この技術の注目すべき点は、廃プラのリサイクル手法として環境的に非常に優れた利点を備えていることです。2,000℃を超える高温下でプラスチックを処理すると、すべての化学結合が分解してダイオキシンやフロンなど有害物質の生成を排除できることが、ベルリン工科大学を初めとする公的研究機関が行った実験で確認されており、塩ビが混ざっていても全く問題はないとされています。
DSD(包装廃材のリサイクル機関)が回収する廃プラの中には2%程度の塩ビが混入していると考えられていますが、ブレーメン市の監督官庁が実施した測定結果では、ダイオキシンの値も法規制の1万分の1以下となっており、連邦環境省も「高炉を用いたリサイクルプロセスは環境的に有意義で、焼却処理に比べて鼻ひとつ先を行っている」と高い評価を寄せています。
● 処理コストは油化の3分の1
コスト面でも大きな魅力を持っています。SBGでは95年から日量230トンの処理を市の環境委員会から許可されて高炉での利用を行っていますが、1トンの銑鉄を製造するのに必要とされる重油100sの30%を廃プラで代替しているとのことです。また、既存の高炉を利用できるため、その分のコストを大幅に削減できることも魅力のひとつです。
一方、廃プラの処理を委託するDSDにとっても、トン当たりの処理コストが200マルク(1万3,000円)と、油化に比べて2分の1から3分の1程度で済む高炉利用は、まさに願ってもない福音と言えます。
DSDでは、マテリアルリサイクルの進展が難航していることもあって、昨年まで油化による廃プラ問題の解決に大きな期待をかけてきました。しかし、高炉利用技術の開発でこの方針を転換、鉄鋼メーカーへの廃プラ供給を優先したために、年間30万トン規模の油化プラント導入を計画していたBASF社が、予定量の廃プラ供給を受けられず、計画の断念を余儀なくされるという事態も見られました。
● 日本でもNKKのシステムが稼動予定
こうした中、ドイツでは他の鉄鋼メーカーも相次いで廃プラの高炉利用に参入する動きを見せており、現時点では鉄鋼の6社のうち既に4社までが具体的な計画を決定しています。95年の高炉利用による処理実績は5万トンとなっていますが(別表参照)、96年以降、この数字が一挙に拡大していくことはほぼ確実と見られます。
以上のように、ドイツの廃プラリサイクルは、今後高炉利用へ向け大きくシフトしていくことが予想されます。日本でも、NKKが総工費15億円をかけて開発した同様の高炉利用システムが、10月から同社の京浜製鉄所で稼動を予定しているなど、これまでリサイクルが難しいとされてきたプラスチック廃棄物に、いま世界の鉄鋼業界から熱い眼差しが注がれています。