進む、タイルカーペットのエコ対策
使用済み製品のリサイクル、グリーン購入適合品の
開発など業界挙げての取り組み
オフィスやデパート、ショッピングモールなどのフロアを美しく彩る内装材として現代の生活に欠
くことのできないタイルカーペット。近年はビルの建替えやIT化に伴って需要が増加する一方、リ
サイクルしにくいとされきた難点を克服。カーペットtoカーペットのリサイクル、グリーン購入適合
品の開発など業界挙げての環境対応が進められています。 |
●エコマーク認定商品も登場
タイルカーペットの国内出荷数量は約2800万m2(2006
年)。一方、工場廃材や施工端材、使用済み廃材など、
産業廃棄物として埋立処分される量は年間5万トン程
度と推定されますが、表面の繊維層に塩ビのバッキン
グ層を貼り合わせた構造となっているため、リサイク
ルしにくいのが難点とされてきました。中間処理の分
野では、リファインバース(株)(東京都中央区。本誌
57参照)のように、回収した市中廃材を層間分離して、
塩ビバッキング層をリサイクルする取り組みも見られ
ますが、使用済み製品の多くはまだ埋立処分されてい
るのが現状。
こうした中、2004年4月にはグリーン購入法の特定
調達品目(インテリア・家具類のカテゴリー)に指定
されたこと、さらに2005年9月にタイルカーペットが
(財)日本環境協会のエコマーク対象商品(商品類型
No.118=プラスチック製品)に認定されたことを機に、
業界の環境対応が加速。再生塩ビ原料を利用した製品
の開発が相次いでいます。
業界のとりまとめ役を
担う日本カーペット工業
組合(大阪市中央区) タイ
ルカーペット部会の窪田
衞技術委員長(東リ(株)第
2開発部長・理事)によ
ると、「使用済みカーペッ
トを加工したリサイクル
シートをバッキング部に積層したり、粉砕した再生原料
を樹脂の中に練り込んで加工したリサイクルタイルカー
ペットが開発され、グリーン購入適合品への登録も増え
ている」とのことで、より基準の厳しいエコマーク(グ
リーン購入法適合品の基準値は製品総重量の10%以上、
エコマークは市場回収の場合25%以上〔工場内廃材は
50%〕の再生材を使用していること)に対応した製品も登場してきました。
■タイルカーペットとは
通常50cm角の正方形に加工したタイル状のカーぺットの
こと。
一般的には基布の上にナイロンなどのパイル(表面を形成
する糸の束)を刺繍し(タフティング)、塩ビのバッキング
層で裏打した構造で、接着剤などを使わず敷き詰めて使用で
きるため、汚れた部分だけを取り替えたり、配線工事のため
に一時的に取り外すのも簡単など、施工性、メンテナンスに
優れる。デザインも多彩。 |
■グリーン購入法適合品の登録状況
アスワン(株)(5品目)、(株)川島織物セルコン
(1品目)、クリーンテックス・ジャパン(株)
(4品目)、(株)サンゲツ(19品目)、住商イン
テリアインターナショナル(株)(17品目)、
住江織物(株)(17品目)、(株)セルコンテクノ
ス(4品目)、(株)タジマ(1品目)、(株)テラモト(4品目)、
東リ(株)(5品目)、東亜紡織(株)(1品目)、(株)トーカイ(2品
目)、長谷虎紡績(株)(3品目)、リ・プロダクツ(株)(2品目) |
■エコマークの認定状況
住江織物梶i3品目)、叶島織物セルコン
(2品目)、三協フロンテア梶i2品目) |
●日本カーペット工業組合の取り組み
こうした企業レベルの取り組みと並行して、日本
カーペット工業組合のリサイクル委員会とタイルカー
ペット部会を中心とした業界レベルの環境活動も進め
られています。
同組合では、5年間でカーペット全体の工場内廃材
排出量の20%削減(2001年度比)というゼロエミッ
ションに向けたアクションプログラムを平成18年度に
達成したほか、カーペット、ふとんなど関連7団体で
構成する「インテリアファブリックス産業活性化協議
会」としてグリーン購入適合品の統一マークを制定。
現在は、再利用技術情報の業界共有化に向けて、使用
済みタイルカーペットのリサイクル技術に関する研究
に取り組んでおり、タイルカーペット廃材を再度、タ
イルカーペットに還元する「カーペットtoカーペットの
リサイクル」にとどまらず、セメント原燃料化やサー
マルリサイクルへの利用も含めて全国各地の先進技術
を調査中です。また、年内に欧米のリサイクル現状調
査も行う計画です。
●メーカーの取り組み事例1 ─ 東リ(株)のTTRシステム
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東リのグリーン購入適合品GA-100G |
東リ(株)(兵庫県伊丹
市) は、タイルカー
ペット業界の最大手。
タイルカーペットのリ
サイクルについても、
工場内端材のリサイク
ルプラントを2000年に
立ち上げたの続いて、
2002年には、工事現場
の使用済み廃材や施工
端材を回収、リサイク
ルするTTRシステム(東リタイルカーペットリサイク
ルシステム)を構築。メーカー自らの手によるリサイク
ルの先進事例として業界の注目を集めました。
同社のリサイクル技術は、 タイルカーペットの廃材を層間分離することなく、そのまま粉砕・溶融してシー
ト状(リサイクルシート)に加工したものをタイルカー
ペットのバッキング材に利用するもので、繊維分離の
