2001年3月 No.36
 

 特集/リサイクル関連新法と塩ビ業界
   塩ビ業界から見た各法律のポイントと対応の在り方

解説:経済産業省製造産業局化学課課長補佐 福田 敦史氏 

  

 

 循環型社会への転換が求められる中、塩ビ製品のリサイクルにも大きな影響を与える6つの法律がこの4月から一斉に施行されます。このうち、塩ビ製品と特に関連の深い 「資源有効利用促進法」 「建設リサイクル法」 「グリーン購入法」 の3法について、塩ビ業界から見た各法律のポイント、業界としての対応の在り方などを、経済産業省の福田敦史課長補佐の解説を交えて整理しました。

 

 

「3R対策」で最終処分量半減へ

  政府は平成11年7月、大量生産・大量消費・大量廃棄型の経済システムから循環型社会への転換を目指す「循環経済ビジョン」をとりまとめ、従来のリサイクル対策を拡充して、リデュース(発生抑制)、リユース(再使用)、リサイクル(再利用)の3R対策を本格的に導入する方針を決定、同年9月には、「一般廃棄物、産業廃棄物の最終処分量を平成22年度までに現状(平成8年度)の半分に削減」することを目標とする「廃棄物の減量化の目標量」(下表)を設定しました。

 昨年5月の国会で成立した環境関連6法は、こうした国の方針を達成するための制度を具体化したもので、基本理念を定めた循環型社会形成推進基本法、リサイクル推進の一般的な仕組みを定めた資源有効利用促進法(改正)、廃棄物処理法(改正)、個別品目のリサイクルを進めるための建設リサイクル法、食品リサイクル法、さらにはグリーン購入法などが新たに制定されています。

 

 

資源有効利用促進法 塩ビ管・継手を「特定再利用業種」に指定

  正式名称は「資源の有効な利用の促進に関する法律」。施行期日は平成13年4月1日。
 この法律は、平成3年に制定されたリサイクル法(再生資源の利用の促進に関する法律)を改正したもので、事業者による製品の回収・リサイクル対策を中心としていた旧法を、新たにリデュース、リユース対策を講じることで総合的な資源の有効利用対策に強化することが改正の目的です。

 改正の最大のポイントは、(1)法律の目的の中にリデュース、リユース対策が明記されたこと、(2)それに伴って措置項目が4項目から7項目(特定省資源業種、特定再利用業種、指定省資源化製品、指定再利用促進製品、指定表示製品、指定再資源化製品、指定副産物)に増やされ、対象となる業種、製品の範囲が大幅に拡大されたこと、の2点です。
 塩ビ製品については塩ビ管・継手をはじめとする塩ビ建材について次の措置が取られることとなっています。

  1. 塩ビ管・継手のリサイクルを進めるため、塩ビ管・継手製造業を「特定再利用業種」に指定
  2. 分別回収を進めるため製品に材質表示を義務づける「指定表示製品」として、塩ビ管、塩ビ雨どい、塩ビサッシ、塩ビ床材、塩ビ壁紙の5品目を指定

 特定再利用業種に指定されると、塩ビ管・継手メーカーは製品の製造に際して再生資源をできるだけ利用する義務が課せられ、そのための技術(選別、異物除去)や設備の整備、年度ごとの「利用計画」の作成、利用の状況や品質に関する情報提供などが求められることとなります。
 指定表示製品としては、品目ごとに定められた様式に従って「∞PVC」のマークを表示することになり、これを実施しないと、指導、助言、勧告、公表、場合によっては改善命令が出され、命令に従わない場合は罰則規定も設けられています。


●福田課長補佐の解説

塩ビ管・継手が特定再利用業種に指定されたのは、業界の努力で既にかなりの部分がリサイクルされていることが認められたためだ。リサイクルできない製品なら制度の対象にはできない。従って、塩ビ業界としては今後、塩ビ管・継手だけでなく、それ以外の分野はどうするのかも自主的に考えてほしいし、既に数値目標まで決めて取り組みを進めている紙やガラスのような対応も検討してほしいと考えている。
材質表示については、施行に先立って政令が出される予定で、実施の義務は法律が施行する4月1日から発生するが、命令、罰則が実施されるまでは2年の猶予期間が設けられることになる。但し、これは2年間表示しなくていいという意味ではない。できるだけ速やかに表示を実施して、塩ビはリサイクルできるという姿勢を社会に示していくことが大切だ。
リサイクルに取り組み、不適正に処理されることがないよう管理することで、建設リサイクル法とあいまって塩ビ建材のリサイクルが進んでいくことを期待する。
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建設リサイクル法 塩ビ製建材の自主的対応を要請

