2006年9月 No.58
 

 塩ビ建材のリサイクル促進へ、3R可能性調査報告書まとまる

 

    経済産業省が塩ビ工業・環境協会(VEC)に委託して実施した「塩ビ建材施工端材等の効率的な収集・再生利用調査」の報告書がまとまりました。塩ビ建材の再資源化を進めていくための構想シナリオが示され、モデルケースの実証作業への着手の必要性が提言されています。  

 

「経済的に自立した効率的リサイクルシステムづくり」を提案

  この調査は、現在多くが埋立処分されている塩ビ建材3品目(壁紙、床材、タイルカーペット)の新築・改築時の施工端材について、今後のマテリアルリサイクル促進の可能性を明らかにする目的で実施されたもの。
 VECでは、調査に当たって塩ビ建材メーカー、排出事業者、中間処理事業者それぞれの業界団体、塩ビ建材再資源化事業者などで構成する可能性調査委員会(委員長=田中勝岡山大学教授)を設置、「関係者の相互連携による効率的、効果的かつ経済的に自立性のあるリサイクルシステム構築の可能性」について、昨年7月から検討作業を進めてきました。
 このほどまとめられた報告書では、塩ビ建材3品目の施工端材の発生状況と回収・処理の実態の把握、これに基づく課題の洗い出しなどを行った上で、「今後のリサイクル推進のシナリオ」として、

  • 第1ステージ:本格的な新規リサイクル施設の活用による基礎的要素の実証と課題の解決策の試行、および第2ステージに向けた提言
  • 第2ステージ:第1ステージの検証結果から、経済性担保の可能性が見込まれると判断した事業をベースに、リサイクルシステムの適用範囲の検証と数値目標の検討を行う
  • 第3ステージ:事業的な成立が見通せたうえで、地域、品目などの範囲拡大(塩ビ全製品を対象とした全国的な再資源化の推進)を図る

の3段階を設定。関連業界と連携して着実にステップアップしていくことでリサイクルシステムの確立を実現して行くべき、としています。
 このうち、第1ステージについては、首都圏を対象地域として図に示すようなマテリアルリサイクルのモデル案の実証に着手することを提案。これは、現場分別した施工端材を、小規模な建設現場間あるいは中間処理施設間の巡回回収などにより集約拠点に搬送し、最新のリサイクル施設を活用して再資源化を行うもので(図の「溶剤法による再資源化施設」は壁紙のリサイクルの例)、収集、再資源化双方の経済性と処理効果、および経済的に自立したリサイクルが行われるための課題や提言を明確にすることが狙いです。
 報告書では、こうしたマテリアルリサイクルの推進から期待できる効果として、(1)新規のリサイクル施設と既存の処理施設の連携によるリサイクル率向上(2)塩ビのリサイクル性の高さの立証とその他の品目への波及効果(3)製品製造からリサイクルまでの環境負荷低減などを指摘。
 田中勝委員長は、関係業界が協力してモデル実証などに取り組むことにより、「世界に発信できる先進的な方策を提案・実行」するよう呼びかけています。