手間をかけずに丸ごとリサイクルできる点に大きな特
長があります。
こうした取り組みによって、同社におけるタイル
カーペットの再生利用量は、2004年度の約1000トンか
ら、2005年度には約1300トンに増加。昨年は、リサイ
クルシートを使用したタイルカーペット7品目をグリー
ン購入法適応品として発売しています(ソコイタリ・
クラシック、レアクラウド、レアクラウドV、コレンテ
V、グランドアートGA-8500、GA-8500S、GA-100G)。
これらのリサイクル タイルカーペットに再利用されて
いる廃材比率は重量比約20%で、グリーン購入法適合
基準の10%を大きくクリアしています。また、市中廃
材についても、一部回収し再利用しています。更にこ
のタイルカーペット廃材は、タイルカーペットに還元
するだけでなく、他の硬質床材へも利用しています。
以上のほか、タイルカーペットをローテーションで
洗浄・保管・交換し、それをを繰り返すことでタイル
カーペットの長寿命化(約2倍)とフロアの美観維持
を可能にするオフロケーションシステムも、同社の注
目すべき環境対応のひとつ。
東リでは、今後も引き続きゼロエミッションやTTR
システムの推進に取り組み環境対応の充実を図ってい
く考えです。
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東リTTR(タイルカーペットリサイクルシステム)のフロー図 |
●メーカーの取り組み事例2 ─ 住江織物(株)の裏表ダブルリサイクル
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住江織物のエコマーク認定商品
SG300 |
10年前からKKR+A(健康、環境、リサイクルとア
メニティ)を標榜し、業界にさきがけて環境対応を進
めてきた住江織物梶i大阪市中央区)。同社では、前出
リファインバースと共同で使用済みタイルカーペットのリサイクルシステム
を確立、リファイン
バースが処理した塩
ビバッキング層のリ
サイクルパウダーを、
住江織物のタイル
カーペット製造工程
で直接バージン材に
配合するという技術
(リサイクルシートを
貼り合わせるのに比
べて製造工程が省略
できる)により、スミグリーンSG100、200、300という
一連のグリーン調達基準適合商品を開発してきました
(前述したグリーン購入適合マークも元は住江織物のオ
リジナルで、これを業界で統一マークに採用したも
の)。
中でも、2006年9月に発売されたスミグリーンSG300
は、バッキング材に塩ビのリサイクルパウダーを使用
しているのはもちろん、表面の繊維層にもPETボトル
を主原料とした再生ポリエステル「スミトロン」を使
用、裏表ダブルリサイクルを実現しているのがポイン
ト。この結果、製品に占める プラスチック再生材の
使用割合は重量比25%以上となり、カーペット業界で
は初めての「エコマーク」新基準の改定以降認定商品
となっています。
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(株)スミノエ 角野部長 |
住江織物の企画調達部門を担当する(株)スミノエ(大
阪市西区)の角野修二商品部長(カーペット業務用担
当)によれば、「発売後10カ月を経過して出荷量は10万m2ぐらい。環境経営を積
極的に推進する企業や病
院、各種施設などで、新
たな室内装飾フロア材と
して注目を集めている」と
のことです。
なお、みずほ情報総研(株)が実施したスミグリーン
SG-300のLCA分析では、
原料製造〜廃棄までのCO2排出量が、普及品のナイロンループタイルカーペット
に比べて約19%少ないという評価が得られており、そ
の環境性能が改めて実証された結果となっています。
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スミグリーンSG300のリサイクルフロー |
●課題は「官公庁需要の伸び悩み」
業界挙げての環境対応が進む中、課題も見えてきま
した。中でも大きいのは、「市場は製品の環境性能を認
めてはいるものの、さまざまな環境商品があるなかで
工事用商材に対する意識がまだまだ低いように感じら
れること」(前出の窪田技術委員長)で、「予想したほ
どには量的に伸びにくいのは、それがいちばんの原因。
公共部門からの調達という点でグリーン購入適合品に
登録する意味は大きいが、どうしてもコストが割高に
なることもあって、官公庁の需要ですら実際のところ
まだまだこれからという感じだ」としています。
(株)スミノエの角野部長も同様の問題を指摘します。
「グリーンマークに加えてエコマークを取得したのはよ
り一般市場にアピールしたいためだが、自動車など一
般の消費者が直接購入する製品と違って、業務用途中
心のタイルカーペットの場合、施主となる会社の予算
の制約などから、工事業者もなかなかリサイクル品を
選んでくれない。施主の環境意識が高く、リサイクル
品を使うように工事業者に指定しない限り、どうして
もコストの低いほうに流れる。まず官公庁・自治体の
需要がリード役となって一般市場にも普及していくこ
と。我々の拠り所はそれしかない」
リサイクルタイルカーペットに対する行政、建設業
界の注目と評価の高まりが何より望まれます。 |