2004年6月 No.49
 
熊本県・(株)ミヤムラが塩ビ鳥居を開発

技術研究を重ねて塩ビパイプを鳥居に利用。丈夫さ、美しさで普及拡大の予感

 熊本県益城町の(株)ミヤムラ(宮村宜司社長/TEL.096−286−8916)が、今年から塩ビ製鳥居の製造販売を開始。木製や鉄製、石材に替わる丈夫で美しい鳥居として地域での普及が進みそうです。

 

●既に計10基を受注

 
 ミヤムラは、半導体製造装置の加工組立や塩ビパイプの加工、樹脂精密加工などを主力とする製造メーカー。同社ではかつて鉄工所を経営していた関係で以前から鉄製の鳥居を作っていましたが、2年ほど前、同県菊池郡大津町の大津日吉神社の宮司・坂本道さんから、「鉄製の鳥居は錆びて危険だし、木製は10年ぐらいしか持たない。どうにかならないか」という相談を受けて、塩ビパイプに着目。溶接技術の研究など試行錯誤を重ねた末、今年1月、坂本宮司が管理する大津町の三吉原稲荷神社に第1号の塩ビ鳥居を建設しました。この鳥居は地元の建設会社が奉納したものです。
 宮村社長の説明によれば、三吉原稲荷神社だけで現在4基、成約分も含めると既に計10基の塩ビ鳥居を受注しているとのこと。このうち、柱の直径1m、笠木の長さ8mという大型鳥居を発注した熊本市の三之宮神社宮司・坂本光治さんは、「お宮は日本人の心のより所。新しい鳥居は皇居遥拝用として地域の人々に使ってもらいたい」と期待しています。
 

●合格祈願用のミニ鳥居も開発

 
 「塩ビは素直な素材。加工しやすく軽量で、見た目も美しく仕上がる。5年に1回程度簡単なメンテナンスをするだけで半永久的に使えるし、鉄やコンクリート、石に比べてコストも安い」と宮村社長。
 同社では大型鳥居のほか柱の直径30mm程度のミニ鳥居も開発しており、今後、受験生の合格祈願や企業、家庭の神棚用などに全国販売していく計画。
 また、今回の技術開発をもとに玉垣や灯篭、賽銭箱などまで「塩ビ神具」の品目を広げていく計画もあり、熊本城内にある加藤神社の宮司・湯田榮弘さんは、「ミニ鳥居は受験生だけでなく若い女性にも喜ばれそう。玉垣も試作品ができたら使ってみたい」と、ミヤムラの試みに積極的に協力する姿勢を見せています。
 「熊本は敬神の念の強い地域。損得だけで事業はできない。当社では製造業のほかに幼稚園や学習塾、カルチャーセンターなども経営しているが、これも職業を通じて社会に貢献したいという考えから。道徳と経済の一体化が私の理想だ」(宮村社長)
 同社が塩ビ鳥居の原材料に県内のパイプメーカーから出る工場端材を利用しているのも、リサイクルに対する社会的な要請に応える取り組みと言えます。