1995年12月 No.15
 
 

 埼玉県東部清掃組合の「ごみ発電」
   20.6%の高効率発電を実現、廃プラ・廃塩ビも問題なく処理して貴重な電力源に

    「ごみを燃料とした火力発電所」として完成が待たれていた埼玉県東部清掃組合(愛称:リユース、埼玉県越谷市増林3−2−1)の第1工場が、9月末からいよいよ操業を開始。今回は、話題のごみ発電の現場から稼働直後の状況をレポートします。  

24000kW/hの発電能力

  廃棄物問題に悩む全関係者の注目を集めるリユース第1工場。首都近郊の4市2町(越谷市、草加市、八潮市、三郷市、吉川町、松伏町)のごみ処理を担当する同組合が、人口増加と廃棄物の高カロリー化、そして限界に近づく最終処分場問題などに対応するため、4年の歳月と405億円の費用を投じて建設を進めてきたこの施設は、1日800トンの処理能力(200トン炉×4基)と、1時間当たり24000キロワットの発電能力(12000キロワットのタービン発電機×2基)を有しています。
  リユース事務局の築井山信義次長は、「発電のために工場を建設したのではなく、これまで大気中に放出してきた熱を有効利用して、同時にごみ処理費用の軽減につなげたいというのが本来の狙い」と、ごみ発電の位置づけを説明していますが、第1工場がこれだけ注目される最大のポイントは、やはりその発電能力、特に発電効率の高さにあることは間違いありません。

 

■ ごみ1トン当たり発電量は720kW

  現在、全国にある自治体の清掃工場のうち、発電設備を備えているのは平成6年末の統計で139カ所、総発電量はおよそ43万キロワットに達しますが、炉の耐久性の問題もあって蒸気温度は欧米(400〜450℃)に比べて270℃〜280℃と低く、発電効率も10〜12%程度に止まっていました。
  これに対して、ごみ発電の積極導入に関する国の支援策を受けたリユースでは、計画当初から「380℃の蒸気で発電を行うこれまでにない新しいプラント」の建設を検討。炉の材質も高温に対応してグレードアップした結果、24000キロワット/h、発電効率20.6%という高効率発電を実現しており、ごみ1トン当たりの発電量も、従来(200キロワット程度)の3.6倍に相当する720キロワットにまで向上しています。
  ちなみに、その発電能力は前記の総発電量の約6%、一般家庭8万世帯の消費電力に相当するとのことで、まさに国内最大級のごみ発電所と呼ぶにふさわしい規模と言えます。

■ 蒸気は給湯用の熱源にも利用

 
  焼却および発電のシステムは図に示したとおりですが、炉(全連続燃焼式階段炉)の温度は自動制御で850〜1000℃に管理されており、内壁を覆ったボイラ水管が熱エルネギーを吸収して200℃まで温度を下げるとともに蒸気を発生させます。また、廃ガス処理は熱の回収効率を考慮して消石灰噴霧の乾式洗浄とバグフィルタの組み合わせで行われており、廃プラ・廃塩ビも全く問題なく安全処理されています。
  ボイラで作られた蒸気はタービン発電機に送られた後、後述するように、さらに給湯用の熱源として利用され、再びボイラに還流する仕組みになっています。

   

■ ごみの組成 −廃プラ類は18%

 
  取材を行った10月下旬の時点では、工場の稼働状況は処理量420トン、発電量10000キロワット程度とのことでしたが、これは平成2年の処理計画策定段階で増加を予想したごみの量が、バブル崩壊後逆に減少傾向に転じたことが影響しているようです。
  ごみの組成は紙類55%、プラスチック類18%、厨芥20%などで、残りの3〜5%は混入した不燃ごみ。残念ながら廃プラ中の塩ビの割合は不明ですが、一般的なデータから推定すればほぼ2%程度と考えられます。
  熱量は現時点では2400〜2500キロカロリー程度となっていますが、システム自体は最小1600キロカロリーから最大3000キロカロリーの幅で対応できるように設計されており、「理論的には廃プラだけのごみを持ち込まれても処理可能だが、最適バランスという意味で基本的には一般ごみの混焼に限っている」(築井山次長)とのことです。

 

■ 地域の公共施設にも余熱供給

 
  工場で作られた電力のうち7000キロワットは工場で消費されますが、残りは東京電力に売却され一般家庭での使用に回されています。また、発電後の蒸気はヒートポンプで80℃まで温度を上げて温水として工場内の給湯や冷暖房、および病院・体育館など周辺の公共施設への熱供給に利用されており、将来は温水プールなどへの利用も検討されているようです。
  ところで、発電によるごみ処理コスト削減効果について築井山次長は、「収集コストを別にして、ごみ1トンの処理費用は約2万円。これに対して、発電による収入はキロワット当たり約10円として7200円。従って、ごみ発電をやっても決して採算が合うわけではなく、サーマルリサイクルだからといってどんどん捨てて燃やせばいいというのではない。あくまでマテリアルリサイクルに乗らないものを燃やすという考え方をすべきだ」と説明しています。

 

■ 焼却灰のリサイクルなど他にも注目点

 
  詳しく触れる余裕はなくなってしまいましたが、リユース第1工場ではこのほかにも、焼却灰を熔融スラグ化して舗装材の細骨材に利用するなど様々なリサイクルの試みを通じて、「徹底して廃棄しない」という理念を追求しています。また、「地域に愛される施設にする」という発想からヨーロッパ中世の城郭を模して設計された格調高い外観も他の施設には見られない特徴と言えるでしょう。
  廃プラ・廃塩ビを含む一般廃棄物から熱エルネギーを抽出するモデル施設として、リユース第1工場は今後も貴重なデータを私たちに提供してくれそうです。