■ 関東圏を取巻くリサイクルネットワーク
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大空リサイクルセンターは、(有)大空土木(渡辺三郎社長/本社=東京都武蔵村山市)を中核とする「大空グループ」の中間処理・リサイクル部門として昭和60年に設立されました。
土木工事・家屋解体請負業大手の大空土木は、「建設廃棄物の減量化・資源化・再利用」を基本理念に、業界の中でも早くから中間処理施設とリサイクルの必要性を訴えてきた会社で、大空リサイクルセンターの設立時期を見ても、建設廃棄物の処理が社会問題化するかなり以前から、率先してその分別回収と適正処理に取り組んできたことが分ります。
大空リサイクルセンターでは現在、所沢市のほかに、東京都の足立区と青梅市、神奈川県相模原市に中間処理場を整備していますが、2年後には川崎市にも処理場を建設して、「5処理場で関東全域を取り巻き、50km以内でどこからでも利用できる大空グループのリサイクルネットワークを完成する計画」(取締役総合所長・和田敏之氏)。
こうした同センターの動きには、首都圏における建設廃棄物の減量・再資源化へ向けた独自の試みとして、業界他社からも大きな注目が寄せられています。 |
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■ 混合廃棄物も効率的に分別
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大空リサイクルセンターの中間処理の特徴は、現場分別を含め徹底した分別精度へのこだわりにあります。埼玉中間処理場を例に、その流れを見てみます。
同処理場に持ち込まれる建設廃棄物は、新築・改装工事から出るものが約7割、残りの3割が解体系となっていますが、これらはまず第一段階として工事現場でダンボール、木材、塩ビ管、混合廃棄物などを大まかに分別した後、処理場内でさらに細かく、金属くず、がれき類、木くず、廃プラスチック類、石膏ボードなど10品目に分別されます。
このうち、がれき類は「がれき類処理プラント」で、木くず類は「木くず処理プラント」で、それぞれ路盤材やボイラー用チップ燃料に再資源化されるほか、金属くずや石膏ボードなども専門の業者に引き取られてリサイクルされます。また、分別の難しい混合廃棄物を処理する「混合廃棄物処理プラント」では、機械選別や磁選、数次におよぶ手選別などを組み合わせて、金属類、廃プラスチック、紙、木くず、さらには廃棄物と一緒に持ち込まれる土砂類まで効率的に分別され、金属類や木くずなどは上記のリサイクルルートに戻されて再利用されることとなります。
一方、廃プラスチック類は専用の減容機によって約15分の1に減容された後、大半が埋立処分されますが、先に述べたとおり、塩ビ管だけは分別されて、埼玉県の照和樹脂、山口県の金井産業(いずれも塩化ビニル管・継手協会が進める塩ビ管リサイクル事業の協力会社)などでほぼ100%リサイクルされています。大空リサイクルセンターの小口智史係長によれば、「その量は埼玉処理場だけで1カ月平均50立方メートル程度」とのことです。
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■ 第一目的は焼却処分の削減
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大空リサイクルセンターのリサイクル率は現在75%程度ですが、和田所長は、「リサイクル率を上げるのが我々の目的ではない」として、数字だけが一人歩きする最近の傾向には批判的な見解を示しています。
「リサイクルセンターを名乗っている以上リサイクル率が上がるのに越したことはないが、我々はそのために仕事をしているわけではない。エンドユーザーから出された廃棄物を適正に中間処理して、可能な限り焼却処分を減らすことが我々の第一の目的であり、そのためには埋立処分も、それが基準に適合した処分場であるならば依然として重要な選択肢だ。廃プラスチック類にしても、泥や塗料などの様々な付着物、あるいは多種類のプラスチックが混ざった建設系廃プラをリサイクルするには相当な手間とコストがかかるが、まだそこまでの費用をエンドユーザーに負担させることはできない。少なくとも今は、現状の処理費用の中でできるだけ適正処理をすることが第一であり、エンドユーザーのコスト意識が変わっていく中で、リサイクル率も自然に上がっていくということがいちばん望ましい形だと思う」。
また、和田所長は、「建設廃棄物のリサイクルは、例え逆有償になったとしても、常に出と入りのバランスを維持しておくことが何よりも重要だ」とも指摘しています。
「いくらリサイクルしても使ってもらえなければ流れはストップする。特に建設廃棄物の場合、木くずのリサイクルがパンクしたら混合廃棄物のリサイクルがパンクするというようにすべてが連動しているのが怖いところで、逆有償になっても、とにかくモノを流しておかなければならない。そのために当センターでは、塩ビ管をはじめ、紙類や木くず、金属類などにも殆ど値段をつけていない」。
リサイクルに対するこうした現実的な認識の一方で、大空リサイクルセンターではセメントと再生骨材を混ぜた舗装材「ブミ」の製品化など再生用途の研究開発に意欲を示しており、このへんにもその事業の独自性を見ることができるようです。 |
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