塩ビ最前線/塩ビ製アナログレコード
人々の生活を潤して60年。音楽文化の一端を担う、知られざる塩ビの役割
世界初の塩ビ製アナログレコード(以下、塩ビレコード)は、1948年に米国コ
ロンビア社が発売したLP盤、というのが定説。それから60年、今なお音楽ファ
ンの心を魅了して止まない塩ビレコードの人気の秘密とは?。
1959年の創立以来、高品質のレコード作りを追求してきた東洋化成(株)(神奈川
県横浜市鶴見区)を訪ね、音楽文化と塩ビの深くて長い関わりを取材しました。 |
●「塩ビ+酢ビ」が奏でる豊かな音色
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カッティングマシンを使ってラッカー盤を製作する手塚和巳さん |
1982年のCD登場以降、様々なデジタル音源の普及で一時
は消滅の危機さえ取り沙汰された塩ビレコード。しかし、そ
の豊かな音色は21世紀になっても健在でした。今年だけで
も、過去の名盤、名唱が復刻されたり、人気ロックグループ
の新譜がCDと同時にアナログ盤でも限定発売されたりと、
塩ビレコードをめぐる動きがしばしばマスコミの話題に。
東洋化成取締役の茂手木義人レコード事業部長によれ
ば、「レコード会社の企画によって年毎に変動はあるが、今
年はジャズ、クラシックに加えて歌謡曲、ポップスでも企画
が続いており、生産量は80万枚ぐらいになる見込み。年間2億枚以上も製造された最盛期には遠く及ばないが、基本
的には伸びる傾向にある」とのことです。
この根強い人気を支えているのが、レコード素材としての
塩ビの優れた適性。
「レコードの原料には塩ビと酢酸ビニル(酢ビ)を共重合した
塩ビ・酢ビコポリマーが使われる。もともと塩ビは加工しやす
く低コストな素材だが、塩ビ・酢ビコポリマーを原料に使うこと
でレコードの柔軟性と弾性が高まる。つまり、レコード針の反
発を吸収して、摩耗しにくい上に、音の再現性も安定した聴き
やすいレコードができる。また、プレスするときにも、オリジナ
ル音源をより正確に転写できるようになる」(茂手木事業部長)
同社では、スチレン
樹脂やABS樹脂でも試
験的にレコードを製作
したことがあるそうで
すが、「音質が硬すぎ
て塩ビにはとても適わ
なかった」といいます。
●塩ビレコードは生き続ける
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塩ビ原料とレーベル |
塩ビレコードの製造は、
カッティング(ラッカー盤
の製作)→メッキ処理(マ
スター盤→マザー盤→スタ
ンパー盤の製作)→プレ
スという流れで進行しま
す。このうちカッティング工程は、オリジナル音源をミクロン
単位の溝としてラッカー盤に刻み込む最も重要な部分で、
高度の熟練が要求される世界。東洋化成では、この道40年
というカッティングエンジニアの手塚和巳さんが、その職人
技を振るってラッカー盤作りを一手に担当しています。
メッキ処理工程は、ラッカー盤を基にニッケルメッキで型
取りを繰り返し、プレス用のスタンパー盤を作るまでの作業
で、これが終わると、自動プレス機の上下にスタンパー盤
A・B面を取り付けて、いよいよレコード成型へ。スタンパー
盤の間に、約140℃に加熱した原料の固まり(200g)がレー
ベルと一緒に自動的にセットされ、次々にプレスされていき
ます。レコード1枚のプレスに要する時間は約30秒。
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次々にプレスされるレコード |
「今やアジアでも当社が唯一のレコードメーカーになってし
まったが、アナログ盤の深みのある響きは、その手作り感と
相まって若者からも支持されている。塩ビレコードはこれか
らも生き続ける」と手塚さん。建材ばかりが塩ビにあらず。
人々の生活を潤す
音楽文化の一端を
担うのも、やはり
塩ビならではの役
割なのです。
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