1998年3月 No.24
 
塩ビ環境協会の設立に当たって
 

  

 

 会長 金川 千尋氏 

 環境問題に対応する塩ビ業界の専門組織、塩ビ環境協会の設立に当たって、会長としての所信の一端を申し述べます。
 世の中に存在するものは、我々の社会あるいは環境に対して何らかの貢献をしていると同時に、その社会・環境に負荷を与えています。従って、あるものの存在が社会的に許容されるのは、両者のバランスを適正に評価した上でのことでなければなりません。
 塩ビに対する昨今の批判的な動きは、このような意味で一方的なものであり、著しくバランス感覚を欠いたものであると言わざるを得ません。こうした状況を改善し、塩ビが社会と共存していくためには、問題の解決へ向けての具体的な行動と、そうした行動に裏付けられた適正な情報を提供し続けていくことが必須条件であります。
 塩ビ環境協会は今後、このような認識に立って、塩ビが社会的に求められている責任を果たすための諸活動、および情報提供活動を積極的に進めてまいります。
 具体的な活動のテーマとしては、まずダイオキシン問題への対応があります。ダイオキシンは、極めて多様な物質の焼却過程から発生し、塩ビがダイオキシン発生の主要原因とは考えられません。ダイオキシンの発生量を抑制するためには、焼却技術の見直しと、それを可能にする焼却設備の改善こそ急務であり、我が国においては昨年、廃掃法の改正で諸基準が明確にされたことから設備の改善も進み、ダイオキシン発生の抑制は今後大きく前進するものと期待されます。当協会は、この実施の推移を見守るとともに、関係諸官庁と連携し、協会としてなすべきことを直ちに実施します。
 塩ビのリサイクルについては、一般廃棄物、産業廃棄物それぞれについて、これまでの業界の取り組み(高炉還元剤としての利用や農ビ、パイプ等のリサイクルなど)を継続・拡大するとともに、脱塩化水素技術をはじめとする塩ビ系廃棄物の有効利用のための研究を推進します。
 また、CO2発生の抑制、石油資源の節減、森林資源の保護など、地球環境・社会に対する塩ビの貢献についても、塩ビへの正しい理解を得るため積極的に広報活動を展開していく計画です。
 以上、塩ビ環境協会の今後の活動に対し、皆様のご理解とご協力をたまわりますようお願い申し上げます。
 

 

プロフィール 金川 千尋(かながわ ちひろ)
大正15年、東京生まれ。昭和25年、東京大学法学部卒。同年、極東物産?(現三井物産)入社。昭和37年、信越化学工業?入社。海外事業本部長、常務取締役、専務取締役、代表取締役副社長などを経て、平成2年代表取締役社長に就任。シンテック・インコーポレイテッド社長兼任。米国テキサス州名誉州民、同州ヒューストン市名誉市民。平成4年、藍綬褒賞受章、同5年、毎日経済人賞受賞。