今回のシンポジウムでは、口頭発表とポスター発表を合わせて全体で84件、うち塩ビ関係は13件の事例報告がありました。内容は、ガス化、油化、高炉還元剤化、モノマー化など多岐にわたり、VECも「塩ビ業界のリサイクルへの取り組み」というテーマで、高炉還元剤へのリサイクル、塩素の塩ビモノマーへのリサイクルおよびガス化技術の開発状況について発表を行なっています。
事例報告の中から、ヨーロッパで開発が進む塩ビリサイクル技術の概要を以下にご紹介します。
【スラグバスによるガス化】フランスのタボ(Tavaux)にECVM(欧州塩ビ協会)が中心になって、100kg/hrのパイロットプラントを2001年に建設しました。プロセスは、塩ビ廃棄物を溶融スラグバス内(1,400〜1,600℃)でガス化し、HCl、CO、H2を得る、というもの。2002年末に検討を終了する予定とのことです。
【ロータリーキルン法】ドイツのシュコパウ(Schkopau)にあるDOW/BSLが、同コンビナート内で発生する塩素系廃棄物の処理を目的として1999年に建設したプラント。プロセスは、塩素系廃棄物を950℃のロータリーキルンで1次処理し、次いで1,100℃の炉で処理をする、というものです。能力は45,000t/yで、その内15,000t/yを塩ビ製品に充てることができるとのことです。塩化水素回収工程は20%塩酸として55,000t/yの能力があり、回収した塩化水素は、電解工程に戻すことと塩ビモノマー製造工程に戻すことが考えられています。
【加水分解と熱分解の組み合わせ】デンマークの企業が開発中のプロセス。第1段で、250℃の苛性ソーダと塩ビ廃製品をスラリー状で反応させ脱塩素します(この部分については有休設備として50,000t/y規模の設備がある)。第2段で、得られた炭化水素を600℃で熱分解し、炭化水素部分と無機質部分を分離します。得られたNaClは再利用し、炭化水素はガス化して利用、無機質も有効利用する計画。2002年中に今後の取り進めの結論を出す予定とのことです。
【熱分解と金属抽出の組み合わせ】デンマークの電線会社NKTの関連会社Watecが開発したプロセスです。約300℃、数気圧の熱分解反応器で塩ビ廃製品と炭酸カルシウムを反応させ、炭化水素残渣、CaCl2、金属塩化物、オイルおよびガスを回収します。固体相である炭化水素と塩化カルシウムと金属塩化物は、PHを調整した多段抽出装置でそれぞれの単体に分離し、有効利用します。Watecでは既に800t/yのパイロットプラントを用いて種々の塩ビ製品のテストを終了しており、現在、15,000t/y規模のプラントを建設するパートナーを募集中です。
《参考資料》
R.Buehl, Development in PVC Recycling, Prodeeings of 2nd ISFR,Sept.9-11(2002) Ostend , Belgium.
http://www.vinyl2010.org/Progress-Report-2002/Projects/7C-Stigsnaes-project.htm