ECVMのジャン ・ピエール ・デグレブ氏は、『EUにおける塩ビの多角的な検討』と題してヨーロッパでの塩ビ市場の概況や、塩ビを取り巻く行政環境などを解説。特に現在の最大の動きとしてEU委員会の主宰で進められている塩ビに関する網羅的・横断的な調査(PVC Horizontal Initiative)の問題を取り上げ、その詳細を報告しています。
この調査は、塩ビ素材、原料段階から、消費段階、最終(廃棄)段階に至るまでの幅広い分野にわたって塩ビの全体像を見極めようというもので、EU委員会の各局(環境局、経済局など)が独立系調査機関に委託する形で作業が進められています。
現在委託されている研究テーマはすべて塩ビ廃棄物の管理に関するもので、具体的には次の5項目。
(1)焼却炉から出る排ガス中残留物の量と有害性に対する塩ビの影響(委託先はフランスのBERTIN社)
(2)埋立地における塩ビの挙動(委託先はドイツのARGUS社)
(3)塩ビ含有量の多い廃プラスチックのケミカル(フィードストック)・リサイクル(委託先はオランダのTNO社)
(4)塩ビ廃棄物の管理に関する経済的評価。特に都市ごみから塩ビを分離した場合の財政的影響(委託先はイギリスのAEA Techn.社)
(5)塩ビのメカニカル・リサイクルの研究(委託先はスイスのPROGNOS社)
興味深いのは、研究テーマの中にダイオキシン問題が上げられていないことで、「ヨーロッパにおいては既に塩ビと関係づけられたダイオキシンの問題は課題となっていない」ことが分かります。
デグレブ氏は「この調査が最終的にどうのような結果に結びつくのか、例えば提言のような形になるかどうかは分からないが、調査結果が報告されることで、ヨーロッパでは今年末までに塩ビに対する理解が非常に深まってくると思われる」と予測しています。
なお、上記の研究項目のうち埋立地における塩ビの挙動については、ECVM独自でも既に3年前から大学の研究機関に依頼して調査を実施しており、つい最近、「塩ビが環境に対して深刻な影響を及ぼすことはない」とする最初の報告がまとめられたばかりとのことです。
また、塩ビのフィードストックリサイクルについても、塩ビ含有量の多い廃プラスチックの利用についてECVMでは2年前に調査を開始しており、既に導入する技術の選定も終了して、今年末か来年早々にはそのパイロットプラントが立ち上がる予定となっています。