塩ビを含む建設系混合プラスチックのリサイクルに、新たな可能性
非鉄金属製錬の熱源に有効利用。関東建廃協、小坂製錬(株)とVECが共同実験
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塩ビを含む建設混合廃棄物を非鉄金属製錬の熱源として利用する共同実験が、小坂製錬(株)(秋田県鹿角郡小坂町)と関東建設廃棄物協同組合(東京都中央区八丁堀)、塩ビ工業・環境協会(VEC)の連携で進められています。既に「技術的に問題なくリサイクルできる上、高率の熱回収も可能」であることが確認されており、建設系混合プラスチックの有効利用に新たな光が見えてきました。 |
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共通の課題克服へ関係業界が連携
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日本における建設廃棄物の排出量は年間7,600万トン余り(2001年度統計)。このうち、建物の解体・改修工事から出る建設混合廃棄物の量は約500万トンで、その15%程度(約70万トン)が塩ビをはじめとする廃プラスチック類と考えられています。
様々な素材が混ざりあった混合廃棄物はリサイクルが難しく、塩ビパイプや電線などマテリアルリサイクルのシステムが確立している一部を除けば、大半は埋立処分されているのが現状。この大量の廃棄物を資源としてどう有効利用していくかが建設業界、あるいは建設廃棄物のリサイクルを担う中間処理業界にとって、いま大きな課題となっています。
一方、建材分野での需要が大きな割合を占める塩ビ業界にとっても、使用済みの壁紙や床材などの塩ビ製品を多く含む建設混合廃棄物の有効利用は同様に大きな課題といえます。建設混合廃棄物をリサイクルするには、焼却熱を利用するサーマルリサイクルが最も効率的な方法ですが、この場合、塩ビから発生する塩化水素ガスの処理が必要となるため、業界自らが率先して信頼性の高い経済的なリサイクル方法を確立することが求められます。
今回の共同実験は、こうした共通の課題を持つ業界が連携して問題解決に取り組んでいこうというもので、塩ビを含む建設混合廃棄物でも安定したサーマルリサイクルが可能であることを実証することが基本的な狙いとなっています。 |
小坂製錬のASRリサイクル技術に着目
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実験は昨年11月からスタートし、中間処理業者の団体である関東建設廃棄物協同組合から提供された混合廃棄物計100トンをサンプルに、小坂製錬?のサーマルリサイクル・プラント(金属蒸気回収炉設備)を利用して、燃焼条件、経済性を含めた総合的なデータの採取と分析が行われました。
小坂製錬は、資源リサイクル事業で積極的な活動を続ける同和鉱業のグループ企業で、各種鉱石から金、銀、銅、鉛などを取り出す非鉄金属製錬の分野では120年以上の歴史と技術の蓄積を持つトップ企業です。同社のサーマルリサイクル・プラントは、今年1月からスタートした自動車リサイクル法に備えて2001年に建設されたもので、これまで埋立や単純焼却が中心だった自動車のシュレッダーダスト(ASR)を燃料として再利用するのと同時に、その中に含まれる金や鉛を回収、製品化するという、環境事業と製錬業の複合型施設として注目を集めています。
処理フローの概要は、?前処理(破砕)したサンプルとASRを混合した原料を、流動床炉(砂を熱媒体とする焼却炉)に投入→?プラスチックをガス化→?さらに二次燃焼室で完全燃焼→?ボイラーで熱回収→?流動床炉で使った砂を製錬工程(自溶炉と呼ばれる専用炉)に投入→有価金属を回収、という流れで(フロー図参照)、塩素は排ガス処理工程で中和剤を投入して無害化されます。また、流動砂も最終的にはスラグの原料として再利用されます。
このように、小坂製錬のサーマルリサイクルは、実際には〈サーマル+マテリアルリサイクル〉といえるもので、非鉄金属の製錬工程と組み合わせることで、焼却灰やダストの残らないゼロエミッションを実現している点に、大きな特長が見られます。
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RDF加工で安定燃焼、熱回収も高効率
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以下に実験結果のポイントをまとめます。
【実験結果の要点】
- 塩ビを含んだ混合廃棄物を安定的にサーマルリサイクルできることが実証された。特に、原料をRDF状(固形燃料)に加工、均質化することで、燃焼はより安定した状態となる。処理量は時間当たり約3トン。
- 混焼率(サンプルとASRの混合割合)は30%と50%の2種類で実験を行った。基本的には30%程度が最も適当と思われるが、50%でも燃焼状態は安定しており問題は見られなかった。
- 炉の塩素濃度は3%(塩ビの量で6%)で設計してあるが、実際は5〜6%の濃度でも十分に処理できる。
- カロリーは約4300kcal。ボイラーの熱効率は70〜75%で、高効率の熱回収が可能。
小坂製錬の米澤理雄取締役は、今回の実験結果について次のように評価しています。
「ASRには建設混合廃棄物とほぼ同量の塩素分(3〜5%)が入っているため、ASRの処理ができる当社のシステムであれば、塩ビを含んだ混合廃棄物でも問題なくサーマルリサイクルできるだろうと予想していた。燃料をRDFにすることで安定度が高まるというのも大きな発見だ。熱エネルギーの回収効率もよく、当社としては工場の省エネになるというメリットもある。今回の実験では、こうした様々な技術的可能性を確認できたことがいちばんのポイントだ。塩素濃度が高いものは他のリサイクル方法を利用するとして、3〜10%程度の比較的低いものはサーマルリサイクルを使う、といった組み合わせ方が建設混合廃棄物の有効利用としては最も合理的だと思う」
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