特集
塩ビリサイクルの3つの動き
ここからは創刊100号の特別企画として、最近の塩ビリサイクルの事例を3件ご紹介します。
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台車シートも再生塩ビ100%▼ |
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▲同社の主力製品。塩ビのリサイクル遮音材 |
Report 3 アナン通商(株)の取り組み
遮音シートなど、 多様な塩ビ端材を原料に
「時代が求める製品」づくりに取り組む
今度は軟質塩ビのリサイクルに目を向けます。ご紹介するのは、遮音シートをメインにリサイクル塩ビシート製品の製造に取り組むアナン通商(株)(小島繁男社長、京都府田辺市)。壁紙や床材など多様な塩ビ製品の端材を原料に取り込みながら「時代が求める製品」に再生する取り組みに、塩ビリサイクルの可能性を見た!
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●塩ビリサイクルひと筋、65年
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小島社長 |
アナン通商の設立は昭和63年(1988年)、というと意外に若い会社と思われそうですが、同社の前身である丸善ビニールの創業は昭和27年。実に65年にわたって塩ビのリサイクルに携わってきたことになります。本題に入る前に、当時の塩ビをめぐる興味津々の懐旧談を、小島社長に語っていただきました。
「丸善ビニールは亡くなった父が起こした会社で、塩ビ製品のスクラップを集めてたんです。リサイクルというか、当時の言葉で言えば材料屋ですね。その頃はカバンやベルトなんかも皮よりビニールのほうが値打ちがあった時代で、結婚式の引き出物を包む風呂敷もビニール製だと喜ばれた。そういうもののスクラップを集めて、色分けして京都市内の加工屋さんに販売していたわけです。関西はそういう仕事は割りに早くからあったんですね。とにかくビニールは高価だったので小さな端切れまで無駄なく再利用されていました。
弊社で加工をやるようになったのは昭和35年ごろ。まだ珍しかった高周波ウェルダーを入れて、当時一世を風靡していた雨合羽とかダッコちゃん、袋物なんかを、大阪の加工屋さんから仕入れた再生シートで作っていました。その後、昭和60年ごろから遮音シートの製造を始めたんですが、これは将来伸びる製品だというので、丸善ビニールの建材部門を分社化する形でアナン通商を作ったわけです。丸善ビニールのほうは今もウェルダーで免許証や車検証のケースなんかを作っています」
●遮音シートは「隠れたベストセラー」
予想どおり、住宅の騒音対策が求められるに連れて遮音シートの需要は順調に増加。標準仕様として施工するハウスメーカーも多くなっており、現在では、同社の主力製品に成長しています。「遮音シートは、壁の内側やフローリングの下に貼るだけで、優れた遮音効果を発揮する。屋外の騒音や室内の音の反響を抑え、モノを床に落としたときの衝撃音などが階下に伝わるのを軽減するほか、気密性が高まって冷暖房効果も出る。素材には一部オレフィンも使われますが、塩ビが圧倒的で、発泡スチロールの遮音材に比べて遮音性能、難燃性が高く、床下に使ってもヘタったりしない。人目に触れることの少ない製品ですが、実は隠れたベストセラーなんです」
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原料と配合材をミキサーで練り合わせる。 |
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ローラーで均一なシートに加工していく。 |
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部出しロールで、用途に合わせ厚みを調整。 |
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最後にサイズを整え完成。 |
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2週間屋外に晒して寸法を安定させる。 |
●リサイクルの模範生
同社の遮音シートの原料は床材や壁紙などの工場端材がメインですが、そのほかにビニールテープや塩ビ製の手袋、タイルカーペット、ホース、冷蔵庫のパッキン材、防水シート、農業用ビニルなど、軟質系塩ビのほとんどが使えるといえるほど、多種多様な塩ビ製品が利用されます。使用済み品も使われており、その受入間口の広さは、まさにリサイクルの模範生。
原料の前処理に過剰な手間を掛けないという点も驚きで、「壁紙は材料によって粉砕の度合いを変えたりしますが、粉砕した後は塩ビと紙を分けたりせずに、そのまま練りこみます。余計な手を加えていてはコストばかりかかってリサイクルにならないし、必要以上に選別せず、精密な分離が必要な用途は別として、製品として回収率を上げるようにしています」
製品の厚みは0.6〜10o程度まで。木造住宅やマンションなど、用途によって厚み、粉砕の粒度、練り時間、配合を調整するのが、同社独自のノウハウだといいます。
「将来建築物が解体された時、分別すれば再リサイクルも十分可能です。長期使用なのでまだ廃棄量は多くありませんが、近い将来はそういう対応も必要になってくるかもしれません」
●もっともっと塩ビをリサイクルしたい
同社では遮音シートのほかに、台車シート、ルーフィングシート、玄関マットなどを製造しています。いずれもOEM生産なので同社の名前が表に出てくることはありませんが、台車シートなどは高いシェアを持っており、全国で使われています。もちろん、素材はリサイクル塩ビ100%。
「塩ビは加工しやすい素材です。リサイクルもできるし、これ以上便利で簡単な素材はない。壁紙でも冷蔵庫のパッキンでも混合できます。色目さえ注意すれば、いろいろなものに細工できる。まだ有効利用されていない塩ビをもっともっとリサイクルしていきたい」
ちなみに小島社長は、障害者の技能訓練と雇用促進に取り組むNPO法人「エコー・ウェルネット」の理事長も務めています。訓練生の中には、塩ビのリサイクルシートで車検証入れや免許証入れなどをウェルダー加工する技術を覚えて、民間企業に就職する人も多いとのことです。
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