(株)ダイカン・堺事業所の産廃処理事業
塩ビ含有廃プラの焼却残渣が「新しい大地」の土壌に
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本シリーズでは、「塩ビを含むプラスチックの安全焼却」という点にポイントをしぼって、これまで4回にわたり各地のモデル事例を取り上げてきました。今回ご紹介する株式会社ダイカンの堺事業所(堺市築港新町3−31、0722-45-1851)も、もちろんそうした産廃処理施設のひとつ。ただ、同社の取り組みにはこれまでの事例にはない際立った特徴が見られます。 |
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■ 「フェニッックス計画」の一翼を担う
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ダイカン・堺事業所の産廃処理事業を際立たせている最大の特徴、それは焼却残渣を利用することによって「新しい大地」を創造しよういう遠大な試みが自治体との連携で続けられている点にあります。では、「新しい大地」とは何なのでしょうか。この点について同事業所の北野亜司所長は次のように説明してくれました。
「現在大阪湾では大阪府、京都府、兵庫県など湾岸各自治体の共同でフェニックス計画と名付けられた事業が進められているが、この計画は、適正処理された廃棄物を利用して広大な埋立地を造営し焼却施設や畜産プラントなどの建設地として役立てていこうというもので、ダイカンはその一画にあるフェニックス泉大津沖埋立処分場の埋め立てに参画している。泉大津沖の埋め立てはほとんどが当事業所で処理された焼却残渣が使われているといってよく、それはつまりダイカンが『新しい大地』を創造することにほかならない。これこそ究極の廃棄物リサイクルと言えるのではないか」。
ここで注意しなければならないのは、焼却残渣なら何でも埋め立てていいというわけではないということです。公共処分場である以上、「フェニックス計画には厳しい受け入れ基準が設けられており、この基準に適合した安全な灰になっていなければ受け入れてもらえない。当社では高度な中間処理技術でその基準をクリアーしている。事実、廃プラスチックを完全焼却できるのは関西ではダイカンしかなく、そうした技術の裏付けがあってこそ初めて公共処理が許されている」(北野所長)。プラスチック廃棄物も含めて徹底した焼却を実現したダイカンの中間処理施設。「新しい大地」の土壌を生み出すその焼却システムは、いったいどんな技術によって支えられているのでしょうか。 |
■ 廃プラ処理を容易にするオール鉄壁炉
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株式会社ダイカン(大阪市鶴見区。旧称株式会社大阪環境。平成4年から現社名)は、昭和46年に創業された産廃処理業者の最大手ひとつ。そのダイカン本社が20年にわたって培ってきた様々な処理技術をもとに平成元年1月に完成をみたのが堺事業所で、臨海工場地帯の突端、大阪湾を隔てて遥かに六甲山脈を望む理想的な環境の中に巨大な焼却プラントは建っています。
堺事業所のプラントの処理能力は24時間運転で日量192トン。システムの概要は次頁に掲げた図のとおりですが、この中でまず第一に注目しなければならないのは、2基の回転ストーカー炉の仕組みに独特な工夫が施されていることです。炉のサイズは3m×10mで、その炉壁は何本もの鉄パイプを組み合わせた構造になっており(オール鉄壁炉)、このパイプの中に常時水を通すことにより、800℃以上という炉内の高温にもかかわらず、炉壁の温度は常に270℃以内に保たれるのです。この仕組みは、高温による炉の腐食を防ぐと同時に、水流の温度差で炉内に発生したクリンカーを自動的に除去する効果をもたらします。つまり、この鉄壁炉が廃プラスチックの処理を容易にしている大きな理由のひとつとなっているのです。 |
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■ 塩ビを拒否する理由は何もない
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一方、排ガス処理工程についてはスウェーデンのガデリウス社のシステムが採用されており、冷却室で350℃に減温された排ガスは、反応塔で95%の水と5%の消石灰を噴霧して吸着し(フレクト・ドライパック方式)、電気集塵機を経て煙突から無害な水蒸気として排出されます。このように、堺事業所の排ガス対策は文字どおり万全といってよく、ダイオキシンについても厳しい基準が設定されているスウェーデン製のシステムだけに、国内の基準は完全にクリアしているとのこと。現在、堺事業所が処理する廃棄物は建設廃材と工場廃棄物が中心で、その中にはおよそ20%程度の廃プラスチック、さらにその2割程度の塩ビが含まれていると想定されますが、「排ガス対策さえしっかりしていれば、塩ビを拒否する理由は何もない。塩ビが処理しにくいというのはイメージだけの問題にすぎない」と北野所長は断言しています。 |
■ 嫌われ者の廃棄物を優しく処理したい
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以上のほかにも、堺事業所の焼却プラントには様々な優れた要素を見ることができます。例えば、焼却廃熱を工場内の暖房や給湯の電力源として利用するエネルギー回収の取り組み(タービン発電。出力は1時間1400kW)、廃棄物の中から金属やチップ材(木片)などの資源ごみを徹底選別するリサイクルの実践などもそうした要素のひとつです。
しかし、ダイカンの無公害焼却を支える三つ目のポイントとして最後にどうしても指摘しておかなければならないのは、「廃棄物を安全な灰することで、処理を依頼してきた業者には絶対に迷惑をかけない。嫌われ者の廃棄物をせめてうちだけは商品として優しく処理してやりたい」という吉村武雄会長の言葉です。ダイカンの廃棄物処理事業は、技術的な要素ばかりでなく、こうしたオーナーのポリシーにも大きく支えられているようです。
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