2000年3月 No.32
 

 特集・塩ビ建材のリサイクル

 

2.本格化する塩ビ窓枠のリサイクル

優れた断熱効果で需要拡大中

  塩ビ窓枠は1950年頃ドイツで開発され、以後、省エネ先進地である欧米各国の一般家屋において急速な普及を遂げてきました。現在、米国では一戸建住宅の総窓枠需要の約40%、ドイツでは既に50%を上回る普及率に達しています。
 日本の場合は、25年ほど前に塩ビメーカーにより技術導入されてから製品開発が進められてきましたが、途中からはサッシメーカーも参入して、北海道、東北などの寒冷地を中心に普及が進んでいます。特に北海道では、新築住宅のほぼ全てに塩ビ窓枠が使われているという状況になっています。
 塩ビ窓枠の最大の長所は、その優れた断熱効果にあります。アルミサッシに比べ熱伝導率1,000分の1という高い断熱性が確保できるため、外気温がマイナス10℃、室内温度が20℃の条件でも、ほとんど結露することがありません。このほか防音効果や気密性などの点でも他の窓枠を上回っています。
 また、多様なプラスチックの中から素材として塩ビが選ばれたのは、断熱性はもとより、成形性や耐候性、自己消火性などに優れる上、コスト面でも有利なためです。
 日本での塩ビ窓枠の需要は、平成10年の実績で150万窓あまり(レジン換算で3万トン)と、全体の6〜7%程度に過ぎませんが、昨年3月に告示された次世代省エネ基準などを追い風に、関東以南も含めて採用地は全国に広がりつつあります。
 塩ビ窓枠は、これから大きな伸びが期待できる製品と言えます。

 

時代を先取りしてリサイクル体制づくり

  こうした中、塩ビ業界ではこの2年ほど、建材リサイクルに向けた建設省の動きに合わせ、塩ビ工業・環境協会(VEC)とプラスチックサッシ工業会(鐘淵化学工業、トクヤマ、メルツェン、大信工業、北海道積水工業、旭硝子の関連6社で構成)、および日本サッシ協会(大手サッシメーカーの団体)が協力して、リサイクルの在り方について検討を続けてきました。その結果、昨年10月には塩ビ窓枠のリサイクルを積極的に推進することになりました。
 前述のとおり塩ビ窓枠は、日本における歴史がまだ25年程度なのに対して、30年を超える寿命を有しています。このため、現時点での排出量はごく少量に過ぎませんが、2007年以降は200トン程度の塩ビ窓枠が家屋の解体等から排出されるものと予測されています。
 塩ビ業界が窓枠のリサイクルに取り組むことを決定したのは、こうした予測に基づき、行政の動向をも先取りして早期に体制を整えておかなければならないという判断に基づいています。
 

 

“窓枠から窓枠へ”を基本に

  塩ビ窓枠のリサイクルを進める上でまず問題となるのは、回収した窓枠をどう再利用するかという用途開発の問題です。塩ビ窓枠の場合、同じ硬質塩ビ製品である塩ビ管に再生することも技術的には十分に可能ですが、循環型社会の本来の姿という意味では“窓枠から窓枠へ”のマテリアルリサイクルが理想の形と言えます。
 このため、VEC、プラスチックサッシ工業会、日本サッシ協会の3者は、使用済みの窓枠を解体した後、樹脂部分を粉砕、ペレット化し、バージンレジンを加えて再び塩ビ窓枠に加工するという方法を検討しており、既に実験によってその可能性も確認されています。塩ビ窓枠は30年経っても表面だけしか劣化しないため、新しいレジンを加えれば同じ窓枠として再生することができます。
 また、微細な不純物が混入している場合などに備えて、二層押出し成形する製品などでは、一層目にバージン製品、二層目にリサイクル材を使うという研究も進めており、その製品も完成しています。このほか、窓枠の部材(ガラス押さえ)などに利用する方法も一部実施されています。

 

北海道・東北に回収・リサイクル拠点

  一方、回収・リサイクルの拠点としては、「まず当面の回収レベルに対応すること」を前提に、プラスチックサッシ工業会の会員会社の協力を得て、北海道の恵庭市(北海道カネカ(株))、岩見沢市(北海道積水工業(株)の岩見沢工場)、岩手県の花巻市((株)トクヤマの花巻工場)の3拠点を確保しています。
 拠点づくりについては日本サッシ協会も積極的な姿勢を示しており、近いうちに6〜9拠点に増えるものと予想されます。また、拠点づくりを進める上では自治体との連携も重要な要素で、恵庭市のケースなどでは、もともと環境問題に熱心な同市が行政として塩ビ業界の取り組みに理解を示してくれたことが大きな力となっています。
 回収方法としては、各地の解体業者と協力して、持ち込み方式で処理を有料で請け負うという方法が考えられています。各地の解体業者の実態や選定については現在検討中です。

 

材質表示も義務化の方向

  回収に付随して問題となるのは、メーカーそれぞれで原料の配合割合などに違いがあるため、他社の製品が持ち込まれた場合どう対応するかということです。
 この問題については、引き取った他社の使用済み窓枠を自社製品と交換し合うという案も出ていますが、他社のものを混ぜてリサイクルしても問題のないことを技術的な実験をして確認しています。
 なお、塩ビ窓枠については産業構造審議会の「業種別廃棄物処理・リサイクルガイドライン」に基づき、材質表示が義務づけられる方向です。