2006年6月 No.57
 
 

 リファインバース(株)のタイルカーペット再資源化事業
   塩ビ層をマテリアルリサイクル。年間1万8000トンの千葉工場が本格稼働へ

  

    タイルカーペットのリサイクルで注目を集めるリファインバース(株)(本社=東京都中央区京橋1-6-13アサコ京橋ビル/TEL.03-3538-1712/代表取締役社長 越智晶)の千葉工場(千葉県八千代市大和田新田672-4/TEL.047-450-9655)が、6月からいよいよ本格稼働へ。稼働を間近に控えた千葉工場を訪ね、事業の現状と今後の計画などを取材しました。  

道を開いた「切削加工技術」

 

  オフィスやデパートなどのフロアを彩るタイルカーペットは、現代の生活になくてはならない建設資材のひとつですが、表面の繊維層に塩ビのバッキング層(裏打ち層)を貼り合わせた構造となっているため、リサイクルしにくいのが難点。そのまま破砕すると糸が絡むなどの問題もあって、これまでは使用済み製品の殆どが埋立処分されてきました。
 この再生困難なタイルカーペットを「切削加工」と呼ばれるユニークな手法を用いてリサイクルしているのがリファインバース(株)です。
 「切削加工」とは、文字どおり、削り取ること。微細な刃がついた円筒体を回転させて、繊維層から塩ビバッキング層を分離すると同時に0.5mmサイズの粉末(再生塩ビコンパウンド)に加工する技術で、刃の形状や回転速度、投入速度を調整して一定の粒度の再生原料を安定的に生産することができます。製造されたコンパウンドは、再びタイルカーペットのバッキング材に利用されます。
 “砕かずに削る”という発想の転換が、使用済みタイルカーペットの再資源化に大きく道を開いたといえます。

   

関東地区のリサイクルを一挙に加速

 
  リファインバース(株)は、本誌でも以前にレポートした(No42)産廃中間処理の(株)御美商など3社が経営統合し2003年12月に設立されたリサイクル会社です。同社設立後には住友商事など複数の企業との資本提携により本格的な事業展開に向けて経営基盤を構築しています。
 同社では(株)御美商が2001年に開発した設備を、同社堀切工場で3年間の実証実験により蓄積した技術・事業ノウハウに基づき、さらにスケールアップ。高度な異物除去装置などを備えた全自動のシステムとして改良することに成功しています。
 本格稼働を迎えた新工場は、八千代市の工業団地内に「千葉県西・中央地域におけるエコタウンプラン」の中核リサイクル施設として建設されたもので、建設費用は環境省のエコタウン補助金も含めておよそ4億円。処理能力は1日50トン(年間約1万8000トン)で、関東地区で出てくる使用済みタイルカーペットのリサイクルは、千葉工場の稼働により一挙に前進することとなります。
 中核となる切削加工技術のほかにも、千葉工場のプラントはいろいろな技術的特長を備えています。特に、前述した異物混入への対応には細心の注意が払われており、(1)タイルカーペットの裏面に付着した接着剤の残りや、表面に付着したホッチキスなどの金属や塵・埃などを除去する除塵装置(前処理工程)、(2)切削粉を3種類に分級し混入した繊維玉などを取り除く振動分級装置、(3)最後にわずかな金属の残りを取り除く磁選装置(マグネットドラム)など、徹底的な異物除去工程を経て高品質の再生塩ビコンパウンドが製造されます。

   

関西、東海地区にもプラント建設構想

 
  本格稼働直前の状況について、越智社長は「ようやく第一段階が始まったところ。品質のさらなる向上など課題はまだ残っているが、むしろそれは楽しみでもある。リサイクルルートの面では、関東地区の建材廃棄物を扱う中間処理業者から必要量を確保できる見通しが立っているし、出口の部分もタイルカーペットメーカーへの販売を中心に建材メーカーを含めたルートが完成している」と説明しています。
 一方、今後の事業展開についてもさまざまな構想が考えられています。「現在は50cm角のタイルカーペットを中心に処理しているが、秋口には不定形なものを処理する新しいラインを立ち上げる予定。塩ビ樹脂を分離した後の繊維層についても、ナイロン糸などを回収して別途リサイクルするラインを同時期に完成させたい。塩ビバッキングのみのリサイクルでは60%程度の再資源化率だが、新システムが稼働すれば95%以上になる」
 さらに来年以降は関西、東海地区でも同様のプラントを立ち上げる計画で、現在その具体策について検討作業が進行中。
 「我々は自らを原料メーカーと考えている。今は廃棄物処理ということで処理費を取っているが、近い将来は原料を買ってでも出口サイドの付加価値を高める事によって収益の辻褄が合う事業モデルに変えていきたい。そうしないと基本的にリサイクル事業は長続きしない。リサイクルということだけで注目を集めているようでは、まだまだだと思う」(越智社長)