1995年6月 No.13
ビニル電線の「現在・過去・未来」
―ニューメディア時代にも新たな役割
コードレスの家電製品が出回るようになった昨今でも、電気や通信の導体として欠くことのできないのが電線。その「エネルギーと情報の動脈」を、被覆材として黙々と守るつづけてきたのが塩ビです。今回の「塩ビって何」は、ビニル電線の「現在・過去・未来」に迫ってみました。
● 昭和24年、国産化に着手
日本で塩ビを電線被覆に応用する研究がはじまったのは昭和13年頃のことですが、国産化に着手したのは昭和24年から。翌25年には通産省がビニル電線の使用を正式に認可し、これ以降、その需要は画期的な発展をとげていくこととなります。
腐食が甚だしかった従来の鉛被ケーブルに代わって塩ビ被覆の電話ケーブルが初めて登場し、雲仙温泉地獄谷を通過する高架ケーブルとして威力を実証したのは昭和27年のこと。
続いて、航空機用電線(28年)、海底ケーブル(30年)、超耐熱電線(37年)、原子力用特殊耐熱電線(50年)など、ネズミや白アリ被害の克服といった品質の改良を重ねながら、ビニル電線は社会の隅々に張り巡らされていきました。
● 多様な特性が「完璧な被覆」を保証
そして、ニューメディア時代の現代、塩ビは“未来の電線”光ファイバーの被覆材として、また新たな役割を担おうとしています。
従来のメタルワイヤに比べて1000倍以上の情報を送信するといわれる光ファイバーは、一方で医療用内視鏡や内視カメラとしても実用化が進められており、その可能性は文字どおり無限の広がりを秘めています。
しかし、そうした高度な性能を維持できるのも、所詮はケーブルを完璧に保護する被覆技術があってこそのこと。
その「完璧な被覆」を保証するのが、絶縁性と耐久性に優れ、やわらかくしなやかで破損しにくいという塩ビの特性、そして半世紀にわたる技術研究の蓄積というわけです。
● 使用済み塩ビ被覆の16%をリサイクル
現在、ビニル電線被覆材の生産量は年間約24万トン、電線被覆材全体のおよそ85%を占めています。こうした圧倒的な強さは、先に触れた特性のほかにも、燃えにくく薬品や油につよい、天候の変化にも影響されないといった様々なメリットに支えられています。
また、使用済み塩ビ被覆の16%がリサイクルされていることも、製品への信頼を高める要素と言えるでしょう。
ビニル電線は、「耐久材や生産資材としてこそ本来の力づよさを発揮する」という塩ビの特質を、最も端的に示す製品なのです。