2005年6月 No.53
 

 リサイクル塩ビ管、「愛・地球博」にひと役

  評価された「環境にやさしい建設資材」。会場内の排水管、通気管に採用

 

    「自然の叡智」をテーマに、去る3月25日に開幕した愛知万博(正式名称=2005年日本国際博覧会/愛称=愛・地球博)。1851年のロンドン開催から150年余り、万博史上はじめて「環境」に焦点を当てた画期的な博覧会の会場で、リサイクル塩ビ管が大切な役割を担っています。「パイプからパイプにリサイクルした環境にやさしい建設資材」として会場の排水管、通気管などに採用されたもので、21世紀最初の万博を支える裏方として大きな力を発揮しています。  

 

先進的なリサイクル建材

  本誌前号では、都営アパートや公団住宅などの公的施設でリサイクル塩ビ管採用の動きが広がっていることをレポートしましたが、今回ご紹介する愛知万博の取り組みも、こうした流れの中で実現した事例のひとつといえます。
 地球規模の環境問題を正面に据えた愛知万博では、博覧会運営に関して、自然環境に配慮した会場計画、循環型社会のための先進技術の導入、3Rの積極導入、など7項目を柱とする「環境方針」が定められており、3R導入に際しては、「(会場整備において)環境にやさしい素材の利用率を高めるための各種施策(リサイクル材の利用促進等)を進める」ことなどが、「環境目標」として掲げられています。
愛知万博の「環境方針」
  1. 環境影響評価書に示した保全措置の実施。
  2. 自然環境に配慮した会場計画の策定。
  3. 循環型社会のための先進的な技術の導入。
  4. 3R(リデュース、リユース、リサイクル)の積極的導入。
  5. 環境負荷の少ない交通手段の利用促進。
  6. 展示や催事を通じて楽しみながら学ぶ機会の提供。
  7. 関係者の環境配慮に関する取り組み促進。

 「このため、会場建設についても、使用済み資材は可能な限りリサイクル・再使用するといった3R徹底、先進的な技術を生かしたリサイクル建設資材の使用などが求められた。配管材として積極的にリサイクル製品を使っていくことにしたのは、そうした基本的な枠組みに沿ったものだが、特にリサイクル塩ビ管は、パイプからパイプという本来の意味でのリサイクル製品であることが大きな評価ポイントになっている。品質面でも新品と全く変わらないし、閉会後はできるだけどこか他の場所でリユースしたいと考えているが、具体的な計画はまだ不明だ」と、リサイクル塩ビ管採用の背景を説明するのは、(財)2005年日本国際博覧会事務協会の町田誠施設管理室長(会場整備グループ長兼会場演出調整担当)。
 建設資材としては、塩ビ管のほかに、コンクリート砕石、木材チップや廃タイヤチップの舗装材などのリサイクル製品が採用されていますが、「プラスチックでは何といっても塩ビ管がメイン」とのことです。 
 リサイクル塩ビ管は、各パビリオンなどの建物をつなぐ取付管として使用されています。これは、下水道用取付管や屋外排水設備などのために開発されたリサイクル三層管(RS−VU)で、相当の量が使われています。
 ちなみに、総面積158haという広大な長久手会場を一周する排水管には、バージンの塩ビ管が使われています。これについても最終的にはリサイクル、リユースに回すことが検討されています。

 

“万博の象徴”日本政府館にも採用

  町田施設管理室長の話によれば、博覧会事務協会が担当する会場建設の範囲は、協会本部ビルとパブリック・スペースの建築物、公式参加国パビリオンの建物までで、各パビリオン内の配管、内装等はすべて参加国が自前で行うことになっています。
 「従って、公式参加国や企業のパビリオンの中にもリサイクル塩ビ管を使っているところが結構多いと思う。正確な件数は協会としては把握していないが、建設のガイドラインとして3Rの方針を示しているので、各国、各企業の設計担当者もきちんと我々の意向を汲んでくれているはずだ。日本の関係だけでいえば、日本政府館(長久手日本館)にリサイクル塩ビ管が使われていることは間違いない。ほかにもまだあると思う」
ということで、完成間近の日本政府館の内部を特別に取材させてもらいました。
 日本政府館は、2万本以上の竹を編んで作られた、縦90メートル、横70メートル、高さ19メートルの巨大なドームで、万博テーマ「自然の叡智」を象徴する施設として、開幕前から大きな話題を集めていた人気パビリオンのひとつ。館内には、排水、通気、さらには床下の横引き管などとして、リサイクル塩ビ管がふんだんに取り入れられており(管の種類は建物排水用に開発されたリサイクル発泡三層管〔RF-VP〕)、建設を担当した経済産業省中部地方整備局営繕部の関係者は、「バージン管と全く変わらずに使えるし、施工作業上も問題ない」と話してくれました。
 表からは見えないところで、来場者の快適な万博体験を保証するリサイクル塩ビ管。その役割は、決して小さくありません。