  正式名称は「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」。施行期日は解体工事業者の登録等については平成13年5月1日。分別解体および再資源化等の義務については公布の日(平成12年5月31日)から2年以内。
 いわゆるミンチ解体などによって発生量が増大している建設廃棄物は、産業廃棄物の排出量の約2割、最終処分量の約4割、不法投棄量の9割を占めています。
 建設リサイクル法は、こうした建設廃棄物の発生抑制と再資源化を進めるため、建設工事の受注者に一定規模以上の建設工事について分別解体と再資源化を義務づけるものです。発注者に対しても、排出原因者の1人として解体工事や再資源化コストを負担するなどの役割が課せられます。
 分別・再資源化が義務づけられる製品(特定建設資材)は、コンクリート、アスファルト、木材の3品目で、平成22年度までにその95%をリサイクルすることが目標となっています。
 塩ビ製品は特定建設資材に含まれていませんが、今年1月17日に政府が公表した基本方針(特定建設資材に係る分別解体等及び特定建設資材廃棄物の再資源化等の促進等に関する基本方針)では、特定建設資材以外の建設資材についても「できる限り分別解体を実施し、その再資源化を実施することが望ましい」とした上で、建設物の解体の急増に伴い発生が急増すると予想される「廃プラスチック」も、「再資源化施設等が工事現場の近傍にあり、当該施設等に運搬する費用が過大とならないなど、その再資源化が経済性の面において制約が著しくないと認められる場合は、できる限り他の建設資材廃棄物と分別し、当該施設等に運搬するよう努める必要がある」と明記しています。
 特に、塩化ビニル管・継手等については、「製造に携わる者によるリサイクルの取組が行われ始めているため、関係者はできる限りこの取組に協力するよう努める必要がある」としています。
 このように、法律の対象とはなっていないものの、塩ビ製建材についても自主的な対応が求められており、塩化ビニル管・継手協会が現在進めている中間受入施設の整備や都市基盤整備公団と共同のモデル解体(2〜3頁参照)などは、そうした要請に沿った取り組みと言えます。また、プラスチックサッシ工業会も、住宅解体によるプラスチックサッシの排出が始まると想定される平成19年頃を目標にリサイクルシステムの完成を目指して取り組みを進めています。


 ●福田課長補佐の解説

    塩ビ建材のリサイクルについては、行政としても大きな関心を持っている。塩ビ業界からも、塩ビ製品、とりわけ塩ビ管・継手について特定建設資材に指定してほしいと強い要望があったが、検討の結果、量的にコンクリート、アスファルト、木材で建材廃棄物の約8割を占めてしまうこと、この3品目については再資源化施設が桁違いに多いこと、初めてリサイクルに取り組むものに過大な分別を求めるのは現実的に難しいと考えられること、などから今回は塩ビ建材の指定は見送られることとなった。
    ただ、基本方針の中で特定建設資材以外についても分別・再資源化が望ましいと明示されているように、現在、塩ビ業界が自主的に塩ビ管・継手の中間受入施設の建設などを進めていることは歓迎できることだ。基本方針をうまく使ってその輪を広げていってほしい。
    また、特定建設資材の内容は今後随時見直しが行われることになっており、塩ビ管・継手についても中間受入施設を拠点とした回収方式が功を奏して量的にも回るということになれば、政令で追加指定される可能性がある。


グリーン購入法 塩ビ製品の“グリーン指定”へ活動強化

  正式名称は「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律」。施行期日は平成13年4月1日。
 この法律は、国などの公共機関が率先してリサイクル製品やリユース製品などの「環境負荷の低減に資する物品」(環境物品)の購入、およびそれらの製品に関する情報提供に取り組むことで、環境物品への需要の転換を促進し、環境負荷の少ない持続的社会を構築することを目的としています。
 国などの公共機関には国会、各省庁、独立行政法人、裁判所などが含まれ、これらの機関は毎年度作成する「調達方針」に基づいて物品の調達を進めるとともに、調達実績の公表と環境大臣への報告が義務づけられます。また、地方自治体にも努力義務が課せられるほか、事業者・国民も物品購入などの際は「できる限り環境物品を選択するよう努めるものとする」とされています。
 環境物品のうち各機関共通に目標を定めなければならない特定調達品目の具体的なリストについては、政府の特定調達品目検討委員会で、紙類・文具・機器47品目、家電製品・OA機器9品目、資材4品目など101品目が2月2日に閣議決定された基本方針において定められていますが、塩ビ製品としては塩ビ建材などもまだリストに入っていないため、今後リサイクル活動の一層の拡充などにより特定調達品目としての指定を受けるための働きかけを強めていくことが望まれます。


 ●福田課長補佐の解説

    この法律は、グリーンな製品の優先的な購入について国や政府機関が範を示し、自治体や民間にも広めていくことで、リサイクルの出口の部分を手当するものだ。
    特定調達品目は引き続き追加していく方針で、建設資材などについては一部を除き結論が出なかったため、初年度には対象とならないこととなったが次年度以降も見直し、追加が行われることとなっている。ある製品について指定を受けようとする場合、業界自らが自分たちの製品がグリーンであることの具体的、客観的な理由をアピールしていくことが大切だ。国は大枠の基準は決めるが、具体的な品目については実態をいちばんよく知っている業界サイドが判断の材料をどんどん出してほしい。
    その際には、自分の業界だけでなくユーザーの意見も聞いて主張をまとめるべきだと思う。例えば塩ビ建材なら、建設業界と共同でアピールすればその後の普及も進みやすいだろう。
    グリーンであることを説得するのは難しいが、間違いなくグリーンだと言えるのは「リサイクルしていること」「再生資源を使っていること」だ。塩ビ製品の場合、そういう点について業界がもっと世論に訴える努力をしていく必要があると思う。


法律による義務づけを前向きに捉えること

  最後に、法律の施行に当たって事業者が心すべきことについて福田課長補佐の話を伺いました。
 「循環経済社会の構築を目指す理念法である『循環型社会形成推進基本法』において、拡大生産者責任(EPR)の考え方が明確に打ち出された。これは、事業者の責任を『製造製品の品質に対する責任』という限定されたものから、必要と認められるものについては『使用済み製品の回収、リサイクルの責任』というところまで拡大する考え方だ。『基本法』およびこれに基づく個別法の制定により、今後、事業者の責務と役割は大幅に変わることとなるが、何よりも訴えたいのは、法律による義務づけを消極的に捉えず、ぜひ前向きに考えてほしいということだ。制度の対象になったということは、リサイクルできるものだというお墨付きをもらったことを意味する。法律の制定を契機に発生抑制と再資源化の活動を進め、それに関わる情報を積極的に発信してほしい。現場で苦労している業界の方々も同じ気持ちだと思う」