1998年9月 No.26
 

 『廃塩ビの高炉原料化』で実証試験終了

  脱塩化水素技術など実用化に見通し、「年間二万トン」処理の検討

 

    日本鋼管株式会社(NKK)と当協議会、および(社)プラスチック処理促進協会の3者が共同で進めている廃塩ビの高炉原料化のための実証試験が、7月末で終了しました。今回の試験では、焦点となる脱塩化水素技術をはじめ、造粒〜吹き込み技術まで、問題なく廃塩ビを高炉原料として利用できることが確認されており、この秋にはその報告書もまとめられる予定。年間2万トンの処理に向けて検討中。  

試験プラントで基礎試験

  廃塩ビの高炉原料化は、製鉄用の還元剤として用いられるコークスの一部を塩ビで代替する技術で、塩ビのリサイクルを飛躍的に高めるばかりでなく、ダイオキシン対策、さらにはコークスの省資源、二酸化炭素の削減など、地球環境への貢献という点でも画期的な効果が期待されています。
  NKKでは、既に塩ビを除く産廃系廃プラスチックについて年間3万トン規模の原料化システムを実用化していますが、塩ビについては、別途当協議会との共同研究が進められており、今年3月からは、川崎市のNKK京浜製鉄所に建設された試験プラント(処理能力年間1,000トン)を用いて、廃塩ビを高炉原料化する上での大前提となる脱塩化水素技術を中心に、脱塩化水素後の造粒技術、高炉への吹き込み技術などに関する実証試験が行われてきました。
  塩ビを含む廃プラスチックの高炉原料化の事例と塩ビを含む廃プラスチックの高炉原料化の事例としては、塩ビ混入率の低い都市ごみ系廃プラを対象としたドイツの取り組みが知られていますが(処理量は現在約18万トン)、最大100%までの高濃度塩ビ廃棄物を対象とする取り組みは、文字通り世界に例のない試みと言えます。

 

2010年までに100万トン処理の計画

  NKKと当協議会は現在、報告書の作成へ向けて実験結果の詳細を解析中ですが、脱塩化水素技術については、今回の試験に先立ってNKK福山製鉄所で行われた小規模施設による基礎試験と同様の結果が得られており、100%近い効率で塩化水素を除去できることが実証されています。脱塩化水素後の塩ビの造粒技術や高炉吹き込み技術にも全く問題は出ていません。
  また、NKKと塩ビ業界は、試験の終了を受けて、また、NKKと塩ビ業界は試験の終了を受けて、事業化のためのマーケティング(高炉原料として排出される塩ビの量や品質などに関する調査)、処理費・設備費に関する調査をスタートしたところで、これらの作業を終了した後、年間2万トン処理のフィージビリティ・スタディ(実用化への検討)の検討に入る予定。これが実現すれば、塩ビ以外の3万トンと合わせて、年間5万トンの廃プラスチックが高炉原料に利用されることになります。今後NKK以外の鉄鋼メーカーの参入が進めば、処理量は飛躍的に拡大していくことが予想され、日本鉄鋼連盟は2010年までに100万トンの廃プラを高炉原料として利用する計画を打ち出しています。