1998年6月 No.25
 
運転開始、塩ビの高炉原料化試験プラント

 <塩ビ廃棄物1,000トン(年間)規模の高炉原料化テスト、経過は順調>

 

  NKKと当協議会および(社)プラスチック処理促進協会の3者が昨年9月から共同で建設を進めてきた、塩ビの高炉原料化のための試験プラントが、去る3月26日、川崎市のNKK京浜製鉄所において運転を開始。4月27日には、塩ビ業界関係者およそ100名が現地を訪れ、プラントの稼働状況を見学してきました。

■ 総合的な廃プラリサイクルへ最終段階

 
  製鉄用の還元剤として用いられるコークスの一部を塩ビで代替する高炉原料化技術は、塩ビのリサイクル、さらには塩化水素の有効利用に大きく道を開くものとして、全業界関係者から熱い期待が寄せられています。NKKでは既に塩ビを除く産廃系廃プラスチックについて、年間3万トン規模の原料化システムを実用化していますが、塩化水素による設備への影響などの懸念から対象外となっていた塩ビについて実用化の試験がスタートしたことは、廃プラスチックの総合的なリサイクルへ向け最終的な準備段階に入ったことを意味します。
  特に今回の試験プラントは、最大で100%までの高濃度塩ビ廃棄物を対象とする、文字どおり世界初の試み。処理量は年間1,000トンで、プラントは前処理工程となる脱塩化水素設備と高炉本体の2つのパートからなっていますが、中でも、塩ビを高炉原料化する上で大前提と言える脱塩化水素技術の確立は、今回の試験の最大のポイントとなっています。
 

■ 回収塩酸の再利用でも好データ

 
  廃塩ビと副原料をロータリーキルンに投入、熱分解で塩化水素を取り除いた後、造粒して、羽口と呼ばれる吹き込み口から他の廃プラ原料とともに高炉に吹き込みます(下図参照)。この時、2,000℃以上の高温と還元状態での処理によりダイオキシンなど有害物質の発生を完全に防止できる点もこの技術の大きな特徴です。
  一方、熱分解で発生した塩化水素は、塩酸として回収した後、製鉄所の薄板酸洗ライン用塩酸とするほか、各種の化学製品の原料として再利用することを目指して研究を進めています。
  NKKの担当者によれば、運転開始から約1ヵ月を経過した時点での状況は、「脱塩化水素後の塩ビの造粒技術や高炉吹き込み技術、塩酸の回収も順調で、良好なデータが集まっている」とのことでした。この試験結果については、7月に報告書が取りまとめられますが、NKKではこれらの結果を踏まえて実用プラントの建設を検討する計画です。