塩ビフィルムが演出するゴージャス空間
売行き好調、アイカ工業㈱の粘着剤付化粧フィルム
「オルティノ」
アイカ工業株式会社(小野勇治社長、愛知県名古屋市)の粘着剤付化粧フィルム「オルティノ」(Altino)が好調です。ホテルやオフィスの室内空間をゴージャスに演出する塩ビフィルムの最前線を取材しました。
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●メラミン化粧板との「共柄」戦略
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東郷課長 |
1936年の創業以来、建設関連の建装・建材や接着剤などの製造・販売事業を展開してきたアイカ工業。中でも、1960年代初頭から販売しているメラミン化粧板(メラミン樹脂、フェノール樹脂などを含浸した紙を積層成形したプラスチック板)は、市場シェア約7割を誇る同社の主力製品で、800柄を超えるバリエーションの豊富さ、指紋レス性能など時代にマッチした新機能追求といった点で、他の追随を許さない強みを発揮しています。
同社がインテリア市場への参入をめざして「オルティノ」を発売したのは2007年の2月のこと。主力であるメラミン化粧板と「共柄のフィルム」として、両者一体で市場参入を進めるというのが、発売時の基本戦略でした。同社建装・建材カンパニーの東郷武司営業第1部課長・海外営業グループ長の説明。
「当社のメラミン化粧板は主に家具・木工用として使われてきたので、内装という新しい分野に参入するのはエネルギーを要する挑戦だった。しかも、塩ビの化粧フィルムとしては既に他社の製品が先行発売されていた。メラミン化粧板との連動という戦略を取ったのも、他社製品に対して当社ならではの強みを出したいと思ったからだ。硬質で傷つきにくいメラミン化粧板はフラットな壁面施工には適しているが、ドア枠とか曲面の施工には使えない。それならば、曲面に施工できる共柄の化粧フィルムを作って、メラミン化粧板とセットで提案すれば、設計者に使いやすさをアビールできて、新分野への参入が容易になると考えた」
●塩ビフィルムの施工性のよさ
開発に当たっては、フィルムの素材を何にするかが大きな検討テーマになったといいます。
「現在住宅用フィルムの主流になっているオレフィン系、あるいはアクリル系、ペット系なども検討したが、施工の現場では、粘着剤付き塩ビフィルムの施工性のよさが支持されているということで、最終的に塩ビを選択した」(東郷課長)
最初に発売されたのは、メラミン化粧板と共柄の40アイテム。同社では、代理店のネットワークづくりに苦労しながらも、主に飲食店などの装飾用、賃貸住宅の部分改修用などとして販路を拡大。その一方で、他社との差別化を目的にオルティノフィルムを使った加工製品の開発にも取り組み、「より美しく、より扱いやすい」製品群を次々に上市しています。主な製品は以下のとおり。
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粘着剤付き化粧フィルム「オルティノ」の構造、同社の研究から生まれた独自の印刷技術、加工技術を駆使して、高級感ある光沢や自然な手触りを実現している。 |
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アイカ本社ロビーの天井に施工された「オルティノルーバー」 |
オルティノ加工製品の構造(❶オルティノ不燃、❷ウェッジプレス不燃オルティノ タイプ、❸オルティノルーバー)と、目透かし貼り工法の仕組み(右下) |
●オルティノ加工製品のいろいろ
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メタリック系アイテムの一部。
塩ビ樹脂にパール顔料を混ぜたり、アルミを蒸着させたりすることで、高い質感を表現している。 |
【オルティノ不燃】オルティノフィルム本体とほぼ同時開発された製品。軽量で防火性に優れるケイ酸カルシウム板にオルティノを貼ったもので、目地を際立たせる目透かし貼りという工法(上の図)で壁面施工する。火災安全への社会的要請に対応した製品。
【ウェッジプレス不燃オルティノタイプ】2013年8月発売。木工機械で3次元(凹凸)加工したケイ酸カルシウム基材をオルティノフィルムでラッピングした化粧板。木口部分もフィルムで巻き込んでいるので、目地や端部も美しく納まり、落ち着きのある陰影と上質感を演出できる。
【オルティノルーバー】2013年8月発売。アルミルーバーにオルティノフィルムをラッピングした内装用化粧材で、不燃認定も取得している。壁面や天井などに格子のように施工することで、一体感のある空間意匠が可能になる。
このほか、水廻りの新築・改修に使用する壁面材・バスフィットパネルや、巾木、見切り材といった補助部材商品もラインナップされていますが、驚くのはその柄の多彩さ。暖かみのある木質系を中心に、布地やレザーの質感を表現したマテリアル系、塩ビフィルムとは思えない金属感が美しいメタリック系など、その数は当初の40柄から555柄にまで拡大しており、うち265アイテムがメラミン化粧板との共柄となっています。
●まだまだ伸びが期待できる製品
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小久保課長 |
発売以来、オルティノとその加工製品は右肩上がりで売上を伸ばしていますが、同社建装・建材カンパニーの小久保淳営業第1部課長は「まだまだ伸びが期待できる製品」とした上で、今後の事業展開について次のように説明しています。
「当社の建装・建材事業はこれまで国内の住宅部門に多く依存してきたが、今後は、住宅から非住宅、建設から非建設、国内から海外、という3つの方向がキーワードになる。特に、非建設という点では、主力のメラミン化粧板とともに、その周辺の壁、床、天井といった市場を広げていきたいと考えており、オルティノはその戦略を進めるための重要な製品のひとつと位置づけている。海外については、中国、インド、インドネシアなどにメラミン化粧板の製造・販売拠点を設けており、販売も着実に伸びている。オルティノも可能な限りこれに連動させていく計画だ」
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