2005年9月 No.54
塩ビでアートする、「ポリマークレイ」の楽しみ
アクセサリーから実用雑貨まで。多彩で多様なクラフトアートの新世界
ポリマークレイ。日本語で言えば樹脂粘土。軟質塩ビに着色材を混ぜて作った粘土のクラフトアートが、今、「自分だけのデザイン」を求める女性たちの間で人気を呼んでいます。塩ビなればこそ可能にした、豊かで新しいホビーライフとは―。
●“オリジナル”の楽しさ
ブレスレッド、ブローチといったアクセサリー類から、花やお菓子のミニチュア、額縁、小物入れなどの雑貨類まで、ポリマークレイが生み出すクラフトの世界は、まさに千変万化の楽しさ。
「130℃のオーブンで30分加熱して焼き上げると、陶器のような美しい作品が完成する。家庭で簡単に作れて、作り手の思いやアイデアをそのまま形にできるのがポリマークレイの最大の魅力。メーカーが大量生産する商品にはない自分だけのオリジナル・デザインを楽しむことができる」と説明するのは、福岡市で手工芸品の専門店(有)クラフトハウス(福岡県福岡市中央区大名2−10−25/TEL.092−771−6836/http://www.crafthouse.jp)を経営する栗元一久さん。日本におけるポリマークレイの第一人者です。
「ポリマークレイの原型は1930年代にドイツで生まれたが、世界的に人気が高まったのは70年代に入ってから。3年前に渡米したとき初めてその作品を見て感激し、日本でもぜひこれを広めたいと思って販路づくりに取り組んできたが、最近やっと軌道に乗ってきた感じだ」
日本では、博物館の土器のレプリカ作りなど特定の分野でポリマークレイを利用してきた例はあったようですが、クラフトアートとして定着させたという点では、栗元さんが文字どおりのパイオニア。昨年から始めた初心者向けの教室も順調で、受講生からは「おもしろくて、すっかりはまってしまった」といった熱い声が続々寄せられているとのことです。
●将来は障害者用の補助具も
粘土工芸には、一般の粘土細工をはじめ、伝統的な紙粘土や純銀粉を使った銀粘土、さらにはパン粘土やトウモロコシ粘土など様々な種類がありますが、ポリマークレイの最大の利点は、自然乾燥によるひび割れがなくオーブンに入れるまで柔らかさを保つこと。このため、ゆっくり焦らず作品を仕上げることができます。また、着色性や耐久性がよいといった点も、塩ビならではの特長といえます。
「焼きあがった作品は軽くて丈夫なので実用的な道具類の製作にも適している。この特性を生かして、将来は障害者用の補助具など新たな分野にも応用していきたい。例えば梗塞で手に障害が残った人が使いやすいスプーンなど、障害の度合いに合わせて、その人に最適な補助具ができれば喜んでもらえると思う」(夫人で店長の栗元幸子さん)
今年秋にはNHKの『おしゃれ工房』でも取り上げられることになっているほか、来年にかけて関連の出版も相次ぐ予定とか。まだまだ広がるポリマークレイの可能性に注目。