そうした共通イメージのモデルとして松田さんは、既に30年前から循環型社会づくりに着手しているスイスの取り組みを紹介。
「スイスでは1971年のはじめに環境保護を憲法の中に盛り込んで以降、減量化を主眼とした徹底的な廃棄物対策が進められている。『まずごみを出さないこと』ということが市民生活の大前提で、ごみの中で土に戻るものはすべて堆肥化して土に戻していく。飲料容器もリターナブルできるびん容器が中心で、ホテルの冷蔵庫にはびん容器以外の飲料は備えられていない。環境に配慮することが一流ホテルの条件になっていて、もし冷蔵庫にPETボトルや缶が入っていれば、そのホテルは三流以下とみなされる」
また、マッターホルン山麓に広がるツェルマット村の取り組みについても、
「自動車道路の開通に伴う交通量の増加で環境悪化が懸念されていたツェルマット村では、憲法改正のわずか半年後に、企業と行政、村民がみんなで知恵を出し合って素早い対応を取った。まず、麓の駅から村までピストン輸送する登山列車を引いて観光客の自動車を規制する一方、当時は世界的にも珍しかった電気自動車に着目し、村内を走るバスやタクシー、ごみ収集車、郵便自動車、さらには一般・個人商店の自動車に至るまで、すべてを電気自動車に代える決定をした。ツェルマット村では、1865年に人間がはじめてマッターホルンに登った時と同じ空気を今でも吸うことができる」
と、そのユニークな試みを評価した上で、「30年前と言えば、日本はまだ高度成長路線の上をひた走っている時期。そんな時代に、スイスでは循環型社会の原点のような社会が、空想ではなく実現している。そんな国に日本もしていきたい」と、スイスの取り組みの中に循環型社会の理想的なイメージが見出されることを強調しました。
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