1998年9月 No.26
 

 塩ビの再利用へ、新技術開発進む

  トクヤマと共同でセメント原燃料化、電線総合技術センターには4,000万円の資金援助

 

    NKKとの高炉原料化の研究のほかにも、最近になって塩ビを再利用するための有望な技術開発がいくつか緒についています。「多面的なリサイクル技術の構築」へ向けた最近の塩ビ業界の動きをご紹介します。  

 

セメント原燃料化の実証設備建設へ

  セメントメーカーの(株)トクヤマと塩ビ工業・環境協会(VEC)および当協議会は、この5月から、塩ビ混入廃プラスチックをセメント原燃料として再利用するシステムの共同開発に着手しました。
  トクヤマでは3年前から、廃プラスチックを石炭の代わりにセメント原料として利用する取り組みを進めていますが、塩ビについては塩化水素がセメントキルンの運転や製品の品質に影響を与える懸念があるため対象外となっていたもので、このシステムが完成すれば、高炉原料化と並んで塩ビのリサイクルにとって有力な切り札となることが期待されます。また、今回の技術開発は、産廃系の高濃度塩ビ廃棄物だけでなく、塩ビ混入率の低い都市ごみ系の廃プラまでを処理対象とするもので、実証試験終了後は、2000年4月からスタートする「その他プラスチック」を含む容器包装リサイクル法の本格施行への対応を含め、具体的な事業化の検討に入る計画です。
  共同開発の内容は、(1)塩ビ混入廃プラスチックの脱塩化水素技術(廃プラを加熱して塩化水素を除去した後、粉砕してセメント炉で原燃料にする)(2)塩化水素の再利用技術(塩酸として回収し塩ビ原料にリサイクルする)の2項目で、既に5月から小規模設備での基礎検討が先行スタートしています(来年3月まで)。さらに、9月からはトクヤマの東工場敷地内に年間500トン規模の実証設備の建設に入り、来年6月以降各種の試験を行った後、10月にはその結果がまとめられる予定。
  トクヤマでは、現在セメント原燃料として年間60万トンの石炭を使用していますが、一連の技術開発により当面はその20%、将来的には50%までを塩ビを含む廃プラスチックで代替することを検討しています。

 

2年かけて塩ビ電線被覆の燃料化実験

  一方、塩ビ系電線被覆材の再利用でも新しい動きが見られます。去る6月塩ビ工業・環境協会は、(社)電線総合技術センター(会長:原清二日立電線社長、電線メーカー72社で構成)が行う塩ビ系電線被覆廃材の再利用技術開発に対し、4,000万円の資金提供を行うことを決定しました。
  自己消火性や耐久性に優れる塩ビは、電線被覆材としても欠かせない素材で、現在年間約20万トン強の塩ビ樹脂が使用されています。塩ビ系電線被覆材の年間排出量は約12万トンで、既にその35%程度が床材などにマテリアルリサイクルされていますが、今後、使用済みの廃電線の増加が予想されるため、塩ビ業界として多面的なリサイクル技術の構築が課題となっています。
  今回の資金提供は、従来からプラスチック製電線被覆材の燃料化に取り組んでいる電線総合技術センターが、新たに塩ビ系電線被覆材を対象とした燃料化の技術開発に着手することを受け、「多面的なリサイクル技術の構築」という課題に対応する上でも、同センターへの支援が必要との判断から決定されたものです。
  同センターでは、この夏から2年をかけて、(1)塩ビ系廃電線被覆材の脱塩化水素、(2)塩ビ系廃電線被覆材からの銅などの分離除去、(3)脱塩化水素した残渣の造粒・燃料化、の3点について技術開発に取り組む計画です。