塩ビ業界、「リサイクルビジョン」を発表
VEC・JPECが共同策定。
ユーザー業界に向け「塩ビのサステイナブル性」を強力アピール
塩ビ工業・環境協会(VEC)と塩化ビニル環境対策協議会(JPEC)
は、リサイクルに対する業界の考え方と今後の行動の方向などを示し
た「リサイクルビジョン―私たちはこう考えます―」をとりまとめ、5
月25日付けで発表しました。省エネルギーや地球温暖化への関心が強
まる中、ユーザー業界に向けて、塩ビのリサイクル適性やサステイナブ
ル性を強力にアピールすることで、塩ビ需要の回復につなげるのが狙
い。今後の行動としては、リサイクルシステムの拡充と技術開発のため
5年間で20億円以上の資金を投入するほか、塩ビ製品ユーザーとの対
話を進めるための相談窓口の開設、塩ビリサイクル品市場の拡大、リ
サイクル活動の進捗状況の公表などが挙げられており、高まる塩ビ再
評価の機運に乗って一気に反転攻勢に出ようとする積極姿勢を明確に
打ち出した内容となっています。 |
●安心して塩ビを使ってもらうために
塩ビは、4割の石油と6割の塩を原料とした極めて省
資源性の高いプラスチックです。また、長期間の使用に
も耐える塩ビパイプのように、その卓越した長寿命性は
社会のインフラを支える用途で最も大きな力を発揮しま
す。さらに、塩ビの窓枠と複層ガラスを組み合わせた塩
ビサッシのように、優れた断熱効果でエネルギー消費を
大幅に低減できる製品の市場の形成も進んでいます。
途上国のエネルギー需要拡大による石油資源の枯渇や
地球温暖化の加速が懸念される今、こうした「サステイ
ナブルな素材」としての塩ビに対する再評価の機運が急
速に高まってきています。
その一方で、自動車や家電など塩ビのエンドユーザー
の中には、塩ビの良さを十分理解しながらも、「塩ビは
リサイクルしにくい」という思い込みから、消極的な対
応に留まっている企業も少なくありません。
今回の「リサイクルビジョン」は、こうした状況に対
して、「塩ビはもともとリサイクルしやすい素材であり、
排出形態に応じた多様なリサイクル設備も整備されてき
たこと」、さらには「リサイクルシステムの更なる充実に
向けて引き続き業界全体で努力していくこと」など、塩
ビのリサイクルに関する業界の姿勢を明示することによ
り、ユーザーに安心して塩ビを使ってもらえる環境づく
りを進めようというものです。
●リサイクル技術開発に5年間で20億円投入
「リサイクルビジョン」は、塩ビのリサイクルに対する
業界の考え方をまとめた総論と、項目別に詳細な解説を
施した各論6部で1セット。各論の内容は、「(1)塩ビ樹
脂・塩ビ製品の環境への貢献」「(2)塩ビ製品の特徴−製
品組成、市場、排出実態、リサイクル適性−」「(3)マテ
リアルリサイクル(MR)」「(4)フィードストック(ケミカ
ル)リサイクル(FR)」「(5)サーマルリサイクル(TR)」
「(6)塩ビのリサイクルの促進−グリーン製品の拡大−」
となっています。
このうち、総論では業界の考えを大きく3つの章に分
けて整理。まず、塩ビがリサイクルしやすいサステイナ
ブルなプラスチック素材であり、枯渇性資源の有効利用
や循環型社会の形成に貢献する製品を提供できることを
説明(第1章)した後、塩ビの用途、排出形態に応じた多様なリサイクルの仕組みや施設が整ってきたこと
を紹介(第2章)した上で、最後に、合理的なリサ
イクルを更に進展させるために塩ビ業界が今後どの
ような活動(インフラ整備)を進めようとしている
のかについて、4つの項目にわたって具体的な方向
を記載しています(第3章)。その概要は次のとおり。
1. 塩ビのリサイクルシステムの拡充・技術開発の
ため今後5年聞で20億円以上の資金投入
リサイクルに先進的な取り組みをしている各業界
の企業と協力し、リサイクルにかかわる種々の課題
解決や仕組み作りを推進する。今後、そのための資
金投入を行う。
・単体製品の塩ビ管・継手、農業用ビニルフィルム
などのMRの一層の充実
・建材などの塩ビ複合製品のリサイクル推進
・少量づつ排出される様々な塩ビ製品の分別・収集・
リサイクルについての調査と具体的な仕組み作り
・塩素耐性に優れたTRまたは適正な焼却処理技術
の調査・研究
・リサイクルによる環境負荷低減効果をより定量的に評
価するためのLCA手法に基づく評価
2 .様々な塩ビ系廃プラのリサイクル施設の情報提供
と、ユーザーのリサイクル活動の相談窓口の設置
・先進的なリサイクルシステム、MR・FR・TRなどのリ
サイクル技術や施設の調査を継続的に行い、その情報
を提供する。
・排出形態に応じたリサイクル方法や施設の選定につい
て、ユーザーの相談窓口を設置する。
3.国内のリサイクル品市場拡大のための努力の継続
政府、地方自治体や各企業で、塩ビ製品を再評価して
