プロセスの概要は、まず前処理として豆粒大に粉砕、圧縮した廃プラスチックを、
1.第1段階で、減圧下300℃に加熱、溶解すると同時に、脱塩化水素処理を行う。塩化
水素は、アルカリ中和ではなく、同社の塩酸工場でそのまま再利用される。
2.第2段階では、第1段階で脱塩化水素された廃プラスチックをさらに加熱。約400℃
で分解し、油とガスが発生する。この際、ガスはスチームクラッカーの原料としても利用される。
3. 第3段階では、第2段階で生成した油を蒸留し、ナフサや芳香族(アロマチック)、低
沸点オイルなどが取り出される。
● 選別、洗浄抜きですべての廃プラを処理
BASF社のシステムでは、最終的に60〜70%の油と20〜30%のガスが回収されます。同社では、1sの廃プラスチックから約900gの資源回収が可能としており、分解後に残留、埋め立て処理されるのは容器に付着したアルミカバーや包装内容物などごく少量に過ぎません。
BASFシステムの主な特長を整理してみると、
1. DSDから搬入される廃プラは塩ビも含め選別作業なしに、汚れたままで処理できること。
2.これにより、洗浄水や人手にかかるコスト削減も可能となること。
3.一連のプロセスは完全に閉鎖された装置の中で行われるため、外界へのガスや有害物の放出がまったく起こらず、また、洗浄水を用いないため汚水による環境負荷の危険もないこと。
4. 他の油化システムと異なって、水素の添加を必要としないこと。
5. すべての生成物質が同社の化学プラント群において、製品の原料として完全に再利用されること。
などの点が挙げられるでしょう。
● 思わぬ難題、供給量の不足の恐れ
さて、技術的には完成を見たBASF社のケミカルリサイクルですが、商業化に移行する段階になって思わぬ難題も発生しているようです。
それはDSDから供給されるプラスチック廃棄物の量が、BASF社が経済的採算に見合う量とする30万トンを下回る恐れが出てきたことです。
BASF社はこれまで、商業プラントを実行に移すには「DSDからプラスチック廃棄物の供給が保証されること」が前提となるとの姿勢を示してきました。
しかし、外電の伝えるところによれば、DSDは昨年末、1995年までに必要と予測されるプラスチックの廃棄物の量を、これまでの75万トンから53万トンに下方修正。このため、他社のケミカルリサイクルに回される分を考慮すると、BASF社には23万トン〜15万トン程度の量しか供給されないという計算になってしまいます。
● 商業化までにはもう少し時間が
回収量の予測数字を修正した根拠として、DSDは「包装廃棄物規制令の制定により資材の使用量そのものが減少したこと」を挙げていますが、94年初めよりむしろ5%増加したというドイツ包装業協会の発表もあり、実態はいまひとつはっきりしていません。
BASF社では、DSDとの話し合いを進めていますが、商業化されるまでには、もう少し時間がかかりそうです。