2002年3月 No.40
 

 『PVCニュース』創刊10周年に寄せて

〜関係各界からのコメント〜

  

   平成4年6月に第1号を発行して以来、塩ビ業界の環境・リサイクル活動に関する広報誌としてご愛読いただいてまいりました『PVCニュース』が、本号をもって満10年(通巻40号)を迎えることとなりました。この節目に当たり、これまで本誌にご登場いただいた有識者の方々および本誌のアンケートにたびたびご意見をお寄せくださった方々から叱咤鞭撻こもごものコメントをいただきました。各位の言葉を糧に、本誌は、新たな10年へさらなる情報の充実をめざします。  

■バランスの妙
東京大学 生産技術研究所 教授  安井 至氏

 
  米国の調査によると、若者の8割近くが、自分達の住んでいる環境は、親の時代の環境よりも悪くなっていると思っている。
 日本においては、親の時代の環境が現在の環境よりも圧倒的に悪かったということは事実だろう。しかし、日本で同じ調査をしたら、やはり米国と同様の調査結果になりそうだ。
 このところ、自然回帰指向が強くなっている。しかし、自然回帰によって、ヒトに対するリスクが減少すると思ったら、それは間違いである。
 勿論、適度な自然回帰を行うべきであるが、もしもダムを全面的に否定すれば、たちまち飲料水や農業用水の不足問題が生ずるだろう。また、水力発電の分を火力発電に依存することになって、二酸化炭素の排出量は増えるだろう。
 材料選択にしてもしかり。塩ビを全面否定することで、リスクが減るとは限らない。
 環境問題、すべてバランスである。しかし、バランスの良い考え方ができる人は、ごく少数でしかない。

 

■容易になった、塩ビの情報収集
宮崎県工業技術センター 資源環境部長  山内博利氏

 

  本県はビニールハウスによる栽培が盛んな一方で、昭和53年頃から使用済みのビニール廃棄物(廃PVC)が問題となり、我々としてもその処理技術に取り組まざるを得ませんでした。
 事業化には至りませんでしたので、当時試作した廃PVCを用いた敷石の代替品が現在でも実証試験用に敷いた通路に風雨に晒されながら耐えている姿を見ると、今のようにPVC関連の情報収集の手段が容易であれば別の展開ができたかもと思います。

 

 

■期待したい「コミュニケーションの場」
ジャーナリスト・環境カウンセラー  崎田裕子氏

 
  家電メーカー、飲料会社、大手スーパーなど様々な企業から環境報告書をいただく機会が増え、商品開発や事業行動で環境に配慮し、社会貢献や地域参加も推進する多くの企業の姿勢を痛感。それと共に、消費者自身もライフスタイルの見直しや、グリーンコンシューマーとしての消費行動が大いに期待されていると、ひしひし感じます。企業の声や消費者の思いが率直に交流する社会に向けて、「つなぐ場」の大切さがますます輝きます!

 

■環境の時代と産業の未来
東京工業大学教授(日本建築学会会長)  仙田 満氏

 
  21世紀に入り、政治、経済、教育、社会制度等についてさまざまな変革が議論されています。変革期であることは誰しも自覚していますが、その実行には自らを含めて傷みが生ずるため、そのスピードは決して速くありません。今日本では環境、技術、社会制度、人の劣化に直面していると言ってよいでしょう。日本と日本人が生き残るためには、この戦後50年間に堆積した劣化を修復しなければなりません。産業も技術分野において新しいフィールドを開拓しなければなりません。その命題は明確です。今世紀は地球環境問題に対応した技術がそのカギです。長寿命、自然共生、省エネルギー、省資源循環、健康安全な建築的環境―それを地球環境建築と呼んでいますが―を次世代に継承する必要があります。貴会においては、既に地球環境問題に対応した多くの取り組みをし、成果を上げていますが、今後もたゆまぬ技術の開発と、あわせて貴会を支える、優れた人材の育成に励まれますことを期待いたします。

 

■塩ビの環境性をわかりやすく
(株)日本総合研究所 創発戦略センター  石田直美氏

 
  環境に対する一般市民の理解は格段に向上しており、「21世紀は環境の時代」という認識を強くしています。
 塩ビについては、「ダイオキシンの原因は塩ビではなく燃やし方にある」ことへの理解は相当進んだと思いますが、未だに「環境によくない材料」とのイメージが、根強く残っているようです。
 塩ビがエコ・コンシャスな材料であることを、科学的に、かつ消費者が納得しやすい形で示すことが、次の課題ではないでしょうか。

