汎用塩ビシートの先がけ・又永化工鰍フ新たな挑戦
トランプ、カード、食品容器にも。
塩ビ復権をめざして多彩な用途開発
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又永化工の塩ビシートは多彩な用途に利用されている。 |
塩ビほどエコでいい素材はない−又永化工梶i堀江光平社長/本社 大阪府東大阪市)は、汎用塩ビシート製造販売のパイオニア。ダイオキシン騒動の荒波を潜り抜け、いま塩ビ復権に向けて新たな挑戦を続ける同社の、塩ビ一筋60年、その熱い思いを聞く。
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●世界初のカレンダー成形
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又永化工の塩ビシート、初の大ヒット製品 |
「当社の創業は昭和31年。それ以前は下着用のゴムひもなんかをカレンダー成形(圧延加工)で作っていたんですが、創業者の故堀江光男が、その技術を生かして塩ビシートの製造を始め、花輪や七夕の短冊などに使う装飾造花用のシートを、世界で初めてカレンダー成形することに成功した。これが無茶苦茶売れたんです。わずか0.05oという薄さに加え、従来のセルロイドに代わる燃えない素材ということで、造花屋さんなんかが行列で買いに来るほどでした。結局、この成功が当社の発展の契機になって、大手玩具メーカーのトランプカードやりんごの輸送用パックなどに当社のシートが幅広く利用されていくようになりました」と語るのは、同社取締役の岩崎隆志営業部長。
まさに汎用塩ビシートメーカーの先がけならでは。今から61年前の興味の尽きない開発秘話です。
●苦境を支えた塩ビへの信念
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岩崎取締役 |
順調に成長してきた同社の事業が、ダイオキシン騒動を発端とした塩ビ忌避の影響で深刻な打撃に見舞われたのは、90年代末のこと。「1ヶ月2千トンあった製造量が半分以下に落ち込んだ」という危機的状況でした。注目すべきは、苦境に臨んで海外に活路を求めた同社のフットワーク。「需要は国内だけではない」(堀江光平社長)という考えから、アメリカ西海岸の会社に売り込みを掛けた結果、ブリスターパック(板状の台紙に透明なプラスチックを貼り合わせた包装。薬剤などのPTP包装もそのひとつ)としての採用が決定したことで状況は好転。2000トンの製造量もほぼ維持することができたといいます。
「他の樹脂や機械メーカーからの売り込みもあったが、苦しくても塩ビを止めることは考えなかった。塩ビは原料の60%が自然由来の塩で40%が石油。他の樹脂と比べてこれほどエコでいいものはない、という信念があったからだ」(岩崎取締役)
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トランプカードもメイン用途のひとつ |
●食品容器としても安全
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藤田専務 |
そして現在。焼却技術の進歩、高温焼却炉の普及によりダイオキシン問題が収束し、塩ビに復権の兆しが見えはじめた頃から、同社の塩ビシートの国内需要も徐々に復調へと向かい始めています。現在その用途は、従来のトランプやブリスターパックはもちろん、フルーツパック、クリアーケース、クレジットカードなどのカード類、ゼリーやプリンなどの容器に使われるKPカップ、珍しいところではクーリングタワー(発電施設などで使われる屋外冷却塔)の充填材や、寒冷地で水道水の凍結を防ぐ保護カバーなど、実に多彩な広がりを見せており、中でも食品容器への採用は特筆すべき出来事と言えます。同社専務取締役の藤田晃弘氏の説明。
「塩ビは食品容器としても安全に使用できるという実績を付けたかった。初めはなかなか糸口が見つからなかったが、思案の末、取りあえず製品を受注して徐々に塩ビ素材に切り替えいくという戦略をスタートさせた。例えば、ソフトアイス容器、ヨーグルトのふたなどはポリスチレン製がメインなので、まずは商権を取って最初はポリスチレンで作り、そこから時間をかけて塩ビに変えていく。そういう戦略を10年ほど前から進めてきた結果、2013年ぐらいから徐々に塩ビに切り替わった。ソフトアイス容器に初めて当社の製品を使ってくれたのは北海道のコンビニチェーンで、現在は道内の全店舗に入っている。間接包材ではなく、直接食品に触れる一次包材として塩ビを採用してもらったことは、宣伝効果という点でも非常に有り難かった」
●本当の塩ビ復権へ、これからが勝負
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出典:(一社)プラスチック循環利用協会「石油化学製品のLCIデータ調査報告書」2009.3 |
「当社が塩ビの復権に向けて出来るだけのことをやってきたという自負はあるが、本当の復権はまだまだ。当社としては、ここからが勝負だと思っている」と藤田専務は言います。
「どれだけ塩ビの良さを説明しても、イメージだけで塩ビは使わないという会社もまだ沢山ある。水道管や薬品の包装、カテーテルも全部塩ビなんですよと説明すると驚いた顔を見せるが、結局は会社の方針というだけで納得できる説明もない。今後、全ての汎用樹脂について、二酸化炭素等の環境負荷物質排出量が大きく問われることになると思うが、塩ビはLCIデータで見ても他の樹脂より低いという研究結果が出ている(グラフ参照)。それなら、なおさら塩ビを使うべきではないのか。透明性があって、成形性がよくて、印刷適性も高い上、二酸化炭素等の排出量も少ないのだから。塩ビ業界も、エコのため、あるいはリサイクルを進めるためにも、社会に向けて塩ビの使用を積極果敢にアピールしてほしい」
又永塩ビシートの新たな可能性を示す用途の数々。左から、
❶ソフトアイスのオーバーキャップ、❷コーヒーやヨーグルトのふた、❸KPカップなどの様々な容器類、❹クーリングタワーの充填材 |