2005年12月 No.55
 
塩ビフルートが奏でる、やすらぎのサウンド

安価で高音質。木製フルートに劣らぬ豊かな響きにプロの演奏家も太鼓判

 

 塩ビ管が奏でる音の世界に、またひとつ新たなレパートリーが―。隠れたロングセラー、塩ビフルートから生み出される素朴で温かい音色は、まさしく心を癒すやすらぎのサウンド。

 

●ジパング音楽工房のオリジナル製品

 
 塩ビフルート(商品名=ルネサンス・フルート)を開発したのは、埼玉県さいたま市でオリジナル楽器の製造販売や音楽教室、コンサート企画などの事業を行っている(有)ジパング音楽工房(さいたま市大宮区大成町2−191−1、TEL.048−652−7286)。同社の及川茂社長の話では、個人的に塩ビ管でフルートを製作して楽しむ人は以前からあったものの、正式な楽器として完成、商品化したのは同社が初めて。1988年のことでした。
 「それまでは私自身、プロの演奏者として欧米のメーカーから取り寄せた木製の古典フルートを使っていたが、あるとき、従来の趣味的なものではなく、真面目に塩ビ管でフルートを作ってみたらどうだろうと思いついた。開発までには、自分の演奏経験から音程や吹きやすさ、音色を工夫したり、知り合いの演奏家に意見を聞いたりして、様々な試みを重ねた」
 以来、ヨーロッパの中世・ルネッサンス音楽(古楽)に興味を持つ人や学校の音楽教育、さらには国内外の著名なフルート奏者にも採用され高い評価を得るなど、ルネサンス・フルートは「安価で音色の優れた楽器」として、異例のロングセラー商品となっています。
 

●塩ビシートの外装で音質向上

 
 及川社長によれば、一般になじみの深い金属製のフルートは19世紀末になって開発されたもので、それ以前は木製が主流だったとのこと。ルネサンス・フルートはこの古典フルートをモデルに製作されており、素朴で暖か味のある音が何よりの魅力です。
 「音質を完成する上で画期的だったのは、塩ビ管の表面に塩ビシートを巻きつけたこと。もともとは外観を美しく仕上げるための工夫だったが、塩ビシートを巻いたことで思いがけず音に締りが出て、木製に劣らない音色になった。その豊かでなめらかな響きは、まさしく“癒しの音楽”そのものといえる」
 ジパング音楽工房では木製フルートの製造・販売も行っていますが、ルネサンス・フルートの場合、「木製に比べて、管楽器にとっていちばん重要な内径処理の手間がいらず、加工もしやすい」という製造面での利点があることも、塩ビならではの特長。ルネサンス・フルートはバス、テナー、アルト、ソプラノの4 タイプあり、カラーも重厚感のあるローズ調とわらかい木質感が美しいメープル調の2 種類が用意されています。
 「ルネサンス・フルートの演奏者を集めてコンサートを開くのが私の夢」という及川社長。これまでフルートのほかにも、尺八、ケーナ、パンフルートなども塩ビ管で試作したことがあるとのことで、塩ビが奏でる音の世界は、まだまだ未知の可能性を秘めているようです。
 
 ルネサンス・フルートは、ジパング音楽工房のホームページ(http://www16.ocn.ne.jp/~zpg/)を通じてネット販売しているほか、「東京古典楽器センター(ギタルラ社)」(東京都新宿区下落合、TEL.03‐3952‐5515 )でも購入可能です。