2000年6月 No.33
 

 塩ビの高炉原料化技術、実用化へ最終段階

  世界初の試み。NKK京浜製鉄所で実用化実証プラント(年間5,000トン)が竣工

    日本鋼管(株)(NKK)と(社)プラスチック処理促進協会、および塩ビ工業・環境協会(VEC)の3者は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成を受け、塩ビの高炉原料化リサイクルの技術開発を進めています。このほど、実用化に向けて最終的検討を行うための設備(実用化実証プラント)が川崎市のNKK京浜製鉄所内に完成し、4月13日には同製鉄所においてその竣工式が開催されました。この技術開発は世界でも初めての画期的試みであり、4月中旬から使用済み塩ビ製品を対象に本格的な運転を開始しています。業界の期待を集める塩ビリサイクルの新技術は、実用化へ向け最終段階に入りました。  

塩化水素もリサイクル

  塩ビ業界は、循環型経済社会の実現をめざして、リサイクル拠点の整備をはじめ、各種リサイクル技術の開発、用途開発、実用化を積極的に進めています。
 塩ビの高炉原料化リサイクル技術は、そうした活動のひとつとして平成9年8月からNKK、(社)プラスチック処理促進協会、当協議会の3者の共同研究としてスタートしたもので、塩ビ100%までの高濃度使用済み塩ビの高炉利用をめざす世界初の試みです。平成10年4月には試験設備をNKK京浜製鉄所内に設置して性能の確認および評価を行い、良好な結果を得て基礎的な技術を確立しています。
 このほど完成した実用化実証プラントは、塩ビから効率よく脱塩素を行い、脱塩素物をコークス代替の高炉原料として使用するシステムで、処理能力は年間5,000トン。また、脱塩素時に発生する塩化水素も塩酸として回収しリサイクルすることを目標に設計、製造されており、今後、以下の項目を中心に技術の確立を進めていきます。
(1)高濃度塩ビからの脱塩素技術、高炉原料化技術の確立
(2)高純度塩酸の回収・利用実用化技術の確立
(3)一貫設備(破砕・造粒、脱塩素、高炉原料化、塩酸回収、高炉吹き込み等の一連の工程を行う諸設備)による連続操業技術の確立
(4)塩ビ濃度の変動に対応した安定操業技術の確立

 さらに、これらの試験結果から、実用化の評価を行い、平成13年4月以降は、実用プラントとしての運転も視野に入れ、技術の完成を期す計画です。

 

塩ビ高炉原料化に行政からも高い期待

  4月13日に行われたプラントの竣工式には、NKKの半明副社長ら関係業界の代表をはじめ、通産省鉄鋼課の板谷憲次室長、厚生省産業廃棄物対策室の勝又勝行室長補佐、NEDO環境技術開発室の菅原彰室長などおよそ100人が参列。神前に玉串を奉納して、研究の順調な進展を祈念しました。また、板谷室長は挨拶の中で「たいへん優れた設備だ。平成13年度からの実用化をめざしていることに期待する」と述べられ、塩ビの高炉原料化技術に対して行政からも注目が高まっていることを印象づけました。