1997年12月 No.23
硬質塩ビ板製品(1)−高衝撃塩ビ板
鉄よりも強く、アルミよりも軽い、21世紀の新素材。
新幹線や飛行機でも大活躍
新幹線には乗客の安全を守るために様々な技術が利用されていますが、今回取り上げる高衝撃塩ビ板もそのひとつ。鉄にも劣らぬ衝撃強度を持つ硬質塩ビ板の新素材、高衝撃塩ビ板って何?
● 硬質塩ビ板から生まれた注目の新製品
塩ビ製品には可塑剤を加えて軟らかくした軟質塩ビと、可塑剤を使わない硬質塩ビの2つがあります。硬質塩ビ板とは、文字どおり硬質塩ビを板状に加工した製品で、その性状の違いから波板、平板、フィルム・シート(厚さ0.8ミリ以下)に分けられるほか、用途別では、化学装置のダクトやコンピュータの半導体装置などに使われる工業用と、看板や文具、照明器具のカバーなどに使われる一般用に大別されるのが普通です。
硬質塩ビ板製品が日本に登場したのは、昭和30年代はじめのことで、宣伝広告用の看板を皮切りに、加工性の良さ、優れた耐薬品性と自己消化性(熱に強い)など多彩な機能を背景に、40年間で飛躍的な発展を遂げてきました。
その一方で技術開発も進み、ここ20年ほど従来の硬質塩ビ板とは異なる新しい製品が注目を集めています。21世紀の文化と文明を担う新素材。それが今回ご紹介する高衝撃塩ビ板です。
● パソコンのキャビネットや医療機器も
一般の塩ビ板製品に比べて約20倍、鉄やFRP(繊維強化プラスチック)に勝るとも劣らない衝撃強度。これが高衝撃塩ビ板の最大の特徴です。また、アルミニウムや一般鋼をしのぐ軽量性、真空成型(真空状態の中で気圧差を利用して成型する工法)も可能な加工性の良さなども、忘れてはならない特性と言えます。
高衝撃塩ビ板の用途として最もおなじみなのは、航空機や新幹線、そして一般車輛などの内装の分野でしょう。新幹線に乗って身の回りを見回してみれば、座席テーブルやひじ掛け、窓枠、背ずりの部分など、至るところで高衝撃塩ビ板が活躍しているのを発見できるはずです。もちろん、いま話題の長野新幹線も同様。こうした強度と軽量性を要求される分野でこそ、高衝撃塩ビ板は最も良く本来の特性を発揮します。
また、パソコンなど電子機器のキャビネットや医療機器(血液検査用医療機など)にも、高衝撃塩ビ板は欠かせません。これは真空成型で型しろが要らず、小ロット生産やモデルチェンジなど多様性が求められる製品に対応できるためです。このほか、火災や汚れに強く耐久性に優れていることから、多目的ホールの椅子や家庭用ユニット浴室の部材としても重宝されています。
高衝撃塩ビ板の需要は年間6千トン強、硬質塩ビ板全体の1割〜1割5分程度ですが、トップメーカーである筒中プラスチック工業株式会社の河尻重英第一営業本部長は「機能とコストとのバランスが取れた高衝撃塩ビ板は、日常生活に欠かせない素材として確固たる地位を確立しており、今後も安定した需要の伸びが期待できる」と話しています。