購買基準を見直す動きが顕著になりつつある中、リサイ
クル塩ビ製品の市場であるグリーン製品の拡大に向け
て、引き続き塩ビ製品の認定や再評価を働きかける。
・グリーン購入法の特定調達品目にリサイクル塩ビ製品
の登録を増やすよう関連企業とともに活動する。
・エコマークなど認定ラベル製品の認定基準の改定を働
きかけ、リサイクル塩ビ製品の認定を促進する。
4.塩ビ廃棄物の循環的な利用を広く社会に呼びかける
とともにリサイクル活動の進捗状況を毎年公表する
●サーマルリサイクルにも焦点
各論となる小冊子は、主に塩ビのサステイナブル性や
リサイクル技術の整備状況(総論の第1、第2章)につ
いて詳しく説明したものですが、中でも、「サーマルリサ
イクル編」では、全国の産廃プラスチックのサーマルリ
サイクル・焼却施設を対象に実施した塩ビ受入れについ
てのアンケート調査結果や、実際に塩ビの処理を受け入
れている施設のうち、公表を認めていただいた69の施設
名などを記載。
これまで業界としてあまり焦点を当てないできたサー
マルリサイクルについて、改めて施設の現状を調べた上
で、「一定の制約条件はあるとしても全国の多くの施設
で、塩ビを処理できる技術整備、体制整備が進んでいる
こと」(VEC)を明らかにしています。(図1)。
また、廃塩ビ製品の排出形態に応じた多様なリサイク
ル手法などについて詳述した「塩ビ製品の特徴編」で
は、具体的なマトリックス(図2)を示した上で、リサ
イクル対象物の内容((1)単体製品か、複合製品か、(2)分
別排出されているか、他の廃棄物とともに混合排出され
ているか、(3)土石類やその他の汚れがあるか、それは除去可能か)に応じて、適切で合理的なリサイクル手法を
選択することの重要性を強調しています。
●受け身の時期は過ぎた
今回の「リサイクルビジョン」の策定についてVECの
阪内孚史リサイクルワーキンググループリーダーは次の
ように話しています。
「塩ビは環境に優しいリサイクル特性の高い樹脂だが、石油価格の高騰でコスト的にも塩ビを見直してもらえる
地合いができてきた。これまで塩ビ業界は、誤った塩ビ
バッシングに対して受身の対応に終始してきたが、既に
その時期は過ぎた。塩ビはこんないい素材でこんなにリ
サイクルしやすいんだということを前面に打ち出して
ユーザーに理解してもらうには、今がまたとない大きな
チャンスであり、サプライチェーン全体に『ビジョン』
の考え方を浸透させていきたい。むろん、今回の内容で
十分だとは思っていないし、『ビジョン』を取りまとめて
終わりということでも決してない。塩ビメーカー、塩ビ
加工メーカーの各レベルで協働、連携して塩ビ製品の
ユーザーに働きかけてゆくための、今後の広範な活動の
出発点と考えている。リサイクル技術の開発について
は、『塩ビはリサイクルしにくいから使わない』といって
きた業界と一緒に、何がリサイクルしにくくてどう改善
すればいいのか具体的な意見を聞いた上で、一緒にトラ
イしてみましょうというのが我々の姿勢だ。どんどん話
し合いを進めて、いろいろな情報を集めてから、開発の
候補テーマを絞っていく」
理性ある判断で持続可能な社会の構築を
岡山大学大学院環境学研究科教授
株式会社廃棄物工学研究所 代表取締役所長
中央環境審議会 廃棄物・リサイクル部会長 田中 勝
塩ビは私たちの身の回りに、水道管などのパイプ、電線被覆、床材や壁紙な
ど長寿命製品として社会インフラに多用されています。ところが塩ビは塩素が
含まれているために、燃やすとダイオキシンが発生するとして、環境に悪い商
品の様に考えられていました。そこで燃やさないで、埋め立てられる塩ビは環境にやさしくない典型的な製
品として見られていました。環境にやさしくないという理由で、これらに使われなくなったら、これに替わ
る代替品があるのか、あったとしても経済的に出来るのか、心配もしていました。
そのような時に、「リサイクルビジョン−私たちはこう考えます−」が発表されました。これを読んでみる
と、意外や意外、塩ビは環境に優しい商品だったのです。省資源、温暖化防止、廃棄物の減量化に貢献し、
またリサイクルに適した製品だったのです。塩ビが一般ごみに少々混ざっていても、今の焼却炉ではダイオ
キシン対策が出来ているため環境を汚染することもありません。塩ビのリサイクルとしてマテリアルリサイ
クル(再生品として回収)、ケミカルリサイクル(高炉原料化など)、サーマルリサイクル(焼却処理)など
が拡大しています。これからももっともっとPRしていただき、正しい知識を身につけて、理性ある判断をし
て対応することが持続可能な社会の構築には必要だと感じました。 |
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