 

■今後もリサイクルなど情報提供を
柳泉園組合 技術担当 参事  平山福美氏

 
  塩化ビニル環境対策協議会「PVCニュース」発行10周年おめでとうございます。
 柳泉園組合は、東京都の清瀬市、東久留米市、西東京市(約36万人)の市民が排出する、一般廃棄物の中間処理をしている清掃工場です。廃棄物の処理と塩ビ製品の処理は切っても切れない関係にあります。特に「PVCニュース」は施設の運営管理に必要な情報が掲載されており、大変参考になっています。
 現在、国で循環型社会構築に向けて法整備が進められており、容器包装リサイクル法の実施に伴うペットボトル、その他プラスチック容器などの回収が始まっています。
 そろそろ塩ビ製品の分別・回収・再商品化などの、制度化も検討すべき時期にきていると考えています。
 今後も、塩ビ製品のリサイクル、適正処理に向けた情報提供など、「PVCニュース」の活発な活動をお願いして、10周年のお祝いの言葉といたします。

 

■塩ビの進化と現状が分かる広報誌
(株)総合報道 主幹  高橋方予氏

 
  祝10周年。御誌を通して塩化ビニルの進化と現状を知ります。環境問題の俎上で論じられるようになってから、家庭ごみに至るまで見直されました。
 私どもの専門とする屋外広告業界では素材そのものの改良が行われ、製作する側、使う側双方の意識の高まりに確かな前進を感じています。
 見えないところに費用を投じて環境問題と取り組む貴会の真面目な姿勢に、尊敬と感謝を捧げます。

 

■家電リサイクル法後の塩ビ廃棄物に関心
北海道大学大学院 工学研究科 教授  田中信壽氏

 
  廃棄物処理では、塩ビは悪者になっている。私も厳しい目を向けている一人。私の研究から見ると、PVCに由来する鉛やフタル酸エステルが廃棄物処理を困難にしていると感じています。
 前者では、灰中の鉛について過去では家電製品の寄与が大きかったが、家電リサイクルによりPVCの寄与が大きくなるのではないか。
 また、埋立地浸出水中のフタル酸エステル濃度は、埋め立て時間がかなり経過しても減少しない。もう、鉛やフタル酸エステルの代替品は開発され使用されているのでしょうか。

 

■使用済み製品の回収・リサイクルルート確立を
環境・廃棄物コンサルタント/(株)杉山・栗原環境事務所 杉山涼子氏

 
  循環型社会の実現を目指して、地球温暖化防止のために、私たちに何が出来るのか、何をすべきなのか具体的な解決策が求められています。
 いかなる素材も万能ではあり得ません。21世紀に塩ビが環境負荷の少ない素材として生き残るためには、塩ビの強みを生かして、耐久消費財にいかに塩ビを利用できるか、そして使用済製品を確実に回収し、リサイクルできるルートを確保できるかどうかにかかっているように思います。

 

■誤解を解く努力が生んだ成果
(社)日本能率協会 専任コンサルタント  中村茂弘氏

 
  「PVCニュース」10周年おめでとうございます。プラスチックは難リサイクル材ですが、その中で「PVCは使用すらすべきでない」という見方が、かつてありました。
 この面に対し、「PVCニュース」は、再利用の技術、回収技術のみならず、各所で行われている事例、ビデオの紹介をと幅広く誤解を解く対策に努力されました。その結果、他の材料のリサイクルまでが進む、という成果を生みました。
 今後益々の事例のご紹介をお願いいたします。

 

■循環型社会に向けての情報発信基地として
鹿島建設(株)東京支店 安全環境部担当部長  島田啓三氏

 
  ダイオキシンが大きな社会的問題になるとともに塩ビ製品が悪者にされてきました。それに対して、今では塩ビ管マテリアルリサイクルシステムの確立や廃プラケミカルリサイクル技術の開発など様々な取り組みが進められています。
 正確な情報を伝え、正しい理解の上で化学製品を適切に利用し、真の循環型社会を作っていくことが重要でしょう。
 この「PVCニュース」が、そのための情報発信基地としての役割を果たしていくことを期待しています。