1997年9月 No.22
塩ビ床材
−経済的で優れた加工性とデザイン性、農ビのリサイクルにも貢献
今回のテーマは塩ビ床材。インテリアの基本“足元の快適さ"を守る床材の分野でも塩ビは大活躍。
● タイルとシートの2種類
塩ビ床材には大きく分けてタイルとシートの2種類があります。塩ビタイルは30.3cm角や45cm角などの正方形で、文字どおりタイルのように貼り詰めて床を保護、装飾するもの。塩ビシートは一般には幅1.82mの長尺の製品で、切れ目なく床一面に敷き詰められるのが長所です。
塩ビ床材は、他の塩ビ製品と同様、もともとはアメリカ生まれの製品。開発はタイルのほうが一足早く、日本にも昭和30年代後半には技術導入されています。塩ビ床材のトップ・メーカー、東リ株式会社(本社=兵庫県伊丹市)が我が国初の塩ビタイルを発売したのは昭和38年のことでした。
その後、昭和40年代中頃になると製造技術の発達で長尺の塩ビシートも登場、日本独自の技術改良も進み、その中から、発泡塩ビ層の上にグラビア印刷された塩ビ層を重ねたクッションフロアといったファッション性に富んだ床材がヒット商品として誕生します。
一方、ここ10年前からヒットしている話題の製品がタイルカーペット。主にナイロン繊維の裏面に50cm角の塩ビを貼り合わせた、この全く新しいタイプの床材は、一般のカーペットに劣らない歩行感の良さ、寸法の安定性、貼り替えの手軽さなどを理由に急成長を続け、一躍カーペット市場の主役に躍り出ました。
● コストと機能のバランスが取れた素材
塩ビ床材の市場占有率は、天然材の床材(石・木材等)を除けばほぼ100%。最近は合成樹脂系の床材としてポリオレフィン系の製品も開発されてはいますが、1.加工性が良い、2.強度があり傷つきにくい、3.意匠性・デザイン性に優れ鮮やかな彩色が可能、4.燃えにくい、5.価格が安い、さらには6.環境に良い水系の接着剤にも適合するといった多彩な特性は、まさに塩ビならではのもの。また、農ビのリサイクルなどに大きく貢献している点も塩ビ床材の見逃せない要素と言えます。
「塩ビは環境問題などで批判の矢面に立たされているが、今後焼却技術とリサイクルの研究がより一層進めば、これほど付加価値が高く、コストと機能のバランスがとれた素材は他に考えられない」と塩ビの有用性を評価するのは、東リCS推進室の宮宇地信喜室長。
平成8年度の塩ビ床材の需要は6450万m2(但し、タイルカーペットは統計上「カーペット」に分類されるためこの数字には含まれない)。うち塩ビシート4750万m2、塩ビタイル1700万m2となっており、今後も6千万m2半ばのラインで安定的に推移していくものと予想されます。また、宮宇地室長は「一般家屋の分野では自然志向でフローリングが流行っているが、塩ビ床材でも視覚的に自然感を残した製品開発に力を注いでいる。今後さらに塩ビで木質なみの触感が表現できれば、必ずフローリングを超えるヒット商品になるはずだ」と、将来の新製品開発の可能性にも強い意欲をみせています。