1996年6月 No.17
 

 塩ビボトルリサイクルワーキンググループの最新動向

  塩ビとPETの静電分離技術開発に見通し――再生用途開発でも新たな成果

 

    塩ビとPETを高純度で分離する「静電分離技術」の可能性を確認する一方、再生用途の開発でも新たな2種類のモデル製品が誕生――。
 取り組みが進む塩ビボトルリサイクルワーキンググループ(以下、WG)の最新動向をレポートします。
 

 

99.99%の高純度で塩ビとPETを分離――静電分離技術

  塩ビボトルリサイクルWGでは、現在全国の醤油メーカーやボトルメーカー14社の協力を得て、塩ビ製醤油ボトル(工場から出る充填不良のボトルやユーザーから返却される賞味期限切れボトル)の回収と分離精製技術開発、用途開発のモデル事業に取り組んでいます。
  この14社には、同WGが開発した塩ビボトルの減容機『ボトル・ボーイ』が設置されており、ここで粉砕・減容処理されたボトルフレークを回収して、鐘淵化学工業株式会社の大阪工場(大阪府摂津市)にある再資源化設備によって分離精製を行っています。
  分離精製では、塩ビと比重差の大きいポリエチレン、ポリプロピレン(ボトルの蓋に使用されている)は比重分離により除去できるものの、回収時に混入するPETボトルのフレークは塩ビと比重が近く、分離ができません。そのため、全量を簡易検査で混入チェックしており、この分離方法の開発が塩ビボトルの再生技術として大きなテーマになっていました。
  今回のご紹介する静電分離技術は、こうした問題を解消し、比重では分離できない塩ビ/PETをより効率的に分離する技術で、センコー工業株式会社(本社:東京都千代田区神保町1−44)と共同で、同社の保有する実験装置を用いて、昨年10月から調査・実験が進められてききました。
  基礎実験を含め数度にわたる試験を重ねた結果、PETの混入率2〜4%という条件設定で、現段階で99.9%〜99.99%の高純度で塩ビとPETを分離できる見通しが得られました。
  電気的性質の異なる物質の混合体は『摩擦』などの外的要因により、それぞれの極性と電荷量を持って帯電する性質を持っています。
  静電分離技術の原理もこの性質を巧みに利用したもので、具体的には、摩擦帯電装置により塩ビはマイナスに、PETはプラスに帯電され、平行板電極で両極に分離された後、分離板で仕切られた3つの槽に回収される仕組みです。
  今回の実験では、この工程を繰り返すほど分離精度が高くなることなどが確認されています。
  WGでは、システムの効率をさらに上げていくため、フレークの処理条件、装置の設置環境など残された課題について現在検討を続けています。今年度はこの技術を応用して、比重分離工程と静電分離工程を組み合わせた一貫システムの実証実験に着手する計画です。
  海外の例では、BASF社の間連会社カリ・ウント・ザルツ社がプラスチックの分離に同様の技術を開発していますが、同社の技術は帯電させるために添加剤を必要とすするようです。これに比べてセンコー工業と研究中の技術は、より簡便で優れた特長を備えていると言えます。
  今後、技術の精度を高めることにより、実用技術として活用されることが期待されます。