2000年6月 No.33
 

 塩ビのセメント原燃料化技術、実用化に目処。
  塩ビ電線被覆材の高炉原料化にも成功

  成果あいつぐ使用済み塩ビのリサイクル技術開発。新たなリサイクルルート開拓に期待

    使用済み塩ビのリサイクル技術開発に関して、このほど2つの成果があいついでまとまりました。ひとつは塩ビのセメント原燃料化技術の実用性が確認されたこと、そしてもうひとつが塩ビ電線被覆材を高炉原料としてリサイクルする技術開発に成功したこと。いずれも、塩ビのリサイクルに新たなルートを開拓する成果として、業界関係者の期待を集めています。  

1. 塩ビ高濃度混入廃プラスチックのセメント原燃料化技術

塩ビの有効利用を加速する国内初の試み

  使用済み塩ビをセメントの原料および燃料の一部に代替しようというこの技術は、高炉原料化と並んで、塩ビの有効利用に大きな進展をもたらすことが期待されるフィードストックリサイクルのひとつです。
 技術開発は、(株)トクヤマと(社)プラスチック処理促進協会、VECおよび当協議会の4者の共同プロジェクトとして平成10年5月からスタートしており、次の3つの技術の確立をめざして、トクヤマの徳山製造所東工場において様々な実験、研究が重ねられてきました。
(1)塩ビを粉砕・熱分解して塩化水素を分離する脱塩化水素技術
(2)残りの脱塩化水素樹脂をセメント製造の燃料および原料として再利用する原燃料化技術
(3)分離した塩化水素を塩酸として回収し、塩ビモノマーの原料として再利用するオキシ塩素化原料技術

 産廃系の高濃度塩ビから塩化水素を分離し、その塩ビ残渣をセメントの原燃料として再利用するのは国内初の試みです。また、回収した塩酸を再び塩ビモノマーの原料に利用するオキシ塩素化原料技術も、塩ビのフィードストックリサイクルを完結する上で画期的な意味を持つものと言えます。

 

回収塩酸の精製技術研究を継続

  プロジェクトチームでは、はじめに小型ロータリーキルンでの基礎実験を行った後、昨年7月から(株)トクヤマが建設した実証プラント(処理能力年間500トン)により、硬質・軟質両方の塩ビ製品(農ビ、パイプ、シート、壁紙、電線被覆材等)を用いて実証試験に着手。各製品ごとの効率的な脱塩化水素技術や、セメント原燃料化としての残渣の適性、回収塩酸の成分分析などについて種々のデータ採取を続けてきました。
 その結果、前記(3)のオキシ塩素化原料技術の開発を除く2つのテーマについては予定どおり初期の目的を達成して、この3月で試験を終了。塩化水素の分離〜残渣のセメント原燃料化に至る一連の技術が、基本的に実用化可能なものであることが確認されました。
 残るオキシ塩素化原料技術については、今年9月末まで期間を延長して、回収塩酸の精製技術確立のための実験などを継続することになっており、その作業が終わった時点で、改めてプロセス全体の評価が行われる予定です。
 塩ビのセメント原燃料化については、塩ビ製品の種類によって残渣の成分組成も異なるため、原料となる塩ビの種類・量の調整が必要であること、あるいは、製品の組成によって上下する前処理コストを安定させるための経済的システムの構築など、今後さらに検討を要する課題も残されていますが、今回、技術的な実用性が実証されたことは、塩ビのリサイクルにとって待望の前進と言えます。

 

2. (社)電線総合技術センター(JECTEC)の塩ビ電線被膜材燃料化技術

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要素技術の目標値は全てクリア

  一方、塩ビ電線被覆材の燃料化技術は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からの共同研究として、JECTECが平成10年8月から今年3月までおよそ1年半にわたって開発に取り組んだもので、VECも研究費の一部について助成を行ってきました。
 塩ビ電線被覆材については、高度経済成長期以降に敷設された電線が本格的な更新期を迎えつつあることから、今後、その廃棄量の増加が見込まれています。
 JECTECの研究は、こうした予測に基づいて使用済み電線被覆材を高炉原料として再利用することの可能性評価並びに燃料油化、固形燃料化の要素技術開発も実施されました。
 電線被覆材燃料化に関する研究テーマは、
(1)塩化水素、鉛の挙動の研究
(2)塩化水素、鉛、銅の除去技術の開発
(3)造粒物性の研究

 以上の3項目で、このうち(2)については、具体的な目標値(銅0.2%以下、塩素分5%以下、鉛0.3%以下)を定めた上で開発が進められましたが、最終的にすべての項目で目標値が達成され、塩ビ被覆材が高炉原料として問題なく再利用できること、また、燃料油、固形燃料としても十分利用できることが明らかになりました。

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塩ビ電線被覆材の有効利用を実証

  開発に当たってJECTECでは、平成10年度に脱塩化水素実験などの基礎研究を実施。翌11年度には、この基礎研究の結果をベースに、塩ビ電線被覆材の最適脱塩化水素条件と造粒条件などを把握するため、NKK京浜製鉄所に試験を外注して2回にわたって高炉投入実験を行いました。
 このうち、年間1万2,000トン処理を想定した1回目の実験では、脱塩化水素の塩ビ電線被覆材を1時間当たり1〜1.5トンの量で5時間連続投入し、投入前後において銑鉄、スラグ、排水などの分析を行いましたが変化は見られず、2回目に行った2万トン処理想定の投入実験でも全く問題なく高炉原料として電線被覆材を使用できるとの結果が得られています。
 このほかJECTECでは、高炉原料化に備えて、電線被覆材から銅を0.2%以下まで連続除去できる日本最大級の一貫システム(処理能力1時間当たり約1トン)も開発しており、これらの技術の総合により電線被覆材のリサイクルが加速すれば、現在埋立処理されている廃電線被覆材の有効利用に大きな可能性が開かれることとなります。

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