張り合わせた構造になっています。その裏打ち層を、精密切削加工と呼ばれる独自の技術により分離、粉体化して、再びタイルカーペットの原料としてマテリアルリサイクルする一方、繊維層の再資源化にも取り組むというのがリファインバースのリサイクル事業。余計な手間を掛けずに高品質の再生コンパウンドが製造できる上、繰り返しリサイクルできること、さらにはバージンの塩ビコンパウンドに比べて製造時のエネルギー使用量の76%、CO2排出量の80%が削減可能(エックス都市研究所によるLCA分析調査)という省エネ効果などもあって、同社の動向は2003年の設立当初から、カーペット業界や塩ビ業界、そして建材の中間処理業者などの期待と注目を集めてきました。
事業の拠点となる千葉工場は、「千葉県西・中央地域エコタウンプラン」の中核リサイクル施設として2005年に建設されたもので、処理能力は1日50トン(年間約1万8000トン)。2006年6月に千葉県から産廃業の認可を取得した後、翌7月から本格的な生産を開始しています。
●ユーザーの信頼を得る入念なチェック体制
■「精密切削加工」とは
数万枚の微細な歯がついた円筒体を回転させて、繊維層から塩ビの裏打ち分離すると同時に0.5mmサイズの粉末(再生塩ビコンパウンド)に加工する、リファインバースのオリジナル技術。歯の形状や回転速度、投入速度を調整して一定の粒度の再生原料を安定的に生産することができる。そのまま破砕すると繊維が絡むなどリサイクルが難しいとされてきたタイルカーペットの再資源化を、一工程で可能にした技術として、関係各界からの評価はきわめて高い。 |
本格稼動から1年を経過した状況について越智社長は、「試行錯誤と改善を重ねた結果、今は当初計画どおりの生産性でラインが安定稼動している。特に回収は順調で、関東建設廃棄物協同組合との連携や、(株)タケエイなど大手中間処理業者の協力などもあって、1都3県(千葉、埼玉、神奈川)を中心に集荷量は月1000トン以上。この調子だと今年1年で12000〜13000トンは集まる見込みだ。何よりお客様に安定供給できる体制が完成したことの意味は大きい」と説明しています。
一方、出口となる販売面の動きも軌道に乗ってきており、カーペットメーカーの川島織物セルコンや住江織物(本誌No.62参照)、さらには米国最大のインターフェイス社(ジョージア州)など、大手のユーザーを中心に販売量は急速に増加中。ユーザーの中には、タイルカーペット用だけでなく、硬質床材や遮音シート、自動車の遮音材などにリサイクルする事業者も含まれています。 実際に製造工程の様子を見学してみると、様々な会社の製品が混ざり合う使用済みタイルカーペットの中から、汚れや水濡れ、異物のチェックはもちろん、素性のわからない製品は鉛対策のために除外するなど、手作業を含めて一枚一枚入念な管理が行われており、こうした均質化へのきめ細かい配慮がユーザーの信頼につながっていることを実感できます。
リサイクル塩ビコンパウンドの製造工程 |
●ナイロン再生プロセスも大きな力に
粉砕したナイロン糸 |
一方、新たな事業展開として検討が続けられていた繊維層のリサイクルについても、ナイロン糸を分離するプロセスが同社グループ企業で既に稼動しています。
ナイロン再生プロセスでは、タイルカーペットの定型である50cm角以外の端材、変形品の処理も行われており(粉砕後にナイロンと塩ビを分離)、このプロセスを新設したことが資源の無駄を省く上で大きな力になっているようです。
繊維層のリサイクルについて同社では、「当面ペレット化して家具のキャスターなど成型用の材料に利用してもらうことで、捨てるものをとにかく出さないようにする」としており、これにより、現在の再資源化率(塩ビのリサイクルだけで約60%)を95%以上に引き上げていきたい考えです。
●「商品の魅力+環境性」の魅力
同社の再生塩ビコンパウンドを利用した製品は、既に楽天の品川本社やソニーの湘南テクノロジーセンター、東京ガス都市開発の新宿パークタワーオフィスなど、社会のさまざまな場面に採用され、好評を博しています。
こうしたマーケットでの評価の背景には、「環境性だけに頼らず、デザイン面もおろそかにしない各メーカーの姿勢が反映している」と越智社長は言います。「いかに環境性能がよくても商品本来の魅力が落ちればマーケットは評価しない。意匠性、色といった本質的な部分が差別化されて、初めてリサイクル製品ということが生きてくる」
今後同社では、再生塩ビの組成のバラツキをより小さくしてタイルカーペット以外の用途を拡大するなど、課題をクリアしつつ次のステップをめざしていく方針です。
製品の信頼性を高める
(越智社長談)
当社はあくまで樹脂を作ってい
る原料メーカーであると認識して
いる。原料メーカーとしてやるべ
きことは、何よりもまずお客様に
信用してもらえる高品質の製品を
いかに作るかに尽きる。そのためには、物性の面でも、
組成のバラツキをなくし鉛のリスクを排除するなど、
お客様の要求に対応して一歩ずつ取り組んでいかなけ
ればならない。また、現時点では物理的な処理が基本
だが、次のステップを考えると、どうしても技術面で
ケミカルの要素を取り入れないと限界がある。今後、
ケミカルのメーカーとの共同研究、共同開発ができる
ようになれば、リサイクルの中身もまた違う次元に進
んでいくことになる。
始まったばかりでお客様のニーズに十分応えられる
ところまではいっていないが、再生処理に関わる会社
として力強く成長していくためには、先に述べたような
テーマを日々一歩ずつクリアしていくことが、しいては
我々自身の競争力強化につながってことだと思う。リ
サイクルだからとか、再資源化だからという点に甘え
ていてはいけない。
タイルカーペットの再資源化に取り組む業者はまだ
少ない。当社としては、今後首都圏以外の中部、関西
地区などへの工場展開も考えながら、サステイナブル
社会の実現に微力を尽くしていきたい。 |
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